第20話 ショートカット

 一度も入ったことのない美容室。

 背の中ほどまでの髪を切る。

 長い髪が好きだなんて話を聞いて伸ばしていた、

 バカな女の顔が鏡に映る。

「今日は、どうなさいますか?」

 輝くばかりの笑顔に、

「さっぱりとしてください」

 わたしが言う。

 髪の長さは、思っていた時間の長さ。

 それは変わろうとした時間でもあって、

 そんな自分が不意に愛おしくなって、

「……お客様?」

 思いを切り捨てることができず、

 それが新しい自分だということを知る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る