6. 難しい言葉が多すぎて辞書が欲しい今日この頃
「げ…」
なんであいつがここにいるのよ…
ダンジョンの前に見知った顔がある。私がこの国に来て会ったことがあるのはたったの数人。その内の1人アスカルードが護衛の2人を連れてダンジョンの入り口に立っている。出来たらしばらく顔を合わせたくなかったのにこんなとこで会うとは思わなかった。
私はあわててスマホを取り出し何か顔を隠せるものがないか探す。
ここの露天で各自ダンジョンに入る前に食事を済ますそうだから今はすぐ傍に誰もいない。何か買うなら今がチャンスだ。でも何を買えばいいのか見当もつかない。
隠すもの…仮面、マスク、帽子…フードか!
この国で不自然じゃなくここで使っていても問題がなさそうなものはこれくらいだろう。薄手のフードつき外套色は薄茶、銀貨2枚なり。はっきり言って高い。まだお金増やせていないのにどんどん財布が寂しくなっていく。でもできたら見つかりたくないのだから仕方がない。それにどうやら私の黒髪は目立つらしいのでそれを隠すのにもむいてる。
買った外套を早速着込みフードを被る。これでとりあえず黒髪が目立たないので私だと気づかれることもないはず……
周りにいる人達に混ざって私も露天を眺めることにする。どうやらここにある露天は主にここで食事をするひとのためのものや、ダンジョンに持ち込む買い忘れなどを補充するための店みたい。つまり私には興味のない物ばかりということ。ただ1軒だけ毛色の違う店があった。アクセサリーや変わった形の武器や盾、それにいろんな色の石…紙に書いてある内容を読むとますますわからない。
「鑑定、鑑定、鑑定、ライト…?」
なんのこっちゃ…鑑定はなんのことかわかるけどライトって明かり??まあどっちも石の下に置いてある紙に書かれてる。どっちも銀貨1枚らしいけど石が銀貨1枚って高いと思うのよね。綺麗な石だとは思うけどちょっと私には意味がわからない。
露天を見るのも飽きたしみんなが座っている場所にいって私もなんか食べよ。
買っておいた木でできたピクニックチェアーを取り出してみんなの傍に座った。なんか椅子を取り出したときにパメラさんが驚いていたけどマジックバック持っているのはみんな知ってるはずなのにどうしてだろう?まあ私は気にせず座ってパンでも食べますがね?…とそうだ銀太にも同じものをあげよう。
「なあそこにいるのってナナミの従魔だよな…何食ってるんだ?」
「リック…それも気になるけどさっきそこの椅子がいきなりあわられたわ…」
「変ね従魔だけなんてナナミはどこいったのかしら。」
ん…?私はその椅子に座ってますけども…フード被ってるから私だってわからないのかな?
「私ならここにいるけど…?」
フードを取って返事をするとルシアさん以外が驚いていた。
「え、おまっ…」
「「……っ」」
「へぇ~認識阻害がついてるのかその外套。」
認識阻害…がついてる?よくわからないことを言われた。
「あーびっくりした~ナナミそんな便利なもの持ってるなら最初から教えなさいよ~」
これはアーシャさん今日は長い金髪を邪魔にならないように三つ編みにしている。さっき買ったばかりとか言えないわね。
「ところで認識阻害がついてるってどういうことですか?」
わからないことは聞いてみる。これは常識だと思ったんだけど…そのせいで今度はルシアさんも含めてみんな驚いてた。
「効果もわからない装備は買っちゃだめだよ?」
「ナナミ、その装備高いと思わなかったのか?」
パメラさんとリックに怒られてしまった…でも服買っただけでなんで私は怒られてるの??
「ま、買ったのはナナミなんだからそれはいいじゃねーか。それよりその装備なんだが中々いいものだな。」
「認識阻害…でしたっけ?」
「ああ、どうやらフード被るとほとんど認識できなくなるみたいだ。」
んーと…つまりフード被るとアスカルードに見つからなくなるってことね!
「あーまてまてフード被るんじゃないっダンジョンの中とかはいいけど普段から被るのはやめてくれ。姿が見えてない人と会話とか不気味だろう。」
「あーそうか…」
それはそうだわ。じゃあダンジョンの中とアスカルードの近くだけにするわ。
みんな食事はすでに終えていたので私もさっさとパンを食べてしまって出発できるようにする。
「そうだナナミ鑑定石買っておけよ。」
「鑑定石?」
さっき売ってた石のことかしら?
「使い捨てのスキル石なんだけどダンジョンの宝箱から出るアイテムは割といいもんが出るから、ちゃんと鑑定してから残すものと売るものを分けるんだ。だから1人1つは用意してもらってる。それに鑑定してから売らないとぼったくられるかもしれないからな。」
「じゃあ買ってくる。」
スキルってのがよくわからないけどまあ鑑定したいものに使う石ってことだけはわかったわ。さっきいった店で鑑定って書かれている石を買えばいいのね。それにしてもお金増やしたいのにまた減る…
準備の終わった私達は今度はダンジョンに入るために列にならぶ。並ぶといっても数組パーティが並んでいるだけみたいなのですぐ私達の番がやってきた。
「はい、次。何人のパーティだ?」
「『銀狼』4人パーティだ。それに臨時のポーターつきで全部で5人で入る。」
「1,2…ん?後1人はどこだ?」
「「「……」」」
「ナナミフード被るなよ…」
うえぇぇ…取るの?取らなきゃだめ?この受付のとこにアスカルードいるのに…まあ取らないといけないなら取りますけど…
「ん、ナナミ?」
「こ、こんにちは…ごきげんうるわしう?」
フードを取りながらアスカルードに挨拶をする。へんな言葉になったのはしかたないよね…?
「へーナナミはこれからダンジョンか…ついて行きたいな。」
「「だめです!」」
「わかっている、言ってみただけだ。流石に準備もしていないのにいくわけがないだろうが。で…こいつらがナナミと一緒に行動するものか…ふむ。ナナミが無事じゃなかったら…いや、なんでもない行って来るがいい。」
何か言いかけてたけどなんだろう?というかなんでここにいたのかのほうが不思議。まあいいか。そして気のせいかアーシャさんとパメラさんの顔色が悪い。
「ナナミ王族と知り合いだったのか…」
「ん?」
ダンジョンの中に入って少し歩き始めたらルシアさんが話しかけてきた。中といってもまだ真っ直ぐな通路みたいなところでまだちゃんとした場所じゃないらしい。
王族?誰のこと?
「………?」
「アスカルード・イシュレットガント。この国の第3王子だ。」
「えっあのガキ王子だったの!?」
「リックはだまってよーか…?」
アーシャさんにリックが睨まれてる。どうやらリックも知らなかったみたい。
「わー偉そうな態度だなーと思ってたけど王子様だったとは…」
「なんだ知り合いなのに知らなかったのか。」
「うん。だってさっき会ったの2回目だし?」
これで知っているほうがすごいよね?そうかそれでアーシャさんとパメラさんの顔色が悪かったのね。納得した。
「なんにしても気に入られてるみたいだから無事に帰さないと後が怖そうだ。」
気に入られてる…いや違うでしょ。黒髪が珍しいから覚えられてただけだろうしそんな気にしなくてもいいんじゃないかなー?まあ死にたいわけじゃないけど。
「みんなー雑談はそこまで~転送部屋に到着だよ~」
転送部屋?というところについたらしい。パメラさんが声を上げている。彼女はこのパーティの副リーダーだそうだ。
「んじゃ今回は予定通り地下11階から行くぞー」
「リックナナミに説明。」
「ああ、ここは転送部屋だ。10階層ごとに転送してくれる。転送するのに魔石がいるんだけどな。そしてもちろん同じく10階層ごとに戻るための転送部屋もあってそっちからも魔石を利用して帰ってこれる。んで魔石だがこれはモンスターがかならず落とすから回収忘れんな?」
つまり私はその魔石を主に拾うってことね。どうやら他にもモンスターは落とすらしいけどその魔石を拾ってこないと稼ぎにならないみたい。他にも使い道があるってことなのかな?
