不幸再現

丹花水ゆ

第1話

「こっち!急いで!」

彼女の手を引いて、路地裏を走る。痩せ細った手。強く握りすぎると折れそうだ。それでもしっかりと握って走る。追手は思いの外、しつこく追ってくる。いや、彼らの考えも最もだ。彼女が地下牢から出て行けば、この街には不幸が戻ってくる。今まで、この街の人間はいつも笑っていて、喧嘩も犯罪も無く、完全に幸せに満ちていた。しかしそれはこの少女が地下牢で全員の不幸を抑えていたからだ。だったら、彼女の幸せはどうなる?一人地下牢に閉じ込められ、街の人のためと全員の不幸を押し付けられる。いくら街の人のためとはいえ、これはあんまりだろう。

「ま……、待って……、あっ!」

「おっと。大丈夫か?」

先を速く走りすぎたのか、彼女が転びそうになったのをとっさに振り向いて抱き留めた。

「大丈夫よ。それよりも、急ぎましょう。」

また彼女の手を引いて走り出す。後ろから聞こえる足音の数も多く、そして大きくなってきた。追手を増やしたのかと思いきや、後ろから迫ってきたのは街の住人たちだった。

「いたぞー!あそこだー!」

「待て待てー!」

楽しそうに笑いながら追いかけてくる。大方、鬼ごっこか何かと言われて楽しく追ってきたのだろう。あちらは楽しそうだが、こちらは全く楽しくない。この街全体が敵に回ったようなものだ。それでも逃げるしかない。とにかく走り、路地裏を抜け、小さな噴水のある広場に出た。さらに広場を抜け、奥の路地に入る。そこにあった扉を開けて、中に飛び込んだ。我が家である。

「ここまでくれば大丈夫だろう。大丈夫か、ソロー?」

ソローと呼ばれた少女は、乱れた呼吸を整えながら、ゆっくりと顔を上げた。

「えぇ、大丈夫よ。でも、ちょっと疲れたから水でももらえると助かるわ。」

「あぁ、すぐ持ってくる。待ってろ。」

台所へ向かうと戸棚から器を取り出し、水を汲んで持って行ってやった。

「ほれ。」

「ありがとう。」

彼女は器を受け取ると、ゆっくりと飲み干した。ようやく落ち着くことができたのか、覆いを外し、着ていた外套を脱いだ。中からは薄い青の長髪が出てきて、床に散らばった。

「これからどうするの?」

「この街に隠れるには限界がある。出るしかないだろう。まあ、簡単には出させてはくれないだろうけどね。ひとまずはここで休憩だ。」

そう言うと、自分も来ていた茶色の外套脱ぎ、椅子にかけた。

「でも、驚いたわ。まさかブリス、あなたが本当に外へ連れ出してくれるなんて。」

「自分でも少し驚いているさ。とは言え、連れ出したかったのも事実だ。これで二度とこの街には戻ってこられないかもだけど、両親はもうとっくの昔に他界してる。親戚もいない。ここにいる意味は仕事だけだ。小さい頃から良くしてくれた人達には悪いが、僕はあんな場所、いやこの街から君を連れ出したい。一緒に様々なものを見たいし、聞きたい。」

