第150話 因果の行方

「エルフの森?」

「ああ、アリソナ砂漠の先にあるオアシスにエルフの森がある。そこにミハエルは居るはずじゃ!」

「ちょ、ちょっと待ってくだされ!」

「なんだよルーガル?」


珍しく待ったをかけるルーガル。


「エルフ族は外界との関係を遮断し多種族、特に人間族は嫌って接触はしないと聞いた事ありますぞ我輩は!」

「たしかにエルフ族は人間族を嫌っているって俺も聞いた事あるぞ」


カイエンは長生きだから当然そう言う話を聞いた事がある。

理由は判らないがエルフ族は気難しく人間族を嫌っているらしくまず接触はしてこないのが通例らしい。


「確かにゲームでもエルフ族はプレイキャラなら自由だが、NPCだと気難しいからな」

「こらこらゲームの知識はいいからな」


さりげなくそう言う涼。


「なーにエルフ族の長とワシは長い付き合いじゃ何とか話を取り繕ってやろう!」

「本当か蝦蟇爺!」

「無駄に長生きしてないからな〜」

「失礼じゃなお前ら…」


まあエルフは蝦蟇爺が話をしてくれる事になりとりあえず纏まる。


「さてと、問題は誰が行くかだな」

「へ?分担すんのか?」

「斑鳩の時があるからな、また馬鹿が現れないとは限らないからな」

「そうね。前はそこを突かれて失敗したものね。私もそれに賛成だわ」


斑鳩の時はまさか敵が自分達の世界にいたとは夢にも思わなかったからな。


「とりあえず今回はワシを含めて8人で行く。」

「8人?」

「お前達とワシじゃ。和樹達はすまんが留守番じゃ」

「僕達が留守番ですか?」

「何か理由があるのか?」

「船はまだ使えんからな。知識があるお前達は街を守護しつつそれを手伝ってくれないかの?」


なるほど。船は俺の世界の技術も取り入れてるから、知識ある3人が残って手伝だうのが無難か。


「そう言う事でしたら!」

「俺たちに任せてくれ!」

「海斗。悪いがお袋達を」

「介護とお手伝いですね。分かりました師匠!」

「よし、エルフの森へ向かうぞ!お前達準備せい!」



準備を整えた涼達は船の冷蔵庫を通り抜けると以前来たアリソナ砂漠の近くの町までやって来た。

アリソナ砂漠はとにかく暑いが日差しで大火傷したら大変なので厚着している。


「暑いなこのかっこう…」

「我慢せい!エルフの森は蜃気楼に紛れていて行き方を知る者しか入れないんじゃから!」


蝦蟇爺はそう言うと涼の肩にのる。


「蝦蟇爺は分かるのか?」

「無論じゃ」

「まあとにかく行きましょう」


涼はアリソナ砂漠に入って行く。


やはりと言うべきか砂漠はクソ暑かった。

あの時は魔人族がアイスドラゴンを放ち辺りを冷やしていたから寒かったがやはり砂漠なんてこんなもんなのだ。


「暑い…」

「我慢しなさい」

「僕はネコ科だぞ。暑さは無理だ」

「情けないな虎かよそれでも?」

「虎は暑い地方にはいないんだよ!」

「わ、我輩干からびそう…」


蜥蜴は暑い地方にいなかったか?

それはイグアナですぞ!!


「いい皆んな。水は一口に含んで飲むのよ。先は長いから」

「なーに途中でサボテンから水を補給すればよい。生臭いがな…」

「最後の一言は聞きたくなかったよ蝦蟇爺…」


しばらく涼達は歩くとアーチ状になっている大きな岩の側まで来た。


「デカイ岩だな」

「座るなよ火傷するから」

「アーチの向こうに何か見えませんか?」


リアが指さす先にゆらゆらと見える森みたいな物。


「陽炎…蜃気楼か…」

「いやアレじゃ!」

「何?」

「アレがエルフの森じゃ!!」

「マジか…早く行こうぜ!」

「いいやこのまま行ってもつかん」


は?じゃあどうやって行くんだよ。砂漠はまだめちゃくちゃ先があるんだぞ!!


「確か〜あ!アレじゃあの岩じゃ!」


蝦蟇爺はそう言うと巨大な岩に指を指す。

岩が二つ覆い被さっていた。


「なんだよ岩じゃないかよ」

「まあ、見とけ!」


蝦蟇爺は肩から降りる。


「開けーゴマ!」


蝦蟇爺がそう言うと前の岩がズレ始め中から洞窟が。


「えー!?なんだこりゃ!?」

「まるでアラビアンナイトだな…」

「アラビアンナイト?」

「古い砂漠の話だよ」


ランプの魔人のな。


「こっちじゃついてこい」


蝦蟇爺が洞窟に入っていく。

涼達が入り終えると岩は再び動き入り口を塞いだ。


中は暗く蝦蟇爺が光の玉を作り出しあたりを照らす。


「隠し通路か」

「さよう。エルフ族の森はこれを通り抜けなければたどり着けないんじゃ」

「蝦蟇爺はエルフ族の森に行った事あるのか?」

「まあな。もう何年も前じゃ」


いや、何千年の間違いだろ。


しばらくすると行き止まりになる。


「開けーゴマ!」


蝦蟇爺がそう言うと岩が動き出し光が差し込む。

眩しさから目を閉じる涼達。


「ん?は!?」


目の前に広がる美しい自然。

動植物達が共存し手付かずのままの昔の世界な様な幻想的な美しい森が広がっていた。


「綺麗なところ〜」

「ここがエルフ族の森じゃ」


確かにゲームもこんな感じだったな。

それか小説の世界だなまるで凄い綺麗だな。

涼達が感傷に浸っている時だった。


「動くな!」


突然現れた耳が尖った者達が飛び出して弓を構える。

涼達は手をあげる。


「貴様らどうやらエルフの森に入ってきた?」

「いや俺たちは!!」

「ワシはヴァンフォーワード。エルフ族の長 ミハエルに逢いにきた」


蝦蟇爺はそう言うと何か懐から出した。


「ヴァンフォーワード様ですと!?失礼しました!」


エルフ族はそう言うと下がって行く。


「な、なんだったんだ?」

「これは森の通行証でな。これを持つ者は立ち入りを許されるんじゃ」


このドングリの首飾りが?


