勇者様は単純

ソーヘー

「おめでとう」と言えばなんとかなる。

勇者様と行動を共にして早1年、僕は色々な教訓を得た。僕は以前はただの商人をやっていたが、勇者様と出会ったことが僕の運命を大きく左右することとなった。勇者様に出会った僕は勇者様の魔王を討ち滅ぼすという決意に感銘受けた。それから僕は商人から冒険者へと転職して勇者様の旅路を共に歩もうと決意した。


勇者様と行動を共にすると決めて1年...これまで僕と勇者様は色々なクエストやダンジョンを攻略してきた。様々なクエストを攻略していく内に次第と勇者様の知名度は上がっていき、勇者様の仲間になりたいと志願する冒険者も少なくなかった。1年経った今では数十人のパーティーを結成する程に、大勢の仲間が勇者様に集うようになった。

それはとても良い話なんだが...それに伴って勇者様の心境も大きく変化してしまった。

レベルもそれなり上がって大物になった勇者様はすっかり天狗になってしまい、魔王を討ち滅ぼすという本来の目的を忘れてしまっていた。僕は本来の勇者様に戻す方法をひたすら、ただひたすらと考え続けた。

そしてその結果、僕はある手法を使うようになった。


「おっ!クエスト行ったらまたレベルが上がった‼︎」


「おめでとうございます!勇者様」


「やっと新しいスキルを獲得したぞ‼︎これで次のクエストは余裕だな」


「おめでとうございます!勇者様」


「ついに伝説の剣を抜いたぞ‼︎すごいだろ‼︎」


「おめでとうございます!勇者様」


「今回のダンジョン報酬は伝説の秘宝だ‼︎売ったらかなりの金になるぞ‼︎」


「おめでとうございます!勇者様」


「おめでとう」これは魔法の言葉だ。

勇者様の自慢話を受け流すと同時に、再びやる気を駆り立てることができる。

ただし、この魔法の言葉は多用してはいけない。この魔法の言葉は多用しすぎると効果が薄れてしまうからだ。絶妙におだてることこそが、勇者様に再びあの頃の勢いを取り戻してもらう唯一の方法だと考えている。

僕は他のパーティーの仲間にもこの魔法の言葉を伝授した。


「おめでとうですか?それを言うだけで勇者様は魔王を倒す気になるんですかね?」


「間違いない。勇者様にあの頃みたく再びやる気をだしてもらうにはこれが最適の方法だ」


「わかりました!今度から使ってみます!」


「ちょっと待った。多用はするなよ?効果が薄れてしまうからな」


僕は他のパーティーの仲間にこの魔法の言葉を伝授すると早くも使う時がやってきた。


「おい!お前ら‼︎さっき攻略したクエストでまたレベルが上がってたぞ!」


「おめでとうございます!勇者様」


「おめでとう!勇者様」


「おかしいな...そんなにめでたい事かこれ?」


やばい‼︎ついに勘付かれた‼︎流石に同じ言葉でおだて続けるのには無理があったか!これでもしも、今まで無理矢理おだててたなんてバレたら勇者様は心底お怒りになるだろう。

さて、どうだ?やはり勘付いているのか?


「まあ、めでたい事か!俺は勇者だからな

ハハハ」


「そうですよ!勇者様は魔王を討ち滅ぼす存在なのですから」


本当にこの勇者様は単純だ。




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勇者様は単純 ソーヘー @soheisousou

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