「えぇ、私もよ。あなたともっと広い世界が見てみたい。」

「となれば、さっさとこの街を出なきゃな。ここにいるのがバレるのも時間の問題だろう。」

「そうね。それにしても、走っている時にも思ったのだけれど、この髪は長すぎるわ。思い切って短くしてみようかしら……。」

「もったいないな、せっかくなのに。」

「洗うのも手入れするのも大変なのよ?長すぎるのも考え物だわ。切るのを手伝ってちょうだい。」

「……。わかった。長さはどれくらいにする?」

「そうね、思い切って肩くらいにしましょうか。」

「となるとこのくらいか。」

寝室から持ってきた鏡で分かるように彼女の髪を持ち上げた。

「そう、そのくらい。じゃあ、遠慮せずにバッサリやっちゃって。」

「細かい技術とアフターケアがないのはご勘弁。」

「別の町で落ち着いたらちゃんとしたところに連れて行ってよね。」

「了解。じゃあ、いくぞ。」

用意したハサミで床まであった髪を肩の長さで断った。あとは素人ながら合わせるように調整をした。

「いかがですか、お客様?」

手鏡で後ろなども確かめてもらう。

「まあまあね。代金はこれでいいかしら?」

急な代金の支払いに目を閉じることも忘れてしまっていた。彼女の顔が離れた後になって心臓が騒がしくなった。まだ鼻孔を彼女の匂いがくすぐっている。

「どこでそんなことを覚えたんだ。」

「あそこでは本はいくらでも読むことができたから。」

「多分、用法間違ってるぞ。」

「あら、そんなことないわよ。いやだったのかしら」

「いや、そんなことはないが……。覚えてろよ。」

彼女は楽しいそうに笑いながら立ち上がった。

「さて、町を出るんでしょう?そろそろ移動したほうがいいんじゃない?」

「そうだな、準備を整えたらすぐに出よう。」

その後は台所から少しの食料や水を、そして武器となるようなものを持ってきた。それらをリュックサックに詰めると再びローブを羽織った。

「忘れ物はないか?」

「ブリスこそ、この家とのお別れは済んだの?」

「大して思い出もない、寝て食うだけの家さ。とっくの昔に未練なんかなくなってる。」

「そう。じゃあ、行きましょうか。」

「ああ、未練の残るような、離れるのが惜しくなるような場所を目指してな。」

一応ではあるが心の中で行ってきますとだけは呟いておいた。もう戻ってくる気はさらさらなかったが。


扉を開けて閉めると同時に町の外側にそびえる壁向かって走り出した。再び入り組んだ路地に入り、町の人間に見つからぬよういくつも角を曲がる。外側に向かうほど曲がる回数は増えてゆく。この町は不思議なことに外側に行くほど人口密度が高くなる。別に中心部に裕福なものが住んでいるわけでもない。そのような経済格差やそもそもの身分差は存在しない。代表者もなく、みんな完全に平等な立場。この環境が良く続いてきたものだ。普通ではありえないだろう。そう、やはりここは普通ではないのだ。

「やばいな、近づけない。」

先ほどから人を避けて、一向に門へ近づけなくなっていた。

「さてどうしたものか……。」

「屋根の上を行くのはどう?」

「行けるのか?いや、行きたいのか?」

「ええ、とっても行きた……、いえ、行けるわ。降りるのが大変でしょうが、ここで足踏みしているよりはいいんじゃない?」

疲れたように下を向いていて顔が見えないが、きっとわくわくした表情に違いない。リュックサックから縄と鉤を取り出し、それらを結ぶと屋根に向かって投擲する。引っ張りしっかりと掛かっていることが確認できるとソローを先に上らせた。

「登れるか?落ちてきてもちゃんと支えるからな。」

「ええ。でも、そんなことよりも上をあまり見上げないようになさい。こういう状況でスカートは、結んでいるといえ不利だわ。」

「上を見ないと落ちてきたかわからない。」

「大丈夫よ。牢の中で何度もやったから落ちはしないわ。」

しばらくすると、彼女が上り終えたので、自分も上り、ロープを回収した。

「きれいね。本の挿絵とはまるで違うわ。」

とてもうれしそうな、無邪気な笑顔を浮かべていた。初めて高いところから見た町の景色。人々が遠くでうごめいているのがわかる。煙突からは煙が上がり、洗濯物が風に揺れている。

「外に出ればこんな景色はいくらでも見られる。もっと、違う景色だって。」

「ええ、もっと見ましょう。一緒にね。」

「ああ。そろそろ行くか。」

俺らは白昼、屋根の上を走り始めた。目指すは、恐らく一年に一度開けばいいほうの役割をほとんど門としての役目を果たしていない壁門。しかし、その外には自由が待っていると過ぎるほどに希望を抱いていた。


しばらく走ると、幾人かこちらに気づく人々が現れた。しかし、誰もが微笑みながら、まるで広場を駆け回る子供にするように手を振ってきた。笑顔で手を振り返すと、満足したように元の作業に戻る。

「これは下を行ってもよかったのでは……。」

「その様ね。ここまでまだ情報が回ってきてないのかしら。でも、良いんじゃない?楽しいし。」

「何よりです、お姫様。」

本当に楽しそうに走っている。そんな体力がどこにあったのだろう、地下の牢で本を読むだけの生活をしていたはずだが。

「もう少ししたら降りよう。下を走っても大丈夫ならそのほうがいい。」

「えー、せっかく楽しかったのに。」

その後、もう二、三棟走り去ったところで地上に降りた。

「あまりむくれるなよ。そんなに屋根の上を走るのが良かったのか?」

「楽しかったわよ。でも、一人で走っても楽しくなかったでしょうね。」

「……。また走れるさ。」

「そうね。さあ、行きましょう。」

口の片端を上げて、今度は君が手を引いて走り出した。次はあえて人通りの多いところを走った。すれ違いざまに人々はそれぞれに反応してくれる。手を振る者、一緒に走る者、微笑んで眺めてくる者、パンを渡してくる者もいた。その中を抜けて、門へ一直線に向かった。今度は門に近づくほど人は減っていった。家は立ち並んでいるので人は住んでいないわけではなく、一時的にいないだけと思う。どうも胸騒ぎがする。

「待った!」

「?どうしたの?」

次に角を右に曲がると門に差し当たるところで彼女を引き留めた。

「周りを見ろ、人がいない。嫌な予感がする。」

「そうね、こんなに人がいないのも変だわ。」

「警戒して進もう。」

ゆっくりと周りに警戒しながら角を曲がる。すると、驚いたこといに門前の狭い道に人がごった返していた。屋根の上からは住人だろうか、何人かの男たちがお菓子か何かを撒いている。そして、ほかの住民がそれに群がって、道は通りにくいことこの上ない状況であった。

「どうするの?また屋根に上る?」

「いや、さすがに奴らも門の近くにいるだろう。むしろ群衆に紛れながら進んだほうが安全だ。手、離すなよ。」

「ええ、あなたこそね。」

しっかりとお互いの手を握り、覚悟を決めて群衆へと突撃を開始した。


人込みは思ったよりも密集しており、何度も手が離れかけた。その度にしっかりと握り直し、先へ進んだ。先へ進むに連れ、頭にお菓子が直撃したり、それを求めて人の密集度合いが高くなってきた。

「ソロー、大丈夫か!?」

「えぇ、大丈夫よ!」

あと少し。もう少し。あと一歩。そしてついに門前にたどり着いた。

「やったわ!」

「開けるぞ。せーの!」

二人で門から閂を持ち上げる。門扉を開けると、そこには聞いていた話の通り、草原が広がっていた。はずだった。門の外には頭一つ分小さいとは言え、それでも十分に登れないほどの高さのある城壁がそびえていた。

