#024:相乗かっ(あるいは、舞って!マダラガ夫人)
「……んリーグ戦っ!! 組み合わせ発表ぉぉぉぉぉぉぅっ!!」
電飾実況少女の、キンキンと頭に響くアニメ声が、理解不能の熱気を孕んだこの地下会場に響き渡りますのですよ。
と同時に、場内のあちこちに設置された大型のディスプレイに、正方形を碁盤目に割った、いわゆる「リーグ表」とでも言いますか、星取表が8つ、表示されましたの。それぞれの縦軸・横軸には「12」とか「08」などの数字が配置されていますわ。
「エントリーナンバー48は……おおっ、ねえさんは『1』のリーグじゃねえですかい。こいつぁ幸先いいやあ」
眉根を寄せながら、難しい顔でそれを眺めていた丸男さんが突如そうおっしゃいますけれど、「エントリーナンバー」とか、聞いてないですのよっ。
「ええいっ、わかりにくいっつの!! 『Dネーム』、開陳だこの野郎っ!!」
電飾実況少女の雄叫びに呼応するかのように、リーグ表に表示されていた「数字」がカタカナの文字に変化しますの。
私の名前「ワカクサ」も確かに「1リーグ」のいちばん下に表示されましたけれども、じゃあ最初からこの表示で良かったのでは? という疑問が頭をよぎりますわ。
でもそこを考えてはダメです。カワミナミ様もおっしゃっていたではないですか、「起こる事は大概が意味不明だから、そこは全無視でいけ」と。今の私の胸中は、穏やかなる水面。何事にも揺さぶられませんことよ。
A:ユズラン
B:センコ
C:ダテミ
D:シズル
E:カリヤ
F:ワカクサ
「ダテミ」とおっしゃる方、本名……ではないですよね。他にも気になる所はあるものの、「突っ込まず、全無視の構えが最善策」とのカワミナミ様の教えを忠実に守り、私はうずく右手を抑え込みましたのよ。
その時でしたの。
「おーほっほっほっ、随分とレベルの低い組に入れられましたこと。これでは存分に私の妙技をお見せ出来ませんことよ?」
すぐ近くで、そんな「高飛車」というものを音声に変換したらそんな風になるのでは、と思わせるほどの高い声が、高笑いと共に響きましたの。
目の覚めるようなフリルフルなアクアブルーのドレスはウェストがこれでもかと引き絞られていて、スカートは逆にドーム状に綺麗に広がっていますわ。
金髪というよりは黄色に近い、どこか浮世離れしたその長い髪はエッジの利いた縦ロールを左右に展開し、頭頂部は盛れるだけ盛ったとぐろのような形状を呈してまして、黒い小さなリボンが蠅がたかっているかのように執拗に散りばめられていますの。
長い睫毛は、水滴を落とした時に見られる王冠状の跳ねのようにぶわりと存在感を発していて、特殊の域に片足を突っ込みかけている入念で隙のないメイクは、そこまで血色いいやついないだろうくらい、どピンクのチークが二度見を誘いますのよ。
「あらあ、貴女、新顔ですのね。お初にお目にかかりますわぁ、『
私が言うのも何ですけれど、コテコテ過ぎる外観とメンタリティですのよ。
「ユズラン」と名乗ったその年齢不詳の女性は、テンプレ気味の台詞をぶん回しあそばせながら、ウサギを一羽ツブして作ったかのような白い毛が生えた扇で口許を覆って高笑いを続けますけども。
何と言いますか、ステレオタイプの昭和感がただならないのですわ。
この私を真顔にさせるとは……いったい何者なんですの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます