7. アスカルードって実はこんな人
きょうはぼくの3さいのたんじょうび。
あすかるーど・いしゅれっとがんと、これがぼくのなまえだ。
おうぞくにうまれたからなのかきょうからいえでべんきょうというものがはじまるらしい。
べんきょうというものがなんなのかわからないけどはじめてのことはいつもたのしみでしかたない。
かていきょうしというひとがべんきょうをおしえてくれるらしい。
それからまいにちべんきょうがはじまり10かほどすぎたころ、かていきょうしがぼくのことをばかにしはじめる。
さいしょはやさしかったのに…
「こんなこともわからないのですか?あなたの兄様たちはもっと早く理解出来ましたよ?」
「ほら、また間違ってる。まあ王位継承権第3位だから出来ないでもいいとお思いですか?」
こんなことばをよくきく。
はっきりいってなにをいわれてるのかよくわからない。
それでもぼくのことをばかにしているってことだけはわかった。
こんなことを2ねんほどくりかえしぼくは5さいのたんじょうびをむかえた。
これからはべんきょうだけじゃなく、けんぎ?とかたいじゅつ?とかまほう?とかあたらしいこともおしえてくれるらしい。
「アスカ様~?アスカルード様?」
あたらしいせんせいがやってきた。ぼくはまたいじわるされるのだろうとものかげにかくれている。いまぼくをさがしているひとはふたりだ。せんせいは3にんくるっていってたけど…ひとりたりないね。でもどうせばかにされるのだからぼくはかくれつづける。
「もう…しかたないですね。このまま始めちゃいますかっアスカ様がこの部屋にいるのはわかっているんだし、まずは基本的なことを言葉で教えていきましょう。」
「そうだね、アスカ様ちゃんと聞いていてくださいね~」
このふたりはぼくがいるのかもわからないのにそのままなにかをしゃべりはじめた。……にげられない。とびらのまえにすわってふたりははなしをつづけてる。そのことばをききながらぼくはだんだんとねむくなりうとうと…うとうと…いたい…っかべにあたまをうってしまった。
「「………」」
けっこうおおきなおとがしたのにふたりはそのままはなしをつづける。
きがついたらぼくはベッドでねていた…へんなの。こんなことを3かもつづけるとさすがにきがついた。あのふたりがねてしまったぼくをベッドにはこんでくれているのだ。どうしてぼくがいるばしょをわかっているのにみにこないんだろう…べんきょうをいままでおしえてたひとたちはぼくをさがしだしてむりやりいすにすわらせたのに…
「あの…なんでぼくをつれてかないんですか…?」
きになってついこえをかけてしまった。ふたりはえがおでりょうてをたたきあっている。
「やったっアスカ様…私達の勝ちですね。」
「…え?」
「アスカ様は忍耐力がたりません。」
「にんたい…?」
「はい。アスカ様が先に出てくるか私達が我慢できずにアスカ様をひきずりだすか…」
「いい訓練になりましたね?」
いままでのことがこのふたりはくんれんだという…ずっとえがおではなしてくれるふたりをみてたらなみだがこぼれてきた。
「にんたい…たりないばかにする?」
「しませんよーっ最初から全部出来る人はいないんですよ?アスカ様はこれから色々出来るようになっていくんですから。」
「そうだね、僕達と一緒に出来るようになっていこう。」
「……っく。うあああー…んっ」
このひはじめてぼくはおおきなこえでないた。
☆
☆
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「あれ、アスカ様またその本を読んでいるのですか?」
「うん、やっぱりすごいなーと思ってね。」
