#012:狩人かっ(あるいは、休載?措置も悪よのう)
「『
そこまでだった。額に生えたアンテナを人差し指でくいくいと動かしたら、求めていた説明を白目状態でつらつらと始めてくれたから、何だちゃんと出来んじゃん、と調子に乗ってこねくり回し過ぎたら壊れた。
「……昨今ではこの業界も『萌え』とやらに侵食されて来ていて、それの最たるが『女流』という、性別を区切った倚戦。そいつが遂に表舞台に出て来てしまったのは、まあ時流としては致し方ないところはあるものの、私としては承服しかねる部分は多い」
白い泡を吹いてテーブルに突っ伏しているアオナギの言葉を引き取り、カワミナミくんはキッチンの方からゆるやかに歩み出てくる。
その両手には金色の装飾が目を引くガラス製らしき長方形のトレイが掲げられていて、そこからはさわやかでいて、それでいて芳醇な、柑橘が入ってるっぽい紅茶の香りが、少し離れた私のいるソファの所まで漂って来てるけど。
まさか食後にハーブティーをいただけるなんて、そんな優雅さを感じられるなんて、思ってもみなかった。
目の前のローテーブルに置かれたティーセットは、ノリタケのヘミングウェイ。白地に赤+金って、やっぱり鉄板の色づかいよね素敵。カップとソーサーに走る深いレッドよりは淡く、しかし清浄な透明感を持って、豊かな香りを放つ液体が湯気を空中に拡散させつつも、静かに満たされている。
思わず目の前の麗人に求婚を申し込みたくなる気持ちをぐいと抑えつけ、ソーサーごと自分の膝まで持ち上げた私は、香りを楽しむのもそこそこに、薄くエッジの立った感触を唇に与えてくるカップを傾ける。
口の中が澄み渡る感じ……それだけじゃなく、鼻を抜けて、喉に染み込んで、体の奥底から外界へ向かって解き放たれるような……そんな感じ。
まさかこれこそが「浄化」というやつなの……? いや、そうじゃないか。
「魂の浄化の祭典」とやらの説明は一向に進む気配は無いけど(私が遮っているからかもだけど)、こんな心地の良い時間と空間の中に自分が置いておかれるのなら、それもまた良し。
私はかなり当初の目的を忘れつつ、くつろぎと癒しを存分に体中で感じるのであった。
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