#065:選定かっ(あるいは、ロロロロシアン=マグナマー)


 真剣対局の合間のお色気タイムみたいな空気がようやっと収まり、第2ピリオドが開始されるみたい。変わり果てた姿になった知鍬チグワが謎液の満たされた中央プールから救助されると、第1ピリオドの結果が大電光掲示板に示されたわけで。


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 01:10900:島=ワシントン大佐

 02: 8300:千木良草ちぎらくさ 紆余うよ

 03: 8300:遊獅子ゆじし 我飛兎がひう

 04:×8300:知鍬ちぐわ 環奈かんな→失格

 05: 6100:印南いんなみ かえで

 06: 3500:木佐きさ 和佳わか

 07: 3500:鎌田かまた 珠歌たまか

 08: 6100:天馬屋てまや 仙子せんこ

 09: 6100:塗魚とざかな ミカ

 10: 3500:黒戸くろと 美咲みさき

 11: 6100:衣袋いぶくろ 音子ねこ

 12: 3500:胡来こらい 小狐しょうこ

 13: 1100:里無さとなし 仁実ひとみ

 14: 3700:阿菰出あこもで 紫音しおん

 15: 3700:志木しぎ 寧奈ねいな

 16: 2500:水窪みずくぼ 若草わかくさ 

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 私をハメるために、緒戦は敵さん全員が「1300万」をBETしてきたわけなんだけれど、私以外の元老同士の対局自体はあからさまな八百長とか出来レースでは無かった模様で、割と明暗分かれた感じになった。いや、これ自体も仕組まれていないとは限らないけど。


 何にせよ、上位の一角であった知鍬を沈められたのはでかい。そして所持金も一気に倍増以上と、先ほどの必至状態から、詰めろレベルにまでは持ち直してきた、とそう思いたい。


 しかし、ことこの運営やら「元老」に関して、油断は出来やしない。出来やしないって言うか、まあ油断しようがしまいが、とんでもないことをブッ込んでくるのが最早スタンダードであるわけで、ともかく私としては全力BETの全力殴り合いしか選択肢は無い。


 <『No.4』が失格となりましたので、ひとりが『抜け番』となります>


 実況ハツマは既に普段通りの落ち着きを取り戻し、例の周りの人間を引き込んでいく魔術的な声色で、つらつらと進行し始めていた。球場内のボルテージは、先ほどの知鍬ショーのおかげもあってか、野太く、汗臭く最高潮だ。あー、やだやだ。


 いや、冷静に状況を見るんだ私。「抜け番」に成りえないことは何となく把握している。私の現在のMAX「2500万」を次戦突っ込んだとして、それをまた露骨に上回る「2600万」を被せてくるという向こうさんの戦法は健在だ。所持金が私を下回った「No.13」以外の13人の中から、「対私」に適した相手を見繕って「指名」してくるだろう。


 でもまあ、そんなん関係ないくらいにキてるのよ、今の私は。「素」状態にいつの間にか戻っていた私は、ぐいと周りを睥睨してみる。先ほどまでとは明らかに異なる、異質なものを見る目が、私を囲んでいた。せいぜい「策」を練ってぶつかって来いよ。私は私で解放/開放するだけだから。


 かなりの広さと奥行を持つこの地下球場だけど、天蓋はコンクリっぽい質感で覆われている。当たり前か。でもそこに拡がっていくような、抜けるような青空のビジョンを、確かに見ていた。


 ちょっと牽制しておいても面白いかも。私のテンションはいい感じに振り切れている。やけに清々しくなった気分で、私は微笑んだままの形だった唇を開く。


「私はまだ『4つ』の変身を残しています……」


 いや、威嚇になったか。私の意味不明とも思われるつぶやきに、相対する対局者のうち何人かの表情が変わる。


「……『リボルビック=チャネラー』。ひとまずそう評しておこうか」


 それに被せるように背後からアオナギの低く掠れた声。センスは感じられないけど、要はそういうこと。私は次に出す「弾」をどれにしようかと、ゆっくり選定を始めている。


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