あれから5年、僕はこの2人にいろんなことを教わっている。今までいた他の人はやめてもらった。2人は双子で姉のほうがユーリ、弟のほうがイールという。顔はそっくりだけどやはり性別の違いが出ていて弟のほうが若干背が高く体つきもがっしりしている。
この2人に色々教わってはいるが唯一教えてもらえないものがある。それが魔法だ。簡単なものなら使えるそうだが魔法が得意ではないらしく教えることが出来ないそうだ。
手に持っていた本に目を落とす。これは昔異世界からやってきた人がこの世界にはない知識と力で活躍した話で、中々面白いのだ。多少の脚色はしてあるらしいがある程度は実話らしく、僕達の世界のことがまるでわかっていないあたりなんて特に反応が面白い。
「異世界人…ほんとにいるのかな。」
「どうでしょうね…私も今まで話には聞いたことがありましたけど、見たことはないので…」
「僕もにたようなものですね…あっでもうわさを聞きましたよ?」
「どんなうわさ?」
「昨日だったか黒髪の人がいきなりあわられてすぐ消えたとか言う話ですね。何人か目撃者がいるみたいですよ?」
「!!」
黒髪といったら今まで現れたことがある異世界人の見た目の特徴じゃないか…
「…ねえユーリ?」
「なんですか?」
「今日の視察で会えるかな…」
「どうでしょうね…」
「イールは会えると思う?」
「はっきりとは言えないですが、街中に現れたのが昨日ということなのでまだいる可能性はありますね。」
そうだよね、可能性はあるっ楽しみだな~会ったらどんな話を聞かせてもらおうか。
「さて、じゃあそろそろ支度して向かいましょうかね?」
「わかったっ」
僕は読んでいた本を閉じると身支度を整えるためにメイドを呼んだ。支度を終えるとユーリとイールを連れて今日の視察の順番を確認する。視察といってもどちらかというと僕が街のことを理解するために勉強させてもらっている感じだ。今そのリストを眺めているのだが、今日行くところは新しく出来た宿屋と冒険者ギルド、それと露天通りを訪ねることになっている。
「ねえその黒髪の人ってどの辺で見かけたの?」
「えーとですね…確か貴族街ですね。」
「貴族街…」
今日行く場所には入っていなかった。まあそもそも貴族街に視察にいくことはないのだが…少しがっかりしてしまう。
「すぐ消えたという話ですし、いつまでもそこにはいないんじゃないんですか?」
「そ、そうか…ん?じゃあこの町にもいないってこともあるのか~」
「もうばかねイール!アスカ様もとから異世界人かどうかわからない話なのです。会えたら運がよかったってくらいでしょう。大丈夫です、アスカ様は運いいほうじゃないですか。もちろん私達もアスカ様と会えたのは運がよかったと思っているんですよ?」
そっか…運がよければ会えるんだ。
「それよりもアスカ様?一応王族です、そんな態度でいたらなめられてしまいますよっ」
「む…っ人前ではちゃんとするよ!」
「ならいいです。」
ユーリ厳しい…
それから僕達は予定通りまずは宿屋から視察に向かった。新しくできた宿屋は新しい木の匂いがして汚れもなく、そのうち泊まって見たいとさえ思った。ただ部屋は狭いのが問題かな。その次に冒険者ギルドにやってきた。ここはいつも人がたくさんいてとてもにぎやかな場所らしい。ギルドの人にここの仕事の流れを説明してもらった後次の場所へ行くべく出口へ向かった。扉をユーリが開けると人が飛び込んできた。
「ご、ごめんなさいっ」
「とちらこそ悪かったね。」
どうやら今の人とユーリがぶつかってしまったみたいだ。…あれ?今の人黒髪じゃないか??立ち止まってその人が向かったほうを眺める。やっぱり黒髪だ!
「アスカ様?」
「ユーリ、イール…黒髪だっ」
その女の子はギルドの中に入るとなにやらキョロキョロして挙動があやしかった。異世界人ならわからないことが多いからきっと困ってるんだ!