『狩り~狩り~』
銀太が何か喜んでる。獣の血でもさわぐのかしら?とりあえず邪魔にならない程度にね。
『おーーっ』
転送するために魔石を置く場所?にみんな集まる。足元をよく見るとなんか模様が書かれていた。この模様の範囲から出ると一緒に転送されないそうだ。
「起動するから円から出るなよ~」
リックが魔石を台座にセットすると足元の模様が光り、一瞬だけ浮遊感を感じるとさっきまで光っていた光りが消えた。移動したはずなんだけど見た目はほとんど変わらない場所に出たみたい。ただ違うのは転送の魔石を置く台座が離れたところにもう1つある。さっきまでいたところは1つだったからちゃんと移動できたってことなのかな。
「じゃあこの階層の索敵と地図情報を同期するな。」
いろいろとよくわからない言葉が出て私は首を傾げる。するとルシアさんが教えてくれた。リックのスキルでこの階層にいるモンスターの現在位置を腕輪の地図に表示するんだって。
「便利なんですねスキルって…」
「まあな。でも完全にわかるわけじゃないからな?相手の移動状況は表示されないからざっくりとどの変にどのくらいいるかわかる程度だからな。」
つまり今の状況を確認してから行動を決めるってことかな。
「ナナミこの階層は最短ルートで抜けるから遅れずついてこいよ。」
それにしても不思議。ダンジョンの地図も表示されるのね…リックの地図には赤い点…さっき使ったスキルで表示されてるモンスターの位置がわかる。それを見ると私達が入ってきた場所と思われるところに1つ赤い点がついていた。
「ん?私達のすぐ近くに赤い点が1つあるみたいだけど…銀太も赤く出るの?」
「いや従魔は表示されないはずだしここはまだ転送部屋だぞ?」
転送部屋にはモンスターが入ってこないってこと…なの?でも地図には赤い点がある。流石にこれには驚いたみたいでみんな回りを見て回ってる。私も見たほうがいいのかなーと少しうろついたら何か踏んだ。
「あ…スライム。」
「は…なんでこんなところスライムが??」
スライムだってモンスターなんだからいても不思議じゃないと思うんだけど…
「あー森からついてきちゃったのかな~もしかしてあれじゃない?ナナミ懐かれた?」
「え?」
「そうかもですね~従魔連れてるし契約して欲しいのかも?」
えーと…名前を付けろってことかな?
「あっ今仲間増やしちゃったら食事とか困りますよねっ?」
「スライムなら問題ないんじゃ?」
「うん、問題ない。」
「そうなんですか?」
「スライムはかな~り雑食だよ。なんでも食べちゃう。」
「なんでも…?」
「なんだ見たことないのか。その辺で草も食うし、モンスターの死骸も食う。かと思えば普通にそのへんで残飯も食ってるしゴミとかも普通に食うよな?」
ふーんご飯には困らないのか。それなら仲間にしても大丈夫なのかな?
「じゃあちょっと契約してみますね。」
えーと名前名前…スライム…スラ…スラスラ…プニョプニョしてる…ぽよんぽよん…う~~名前は難しいな~こう触った感じしっとりとしつつふわふわで柔らかい…大福?ゼリー?あ…食べ物に偏ってるな。単純に考えたほうがよさそうかも。
「ライム…でどう?」
わっまた光った銀太のときよりは光ってないけどやっぱり眩しいっ
『おねーちゃんもっとあそんでーっ』
目の前でスライムのライムがぽよんぽよんと跳ねている。どうやらほんとに懐かれていたみたいだ。
「うし、契約も終わったみてーだしそろそろ進むか。」
「そういえばここはどんなモンスターがいるんですか?」
「ここは主に虫だな…ブライトってやつが大量にいやがる…」
「だから早く通りすぎちゃいたいってことなのよ。」
虫か…もうそれただの虫でいいじゃん…
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