「やあ。また会えましたね。」

背後から少々しわがれた声が門扉の閉じられる音とともに聞こえてきた。振り返ると外套の覆いを目深くかぶった四人が立っており、うち一人がその覆いを外した。

「サプレス……。お前なら流石に追いつくよな。」

「えぇ。と言うよりも屋根の上を走るとは予測していましたので、それを追ってきただけです。」

サプレス呼ばれた男は白髪交じりの黒髪をかき揚げ、片眼鏡をいじりながらそう答えた。

「そうか、やはりまずかったか。運良くばれないかとも期待したが。」

「いくらあなたでもこれは見逃しませんよ。ところで、あなたは彼女と何をしているのですか?」

「逢い引きだ。」

「そうですか。ならば、もうお家に帰る時間ですよ。馬車を用意していますのでそちらに移動をお願いします。」

「まだ、うちから出てすらいないぞ。」

「もう十分でしょう。最近ではおうちでーとなるものもあるそうです。庭を駆けたと思えば満足ではありませんか。」

「いや、これからが本番……、だ!」

言うと同時にサプレスへと蹴りを入れる。もちろんこれは避けられるが、そのまま追撃は続ける。

「ソロー、走れ!」

これは無駄な心配だったようで、ソローはもうすでに外套三人組を押しのけて走り出していた。

「あなたたちは彼女を追いなさい!」

押しのけられてただ突っ立っていた三人はばねに弾かれたように飛び出していった。

「貴方のお相手は私ですよ!」

三人の妨害をしようとしたが、サプレスもこちらに牽制をかけてきた。だが怯んではいられない。恐らく、ソローはあの三人にすぐ捕まってしまうだろう。その前に助けに行かなくては。ただ、同じ師から学んだ訳なので、流石にサプレスを振り切れない。右を攻めればうまく流してカウンターをしてくる。こうすればああするといった型は完全に一致しているのでなかなか抜きにくい。

「腕は鈍っていないようだな!」

「それはあなたもでしょう!」

正直に言って、打ち合っていて焦りが募ると同時に少し楽しくもなっていた。ここしばらくサプレスと打ち合うことがなかったせいもあるだろう。昔、サプレスと師のもとで稽古をしているときはよくどちらが強いか競っていたものだ。とは言っても、懐かしんでもいられない。早くソローのもとへ行かねばならない。

「はああああ!」

一気に距離をつめ、強めの廻打を食らわせる。サプレスは少し距離を開けて、受け流す。その瞬間にさらに距離を詰め、外套の中から香辛料の袋をぶちまけた。流石にサプレスも怯んでしまったようで、その隙に足をすくい上げて、勢いに乗せてみぞおちを強打する。汚い手だろうが背に腹は変えられない。

「すまんな。」

地面に伏してしまったサプレスに一言謝るとそのままソローを追いかけた。

後ろを少し振り返ると先ほどの外套三人組が追いかけてきている。それもだんだんと距離を詰めてきている。地下にずっと閉じ込められていた私ではすぐに追いつかれるだろう。

「髪を切ってよかったわ。」

とにかく本当の外へ通じる門を目指して走り続ける。あるのかどうかは不明だが、あると信じるほかない。

「っ!」

突然、足を引っ張られ、転んでしまった。見ると、右足に重りのついた縄が巻きついており、その先を三人組の一人が引いている。

「女性には優しくしなきゃだめよ……!」

解こうとするが、さらに引っ張られ上手く解くことができない。そして、ついに囲まれてしまった。足に巻き付いていた縄を今度は体に巻き付けられて拘束をされる。

「……。」

三人組はただ無言で取り囲んでいる。まるで何かを待っているかのように。そして、待っているものは来たようだ。馬車が一台近くに止まり、そこから男が一人おりてきた。正面側にいた二人が道を開け、そこにその男が立つ。むしろ銀髪と言えるような混じり毛のない白髪に深いしわの刻まれた顔。高齢なのは見てのとおりだが、雰囲気からしても明らかにただの老人ではない。さらに多勢に無勢。逃れるのは容易ではないどころか、不可能だ。できることと言えば、ブリスが来ると信じて時間稼ぎをすることだけ。

「お迎えに上がりました。さ、こちらの馬車へどうぞ。我らが城までお送りいたします。」

「城?あの地下室のこと?あんな場所に戻るのは嫌よ。飽きたし、第一に外を見たいもの。」

「わがままも大概になされよ。散歩もこれだけすれば十分ではありませぬか。戻りましょう。」

「お断りよ。そもそもあなたはこの状況になにも疑問を感じないの?不安も怒りも悲しみも何もかもをみんな感じない。それらは私が代わりに地下で封じ込める。おかしいとは思わないの?」