「なにやら困っているようだな…」
「え…?」
どどどうしようっつい声掛けてしまった!この後の言葉がつづかないよ…
「あーえーと…身分証?ってどこで作ればいいのかな?」
「なんだ別の国から来たのか…それならその行動も頷ける。」
よかった…自分から話を進めてくれてそれにしてもへんな言葉にならないように少しだけ偉そうに話すとか難しすぎだろう?…と身分証か。女の子の手を取りカウンターに進む。あ、しまったいきなりこれはまずかっただろうか…
受付の女性に説明すると手続きが始まり2人はしばらく会話を続けていた。身分証を手に入れ軽く説明を受け、次はギルドの説明をするらしい。そうかナナミっていうのか…それにしても話が長いな。
「はい、登録が終わりました。次にギルドの説明をしますが聞きますか?」
「いやいらないだろう。俺が教えてやる。」
「ちょっとアスカ様~まだこれからの予定がありますのに勝手なことをしては困ります…っ」
「別にいいだろう。食事のついでに済ませればそれほど時間もかかるまい。」
「まあそうなんですけど~」
食事に誘うとナナミは喜んでくれた。こっちも嬉しくなってしまう。城まで戻ると遠いので貴族街入ってすぐの別宅で一緒に昼食をとることにした。食事をしながらナナミはいろんな話をしてくれた。聞いたこともない名称がいくつも出た。とくににほんというのがナナミが住んでいる国らしいのだが聞いたこともない国だ。やはり異世界人で間違いがなさそうだ。
ある意味憧れの人が目の前にいる状況は少しばかり緊張してしまう。楽しそうに話をするナナミをただひたすらに眺めながら会話に耳を傾ける。あまり口を利くとボロがでそうだしね…
「あれ…?」
気がつくとナナミが机に伏せて寝始めていた。どうやらお酒に弱かったらしい。ユーリに部屋へ運んでもらいとりあえず寝かしておこう。起きたら誰かに送ってもらうことにして僕は今からまだ今日の残りの視察にいかなくては…
露天通りの視察を終えて戻ってくるとナナミはまだ眠ったままだった。流石にこのまま放置で自分だけ帰るわけにもいかない。僕も今日はこの別宅に泊まっていこう。
「異世界人はほんとにいたんだな…」
ナナミの寝顔を眺めながら僕はそんなことを声にだした。髪の毛の色が特殊なだけで普通の女の子だ。どんな理由でここにきたのかわからないが一人はきっと心細いだろうな…
☆
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異世界人であるナナミと分かれてから数日がたった。今日も数日おきに訪れる視察の日。今回は珍しく街の外にあるここから一番近いダンジョンの前でそこの店や冒険者たちの様子を確認するものだった。ダンジョンに行くまでに通る森は馬車に乗っていたので詳しく知らないが途中たまに止まるところを見るとたまに魔物などがでていたようだ。まだ僕は実戦で魔物を倒したことはない。多少剣は使えるが流石に気軽にやらせてはくれない。つまり馬車の移動は退屈だったってこと。
「たくさんの人だね…」
「ここのダンジョンは近いこともあってよく冒険者が利用しますからね。」
ダンジョンは突然現れるものらしく、その規模はまちまち。奥にあるダンジョンコアを破壊もしくは回収してしまえばダンジョンは崩壊するらしい。でもこれだけよく人が来るのになくならないダンジョンっていうのはとても深いダンジョンということなのだろうか?
「誰もコアのとこにはたどりつけないのか?」
「ああ、ここはですねあえてコアを放置しているんですよ。」
「あえて?」
「ええ、魔石を集めるためにこのままにしてあるんです。」
「危険はないのか?」
「今のところありませんね~最初に出来たときからダンジョンの階層は増えていませんし。」
「階層とやらは増えたりするのか…」
「増えますね~そうなると難易度も上がってきちゃいますがね。まあ今のところ大丈夫ですわ。」
なるほど…今のところ魔石発掘所という扱いなんだここ。
話を聞いた後今度はダンジョンの入り口で出入りする冒険者の様子を眺める。数人でかたまって入っていくんだな…あれがパーティってやつかな。
何組かダンジョンに入っていく人達を眺めているとナナミという最近聞いた名前が聞こえてきた。
「ん、ナナミ?」
「こ、こんにちは…ごきげんうるわしう?」
さっきまで誰もいなかった場所にナナミがあわられた。なんか難しい顔をしているが元気そうだ。
「へーナナミはこれからダンジョンか…ついて行きたいな。」
「「だめです!」」
「わかっている、言ってみただけだ。流石に準備もしていないのにいくわけがないだろうが。で…こいつらがナナミと一緒に行動するものか…ふむ。ナナミが無事じゃなかったら…いや、なんでもない行って来るがいい。」
おっとナナミは心配だけど王族があまりなれなれしくすると他の人が不振に思うよね…今のところ危険は少ないらしいけど大丈夫かな…無事に帰ってきたらまた話聞きたいな。
段々遠ざかるナナミの背中を眺めながら見えなくなるまで見送った。
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