第12話 ツリーの下でかわした言葉

 見上げたクリスマスツリー。

 灰色の空から、ひらりひらひら雪が降る。

 舞い降りた雪は小さな花のように彼女の黒髪を彩る。

 ぼくが雪を払うと、それは光になって中空に溶けて消えた。

「来年も一緒に見に来られるかな?」

 ぼくが言う。

 消えてしまわないように、つなぎとめようとした言葉。

 彼女は答えない。

 重たい沈黙に雪が降る。

 耐えきれなくなって隣を見ると、彼女は眉を曇らせて、

「来年だけなの?」

 少し怒ったような目でぼくを見た。

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