#067:造反かっ(あるいは、DコードにGブレイク)


「……つまりは我々元老に叛旗を翻すと、そういうわけか」


 軍帽金髪大佐が、激情を押し殺したかのような、一転して感情が凪いだ声色でそう述べる。しかし言葉が固いな。場の空気に置き去り気味の私は、そんなおざなり的感想を頭に浮かべるくらいしか出来ないけど。


「……」


 会場内の空気も重苦しいものとなってきた。ま、でも元々「元老」ひいては運営による出来レース的なもん、ていう側面はここにいるほどのマニア客ならば重々承知しているはずとも思う。それを差し引いても、なかなかにイレギュラーで、かつアンチルール&マナーなことが起こっているのだろう。知らんけど。


「叛旗も何も、そもそも『元老』にさ、もうそれほどの求心力が無いっての、わっかんないかな~」


 わかりやすい挑発口調で、塗魚トザカナはムカつく笑みをその童顔に貼り付けたまま、そうのたまうのだけれど。


「それで……本気でやると。全力で……対局をしようと、そういうわけか」


 対する大佐の方も、今は面する相手を小馬鹿にするかのような歪んだ微笑を浮かべている。こわ。これあれだ。女同士の最終到達修羅場にほど近い雰囲気。私も実体験あるから知ってるー。


「……私を指名して来い、トザカナ。望み通りの本気を見せてやる」


 熱血バトル的展開へと、我々ダメーな面々を誘おうとしているッ……!? うん、何にせよやりづらくなったことだけは確か。えーと、お題は「失恋」て、この空気でどう流れを生み出せっちゅうねん。


「やっすい挑発~、乗らないよ? あんたには相応の相手見繕ってやるから精々本気とやらを出しとけば? 『一次』通過は『8名』。より高みの舞台で、あんたは私がぶっ潰す。ま、そこまで残れたらの話だけどね?」


 塗魚の方もテンプレ気味の安い挑発ではあったけど、二人の、いや両陣営の間に満たされている殺伐空気の圧を押し上げることが目的であるのならば、それは存分に成し遂げられていると思われるわけで。


 結局、「下位造反組」が「上位元老メンバー」を指名していく流れと相成り、あっるぇ~私の処遇ってばどうなんの? と行き場の無い意味不明な微笑を浮かべていたら、上位で指名を受けなかったおみそ的な奴から天下り式に指名を受けた。


 ほっとした。壁の花の気持ちがよくわかったわー、とそんなどうでもいい事ばかりが先ほどから脳内にぷかり浮かんでは消えていく。何か物事に集中できなくなっている気がする。これが……「リボルビック=チャネラー(仮称)」の副作用とでも言うのっ……? 違うか。


 それより次戦の相手を見とかなきゃ。と視線をずらしたその瞬間、


「フハハハハっ!! 水窪ミズクボ 若草ワカクサァッ!! 知鍬チグワのかたき、取らせてもらうぞぉぁあああっ!!」


 やった~、わかりやすすぎる噛ませ犬が来た~、と私は真顔と微妙な微笑の中間くらいの表情で、次の対局相手、印南インナミ カエデと表示されていた、褐色というよりは浅黒い肌をした、目力これでもかというくらい入っている、インド風頭飾り(ティッカって言ったっけ)とノーズピアスを施した、エスニック感前のめり気味の相手を遠い目で見やる。


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