「来ると思ってたぜ!」

「久々じゃなミハエル。いやエルフ王!」

「お、おっさん!!」


ゴチン!

涼は蝦蟇爺に叩かれた。


「馬鹿者が失礼じゃろうが!!」

「だ、だってよ。監獄にいたエルフだぞ」

「あ、貴方がエルフ王だったんですか!?」


コハクも驚きを隠せなかった。


「よ!2人とも!!」

「おっさん…エルフの王だったのか?」

「だから失礼じゃろうが!」

「エルフ王様。知らなかったとは言え無礼をお許し下さい」


アリシアはひざまづきお辞儀をした。


「なーに気にすんな!」

「気さくな方だな」

「本当にエルフか?」

「2人とも失礼ですよ!、」


リアはカイエンとルーガルにそう言う。


「エルフ王様。俺達がここにきた理由は」

「皆まで言うな飲み屋の孫。因果石についてだろ?」

「やっぱり知ってるのか!?」

「ああ。お前達が来ると踏んで連絡をワザとした。」


涼達を呼ぶためにわざわざ連絡して来たのだ。


「で、因果石ってそもそも何なんだよ?」

「ここじゃなんだ家にはいりな」


ミハエルはそう言うと涼達を家に招き入れた。

ミハエルは椅子に座り込み口を開く。


「因果石って言うのは偶然生まれた魔宝石でな。時空の歪みと空から落ちて来た石が偶然現れた初代勇者の歪みとぶつかり生まれたと俺は親父から聞いた」

「初代勇者様が来た日に生まれた魔宝石…」

「因果石は元々一つだったが一つの因果を生み出すと砕け二つに分かれたと言われている」

「その因果ってまさか」

「そうだ。初代勇者の元に後に産まれる宝石獣達を誕生させる因果を偶然にも叶えたからだ」

「やっぱり…」


アリシアは絵本にで宝石獣達は空から落ちた石の力で生まれたと読んだ為もしかしたらと思ったのだ。


「で、その片割れがどうやら魔界へ行き、あの魔王の手に落ち今に至ると言うわけだ」

「やっぱりヴァニティは因果石の力で…」

「でも何故それが可能と判ったのですか?ミハエル殿?」

「実際、初代勇者が現れてから魔族が支配する世界だったこの世が変わり本来ならあり得ない宝石獣の誕生や対立していた世界の団結などあり得ない因果が生まれ過ぎていたからな」


なるほどな。本来なら暗黒の世だった異世界に現れた救世主の初代勇者はただの宝石商だったワームホールで失くした宝石は因果石の力で神秘の獣の姿を得てこの世を変えた。

その因果を偶然にも叶え一度砕け二つに分かれて飛んでいったと。


「つまり宝石獣達が産まれる因果は自然の理に完全に逆らう存在故にそれを成就させ一度力を失い分かれて飛び立ったって事か?」

「まあ、ざっくり言うとそうだな」

「ルビティラ達がその因果石の力で産まれた存在だと…」

「色々な偶然が運命に代わりみんなが産まれたんですね」

「だが、喜んでばかりもいられないがな。片割れは悪意を感知し魔界へ行き奴が手に入れこの世はこうなったんだ」


宝石獣とはそれだけ巨大な存在だと今になって感じる涼達。

だが、この宝石獣が産まれなければ魔族を倒せなかったしアリシアも生まれなかった。しかし、憑依一体、表と裏がある。ヴァニティとはまさにその裏の願いから生まれた魔王なのだ。


「その因果石はどこにあるんだよ?」

「わからん」

「わからんって…何でだよ!!」

「因果石は手に入れる星の元に生まれた奴しか手に入れられないんだよ。それに形が定まってないからどんな形かもわかってない」


ちょっと待てや。つまり運命に選ばれた奴しか手に入らないって言う曖昧な理由で手に入れる代物なのか!?

それは流石に無理だ。


「そんな…」

「何故そんな事わかるんだよ?」

「現に手に入れたのは初代勇者の魂の生まれ変わりばっかりだからだよ」

「産まれかわり!?」

「そだ。この地に落ちた因果石はな。残念ながらお前らは誰一人違うから手に入れるのは無理だな」


じゃあ、どうしようもないじゃないか…


「だが、片割れに手に入れる様に操作されれば必ず手に入はいるらしい。」

「え?」

「それって…」

「ヴァニティと結果的に片割れである涼。お前は間違いなくヴァニティにそうなる様に操作されている」

「マジか!!」


おいおいマジかよ。

ヴァニティよ何でそんな愚かな事をしたんだ?俺達に勝ってくれと言ってる様なもんだぞ。


「じゃなきゃ魔王軍が頻繁に動き回る訳ないだろ。どこでお前が手に入れるかまでは分からないが奴らが暴れてるのは何処でお前が手に入れる為の口実を作ってるからだ」

「何で判るんですか?そんな事??」

「エルフは未来予知ができるからな。少しだけ見えたから伝えたんだ。だが、何処で手に入るかまでは判らないが」


だが俺が手に入れる運命にある。それは間違いない。なら答えは一つだ。


「ヴァニティは関係ないぜ!その因果石ありがたくいただこうじゃないか!」

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