5. 干し肉とか黒パンとか私には無理
私がダンジョンに行くための準備が何も出来ていないので1日時間をもらえた。地図を開いてお店の場所を確認する。食べ物を扱っている店はやはり冒険者ギルドでの需要が多いのかギルドの近辺にいくつかあった。
預かった干し肉が売られているのを発見。どうやら肉の種類が3種類あるみたい。
「えーと…オーク、ミノタウロス?バー…見た目はみんなおんなじなのね。」
「おじょうちゃん狩りの食料でも買うのかい。」
「あー狩り?行くのに荷物預かったんですけどそれに干し肉があったので見てみてたんです。」
干し肉を眺めてたら店の人に話しかけられた。預かった干し肉はどれなんだろう…結構値段が違うのよね。一番高いのはミノタウロス1袋銀貨1枚もする。そして安いのはバーこっちは1袋銅貨5枚。
「ねえおじさん干し肉見た目はおんなじなのにずいぶん値段が違うのね。」
「ああそりゃ~やっぱ討伐難易度のせいもあるし、なんていっても肉の質も違うしなっ」
「どう違うの?」
「この中で一番柔らかいのはオークだな。で、一番うまいのはミノタウロスだ。バーはどっちかと言うとパサついた肉でまあ干し肉作るのが楽でいいんだがあんまりうまくないな。」
一生懸命説明してくれてるんだろうけど…やっぱ言葉じゃ全然わからないわね。
「ん?なんだじょうちゃん食べたことがないのか。じゃあ味見してみるか?」
このおじさんやさしーっ味見させてくれるって。剥がれ落ちた切れ端を3種類くれた。順番に味を見てみよう。……まずはバーってのを食べてみたんだけど、かなりしょっぱい。そしてかた~いっその後残り2つも食べてみたんだけど違いがわからなかった。
「おじさん…これ味違うの?」
「わははっやっぱわからんかっこれはな結局同じ状態まで乾かしちまうから硬さも同じぐらいになるし、同じ味をつけているからほとんどわからね~んだよ。」
「じゃあなんでこんなに値段が違うのよ…」
「あれだ手間賃だな。高い肉のか処理が時間かかるんだ。」
うへぇ~…味同じなら安いのでいいじゃない。でもしょっぱいだけでおいしくないよ~
「ダンジョンにいくんですけど他に持っていける食べ物おすすめとかないですか?」
「そうだな…後は黒パンくらいじゃないか?やっぱ日持ちしてかさばらない食べ物がいいからな~みんな似たようなもんしか持ち歩いていないぞ?これがダンジョンじゃないなら現地調達で肉とか食べられるかもしれないがな。」
「ん…?ダンジョンだと現地調達できないんですか?」
「なんだ初心者か…ダンジョンのモンスターとかは死ぬとダンジョンに吸収されちまうらしいぜっ見たことないから知らないけどな!」
原理は知らないけどモンスター?消えちゃうんだ…現地で食べ物が手に入らないから準備して行くしかないってことなのね。預かった黒パンも持った感じかなり硬かった。この国の人達はこんな固いものばかり食べているのね…
干し肉を見た後黒パンと水も他のお店で味見させてもらえたけどどっちもまずかった…パンは固いしなんかすっぱい。水まですっぱくて腐っているかと思ったくらい。
他に何か変わりに持っていけるものがないか見て歩いたけど生ものを持っていかないことを考えると何もなかった…
というか甘味が見当たらないのはなんでかな…甘いものがないとちょっと耐えられそうもない。ダンジョンは早くて3日間の予定らしいけど長くなると5日くらいかかるらしくてその間果実水すら飲めないってこと。
こんなんじゃ自称神様のお願いなんて聞けずに死んでしまうよ?