「思いませぬ。それがあなたの役目であり運命。そしてそれを支え、護るのが我らの使命。ただそれだけであります。」

ただ率直に彼はそう述べた。そこに微塵の疑いも迷いもない。これは説得するのは無理だろう。

「もうよろしいですな。行きましょう。」

背後にいた三人組の一人に縄をつかまれ、馬車に連れていかれる。もうこれ以上何を言っても時間稼ぎになりそうもなかった。

「ずっと地下にいた女だからって甘く見ないで!」

叫ぶと同時に隠していたナイフを背後の一人に後ろ向きのまま刺した。さらに振り返り際に蹴り飛ばし、そのまま反対の方向に走りだした。いや、出そうとした。その前に老人に首をつかまれた。目の前が真っ暗になり、意識が遠のいてゆく。完全に気絶する直前にブリスの声がしたような気がした。

しばらく走ると前方に先ほどの三人とソロー、そして見知った老人が見えた。ソローは完全に取り囲まれている。しかしソローは突然動き出し、背後にいた一人をけり倒し、こちらに向かって来ようとした。だが、老人がソローの首をつかみ、ソローはその場に崩れて落ちてしまった。

「ソロー!」

絶叫しながらさらに加速すると、老人がソローを二人に預けてこちらに向かってきた。もう型とかもやる気にもならなかった。ひたすら、めちゃくちゃに拳を、蹴りを入れた。もちろんそのすべて受け流され、逆に弾き飛ばされた。

「そこまで叫ばずとも、脳への血流を止めて失神させただけ。何も心配はいらぬ。」

「……。」

「加え、そのように教えた覚えはない。ブリス、鍛錬をきちんと行っておらんかったな?それともいつもの悪い癖で冷静さを欠いているのか。どちらにせよ、まだまだ鍛錬が足りぬとしか言えんな。」

「師よ、鍛錬なら毎日欠かさずやっている。」

「ならば、後者ということであろうな。誠に残念でならぬ、ブリス。このようなことをさせるために教えたのではない。」

「この町の平和と安寧を護るためだろ?でもな、俺は疑問に思ったんだ。この町は本当に護るのに値するのかってな。たった一人の娘に悪い部分を全部背負わせて、他の奴らは良いところだけを享受することが本当に良いのか。俺にはそんな偽物を守ることはできなかったよ。」

「ふむ、偽物と申すか。ここに住む人々は正真正銘の本物。彼らの喜びもまた本物ではないか?確かに娘に悪いことをしているとは思っておる。だが、娘一人の不幸と引き換えに多くの人々の幸せが保証されるというのは良いことではないか。」

「なら、師が代わって引き受ければいいじゃねぇか。」

「無論、主には一度ならず願い出た。しかし、私では代わりにはならぬと仰せになった。私ではむしろ修行と感じてしまい、代わりにはならぬと。」

「なるほど、確かにそうだろうな。師なら修行としてしまいそうだ。」

「故に、この安寧を守ることが我が務めと心得た。心苦しさと矛盾を感じつつ、務めを果たすことが最善であろう。」

「それも修行となってないか?」

「否定できぬ。」

「その修行のために俺とソローを見逃してくれ。」

「それはできぬ。務めは果たさなければならない。」

「そうだろうな。なら、最初で最後の稽古をつけてもらおうかな。」

しっかりと構える。動作一つ気を抜くことはできない。ただ、完璧に動作をこなしたとしても万に一つ敵う気はしない。億、いや兆に一つがいいところだ。だが零でないのなら、立ち向かうしかない。

「来い、ブリス。望み通り、最後の稽古をつけてやろう。他の者は手を出すでないぞ。」

師も構えた。と、突然目の前に師が迫ってきた。驚きながらも何とか後退し、距離を開ける。もちろん、師はさらに迫って距離を詰めてくる。その間にも何度も拳を受けては流し、こちらからも繰り出した。だが、さすがに年月がものをいうのか、まったく攻撃が通らない割に、こちらはダメージを負うばかりだ。このままではサプレスたちも追いつくだろう。とりあえず一手を、と先ほど投げたものと同じ香辛料の袋を取り出そうとした。しかし、取り出そうと手を引いた瞬間

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