第2話 懇願
車道を危険度度外視で漕ぎ続け、
過去最短記録の20分で到着した
保健室前には不機嫌そうな顔をした一人の少女が立っていた。
外見だけ見れば、年齢は大体思春期真っ盛りの女子中高生に見える。
俺は上がった息を整えながら、彼女の元へ歩いていく。
彼女は俺の姿を認めるなり、腕時計を確認し
鼻を鳴らした。
「15分遅刻だな」
「馬鹿言うな。
本来なら……1時間はかかる道のりだぞ」
「それは登校日を知らないお前が悪い。」
少女は相変わらず憮然とした様子で言い放つ。
「普通修学旅行休んだなら休みだろうが……」
「それこそ馬鹿言え。アレは登校日に含まれる立派な学校行事だ。
……全く、お前のような真面目で不真面目な生徒がいるから私が休日に駆り出されるんだぞ」
信じられないだろうがこの呆れた調子で俺を見る少女こそ俺を呼び出した張本人にして、この学校の養護教諭 秋元美雪なのだ。
「で、そんな事より俺をここまで急かして来させた理由はなんなんだよ」
「あー……その話はだな……」
珍しく、本当に珍しく歯切れの悪い言葉で答える秋元先生。
この学校で先生とは1番長く付き合ってる自信はあるが、こんな先生は見たことが無かった。
少しばかり逡巡した様子を見せると先生は保健室の中を覗き込み、何やら2言3言交わすともう1度こちらに向き直った。
「折り入ってお前に頼みがある」
"珍しい、槍でも降るんじゃないか"
そんないつもの様な軽口は秋元先生の目を見たら引っ込んだ。
彼女の目は今まで俺が見た事ないくらいに真剣味を帯びていて、事の重大さを否応なしに理解させた。
「俺に何を頼みたいんですか?」
頭の中で幾つか予想されうるパターンを浮かべながら、問う。
「一人の少女の更生だよ……」
ぽつりと秋元先生は呟いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます