#018:反射かっ(あるいは、カッティングオフマイハート)
「……こんなメンタルじゃあ、『ダメパート』も『格闘パート』も出来るとは思えねえ。お前さんは一体、この勘違いクソ女をどうしたかったっつーんだ」
アオナギさんはその汚らしい長髪を掻き毟りながらおっしゃりますけれど、「この勘違いクソ女」って、わたくしの事ですかしら?
「……」
そう思うやいなや、私の左脚は瞬時に軸となり体と地球とを直結、そして右脚はコンマ何秒か遅れで振りかぶられるや否や、無礼者の左膝脇下を正確に精密に刈り取るように薙ぎ払っていた。
「!!」
呻き声も出せずに硬直し、はたりと横倒しに倒れるその長髪男をちらと見てから、カワミナミ様に今の首尾を目で問う。
「……」
カワミナミ様はいつも何もおっしゃってはくださいませんけど、今も目と目が合うや、ふっ、と軽い笑顔の目顔で頷いてくれた。私はそれだけで晴れやかな気持ちとなり、抜ける青空を見上げ、自然にこぼれる笑みを向ける。
「……不埒なコトを耳にした瞬間、光速のローが出るように仕込んである。『格闘パート』でこれが出たら、まず耐えられる者はいないはず」
カワミナミ様は腕組みをしながら、おねえ座りで真顔になっているアオナギさんを見やり、得意気な感じ。良かった。私は必要とされている……
「か、カワミナミくんカワミナミくん? だからよぉ、『ダメ』をやった後に『格闘』に移るんであって、両者は同時には行われないんだっつうのよ。だからそんな条件反射ムダだって」
アオナギさんはクリティカルな一撃を喰らったといいますのに、痛みに体を震わせながら健気にもそう反論なさるけど。
うーんでも、おっしゃってることがやっぱりわかりま……
「あ」
と、カワミナミ様の端正なお顔が、間が抜けたような口ぽっかり顔にお変わりになりあそばされる。え?
「どどどどーすんだよぉぉ、おめえよぉぉっ。こんなの、対局に出すことはおろか、シャバにも出せねえピーキーな代物じゃねいか!! せっかく拾ってきた逸材を、こんなはた迷惑でパッパラパーな人間兵器に仕立てやがって、俺の2億はどうなっちまうんだよぉぉぉぉおべっ!?」
詰め寄った丸男さんもそこまでまくし立てるものの、やはり私の電光石火の右を受けて、うずくまる。謎のオバヒの叫びも出ないくらい痛いのか、うつむいてOh……と小声で漏らすだけになってしまいましたけれども。
「……とにかく、出てもらうしかねえ。今の姐さんは確かにフィジカルは飛躍的に向上しているが、それもあの傲岸不遜なクソメンタルがあってこそだ。魂が抜けきっちまったようなこんな状態じゃ、相手にも客にも響きゃあしねえ」
アオナギさんの言葉に、カワミナミさんは少し顔色を変えられたようですわ。わたくしは一体、どうすればいいのでしょう?
「……だが、今はこのお方に賭けるしかねえ。勝てる気は全くしねえが、とにかくリングに上げるしか、だ。俺らがバックアップに入ってしのぐ。その間に、何とか元のサディスティカル・ソウルを取り戻していただくしかねえ。相棒、少年、初っ端から厳しくなっちまったが、それさえ取り戻せりゃあ、無敵だ。気合い入れろよぉぉぉ」
言ってる意味はよくわかりませんが、とにかくすごい気合いですの。私は促されるまま、赤い車に収まる。
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