第10話 対抗意識

「わたしとお母さん、どっちが可愛い?」

 五歳の娘がオレの目を覗き込む。

 娘はこの頃、妻と張り合うのが好きらしい。

 視界の端に妻の後ろ姿。

 オレはからぜきを一つ。

「お母さんは、お父さんが結婚した人だぞ」

「でも、もうおばさーん」

「お父さんにとっては永遠に女の子なんだよ」

「お母さんが女の子のときってどんなの?」

「アルバムを見てみな」

「うん」

 うまく注意をそむけたとホッとしてしばらく、

「勝ったー!」

 娘の声が上がる。

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