…と廃教会で祈って神様に言ってみたら次の報酬の先払いってことでいいものを貰ってしまった。といってももともと私のものなんだけどね。
「見てみて銀太~これはねスマホだよー」
『…?スマ?変な箱だね??』
変とか言うなとっても便利なんだぞっ……とスマホの前に部屋に戻ったらなんか変なことになっていたのよね。なんか棚に箱が増えてる…えーと…5箱?箱に文字が書かれていて今日会った4人の名前がそれぞれと食料って書かれた箱。ためしに食料って書かれた箱を覗いて見ると中は真っ暗だった。底が見えないの…それとスマホのほうにマジックバックの中身リストが表示されるようになっていて、それと同じだけ箱がある。
まあ試してみればわかるか…ちょっと箱のほうを眺めながらマジックバックから干し肉を取り出してみる。
「あ…っなんか箱からチラッとだけ見えた!」
干し肉をマジックバックに出し入れしながら箱をみるとちらちらと干し肉っぽいものが見えるときがある。もしかするとこの中に預かった荷物があるってことなのかな?今度は直接箱に手を入れてみる。
「干し肉干し肉…ん?」
なんかが手に当たった。それを掴んで取り出してみると干し肉だった。やっぱり繋がってたよ。
で、今度はスマホの食料のリストを見ると干し肉が減っていた。ちゃんとリストは機能されているみたい便利!でもスマホの一番の魅力はこれじゃないのよね~あまりにもこの国の食料があれだったからいっそのこと日本の食べ物とか欲しくてお願いしてみたらスマホくれたってこと。
私はスマホを操作して通販サイトを開く。もちろんお金は入っていないからこの国のお金が必要だといっていた。
「まずは画面に銀貨置いて…チャージっと。」
おお…っ銀貨がスマホの中に消えちゃったよ!画面を見ると確かに銀貨1枚って残高が表示されてる。これで買い物が出来るってわけね~
「ん~…携帯出来る甘味っていったらこれくらいかな?」
ポチっと購入を押す銅貨1枚だった。目の前にあわられたのは缶に入ったフルーツ味の飴玉。早速蓋を開けて1個口にほうりこんだ。
「甘い………早く帰りたいな。」
思わず本音が出てしまった。こんなことを考えていても帰れないことはわかっていたはず。
「…銀太寝よっかっ」
『ふかふかで寝る~』
私はもふもふな銀太を抱えてベッドで眠ることにした。ちょっとだけ泣けてしまったのは内緒だ。
☆
☆
☆
さて、今日は初仕事初ダンジョンの日。待ち合わせは南にある門を出たすぐの場所。そこで集まった後軽く最終打ち合わせをしてすぐに出発するらしい。昨夜はあのまま寝てしまったので朝あわてて準備をすることになってしまった。目の前でスマホで買い物とか出来るかわからないから、安くすむところでパンをいくつかとペットボトルの飲み物を買ってマジックバックにしまってある。そしたらまた棚に1つ箱が増えてた。今度はナナミの食料って書かれた箱だったよ。
門についたらすでに4人ともそろってた。どうやら私は一番最後だったみたい。
「お、きたきた。」
…ん?金髪で髪の毛をオールバックにした男の人が手を振っているが…あれ?集合場所間違えたかな…初めて見る人だと思うんだけど…でもリックがいるからあってるよね?
「おっし揃ったなじゃあ説明するぞ~」
「はいっいきなりですけど質問いいですか!」
「どうかしたのか?」
「この人誰…?」
私が金髪の人が誰か聞くとみんなに笑われてしまった…なんで?
「あーおかし~まあ見慣れないとわからないわよね。」
「アーシャさん…見慣れないとってことは……もしかしてルシアさんですか?」
「なんだわかってたのね。」
いえ、ただの消去法です。金髪の男の人ってルシアさんしかいなかったはず。それにしても驚いたわ…髭そって髪型ちゃんとしたら結構いい男だった。
「じゃあまずはナナミみんなの寝具預かってくれ。」
「寝具…」
どうみても毛布とかだよね…そうか3日はかかるっていってたからダンジョンの中で寝ることになるのね…私何も用意してなかったよ。まあ後でスマホで購入しよう。とりあえず全部預かっておこう。これってそれぞれの名前の箱に収まってるのかなー?まあここからじゃ確認できな…ああスマホで確認できるじゃない。
「ん?ナナミそれはなんだ。」
「あーちょっと便利な道具ってとこかな。一応みんなの荷物のリストが確認できるよ。」
つい取り出して確認してたらリックに食いつかれてしまった。そしてどうやら各自の箱に収まったらしいよ?
「まあ、いいじゃねえかポーターの仕事は俺らにはよくわからねーんだしさっ」
「便利なものもあるのね~」
これはパメラさん。変わった道具だと感心している。まあまだ今日でみんなと顔を合わせるのが2回目だからまだどんな人達かよくわかってない。少しでも仲良くやってけるといいなーとか考えてたらリックが説明始めた。
「今回はナナミが初だから確認も込めて説明しなおすな?まずはここから西の森へ向かう。まあそこまでは距離はないしモンスターもスライムくらいしかいないから気にしなくていいだろう。」
スライム…ってなんかゲームとかで聞いたことある名前が出た。あのプルプルしたやつでしょ?そんなのがいるんだ…
「で、森に入ってからだがここからは俺が先に進むから合図をしたら進んでくれ。それほど危険なモンスターは見たことがないが森には何がいるかまだはっきりしていないから要注意な。」
斥候だっけ…なるほど先に進んで安全確認とかする人のことなのか。
リックの説明はそのまま進み体感時間で5分くらいで終わった。その後私達はまずは森へ向かって歩き出す。まあこれは危険がないらしいので私も気楽なものだ。
あ…そういえば銀太のご飯考えてなかったけど、私と同じもの食べるかな??
『えーーっなんでも食べるけど忘れないでよ~あっでも肉があるといいなー』
なるほど一応狼ってことらしい。気のせいか銀太がこっち睨んでる気がする。一応ってところが気に入らなかったのかもしれないな。
「ちょっナナミ踏んでるっ」
「…ん?」
アーシャさんが私の足元見て驚いてる。なんかプニョプニョして…なんだこれ?
踏んでた柔らかいものを拾って広げてみる。ペローンとしててでもプニョプニョ。私が持ってるだけでなんかもぞもぞ動く…なんだこれ?
「ナナミ、スライムは食ってもうまくないぞ~」
え、これがスライムなの?ゼリーっていうかグミみたいに見える。でもおいしくないんだ…あれ?なんかスライムが暴れだした。もしかして食べられるとでも思ったのかな?
「しとめる気がないなら放置しておけよー?」
リックに注意されてしまった。まあ私には倒せないよ?武器もないし。ぺいっとスライムを捨てた。すると必死にどっかに逃げていちゃった。どうやら怖がらせちゃったみたい。
「スライムってほんとに弱いモンスターなんですね。」
「ん、ああ。余程じゃなければ襲ってこないぞ。」
あわててる様子が少しかわいかったな。モンスターっていうのはかわいいのもいるんだね~そしてほんと他のモンスターは出てこない。たまにスライムがいるくらい。そんな様子を見ながら歩いていたら森に着いた。
うへぇ~木でっか。身長の高い木々がたくさん生えている。一応獣道的なものが目に入っているがちゃんとした道はないみたい。
「森に入るから俺の指示にしたがって進め。」
歩き出したリックは特に何も言わない。みんな黙ってついていくみたい。何も言わないときはついていけばいいってことなのね。
「止まれ。そこの角の先をちょっと見てくる。」
それだけいうとリックは走っていった。気のせいかあまり足音がしなかった。その場で足を上げ下げしてみると葉っぱとか踏んで音が出るんだけど…どうなってるんだろう。少しするとリックが戻ってきた。どうやら進んでいいらしい。角を曲がると少し鉄くさい匂いがしてきた。その進んだ先になんか倒れている…だんだん近づいてわかった。あの緑色の肌をした人だ。首から血を流して倒れているところを見るともう生きていないようだ。
「……っ」
「ゴブリンが2匹いたのか。」
「ああ、他はいなかった。」
なんでみんな平気なの??これってリックが殺したんだよね?私は口を押さえて耐える。あれ…でもゴブリンってどっかで聞いたような…あっそうだリナが言ってた!ゴブリンはモンスターだ。そうか…倒す、討伐っていうのは殺すってことなのね…
初めて倒されたモンスターを目にした私は少しだけショックを受けていた。本当は今すぐ逃げ出したいところだけど逃げるわけにも行かなかった。あの依頼の数をみたところこの国ではこれが普通らしいのだから。
これは仕事なのよ…
自分に言い聞かせるようにしながら同じようなことを繰り返し進んでいると、木々の切れ目が見えてきた。どうやらそこが目的地のダンジョンがあるところらしい。少しだけほっとした。たしかダンジョンのモンスターは死体が残らずダンジョンに吸収されるって話だ。匂いとかもすぐなくなるだろうしきっと森より気持ちてきに楽なはず…
森の切れ目に到達するとそこは数軒の露天とまばらに人がいた。その奥にちょっとした洞窟みたいなものが口をあけている。あれがダンジョンに違いない。
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