第149話 秘宝の伝承
昨夜の祝賀会のドンチャン騒ぎが終わり涼達はガネットへ戻って来た。
本当に色々あってやっと帰国出来たって感じだ。
街の人々も解放され戻って来れたが偽物のジュリアンのせいで意味なく殺害された人々も沢山いる。
しかも、ガネットの兵士達は斑鳩に大半が加担した為街を守る兵達が見習いしかないときた。
まあ、いないよりはマシだが…見習いの兵士達だけでは意味がない。
そこで、街を守る自警団をパーシーとポップが名乗りを上げレジスタンス時代の仲間達を集めてやって来てくれたのだ。
城も修復にだいぶかかる。
涼達は壊れてない城の小部屋に集まりこれからの事を話し合っている。涼とアリシアのほぼ決まった婚約話は置いておいてだ。
「しかし、深刻な被害ですね…」
「今、魔人族に責められたら…ひとたまりもないぞ」
「偽物野郎が好きにやりやがったから!」
「大半は泥棒女が好き放題にしたがな」
そうガネットの人口を大半打ち首にしたのは玉座に踏ん反り返っていたアイカである。
だいぶ住民からもあの性格は知れ渡っていた事もありほぼ誰も彼女に忠誠を誓いたがる者はおらず故にあの性格もあり好き勝手に人の命を散らしたらしい。
「しかし、あの偽物何がしたかったんだか…」
「それなんだけど…」
アリシアが口を開く。
「偽ジュリアンに捕まっていた時なんだけど、あいつガネットに伝わる宝を教えろってしつこかったのよ…」
「ガネットに伝わる宝?」
この国にそんな宝なんかあったか?
確かに初代勇者が収めた国だからそんな話はあるかもしれないけどでも宝救聖剣も勇者石も見つかった今それ以上の宝なんかあるのだろうか?
「おいブラキオ何か知らないか?」
「知らぬ」
「即答かよ!お前知らない事多すぎだろ!仮にも神だろ!」
「我とて産まれたのは定が来て暫くしてからだ!知らない事だってある!」
まあ確かに。ていうかコイツが産まれる前の話って事なのか?
「アリシア何か聞いた事あるのか?」
「うーん…私も解らないわね…偽物が言うにガネットが国になる前の話らしいから…」
「蝦蟇爺アンタは?」
「うーむ…ワシは定を呼んだだけでその後は特に一緒にいたわけではないからな…ワシは王宮の魔導師で共には旅立てんかったからな…」
蝦蟇爺はあくまでジルドレイと初代勇者を召喚しただけでその後はどうやら散らばった当時の宝石獣達を集めて回っていたらしくそれが後の初代勇者達らしい。
「かといってあのカルト集団が何か知ってるとは思えないしな…」
「口をわるなら騒ぎ何か起こしてないだろ!」
確かに。
「初代勇者と関わりがあった奴に聞くしかないか?」
「ポップとパーシーさん?」
「ああ」
「アイツらは今自警団の活動でいないぞ」
「あ、そうか…遠州行ったんだったな…」
たく、こんな時にいないなんて。
「いやちょっと待てよ!」
蝦蟇爺は術で何かを取り出す。
出てきたのは虫食いだらけの本。
「何だそれ?」
「伝書じゃ!」
蝦蟇はそう言うと本を開くとページをめくる。
「随分古いですね」
「昔の書物じゃがな…」
「どんな伝書何だ?」
「この世界に伝わるあらゆる伝書を書き記し残した魔法の本でな。どんな小さな事でもいい何か残ってないか?」
蝦蟇爺がそう言いながらページをめくる。
「料理について何かは?」
「あるか馬鹿もん!」
海斗に怒鳴る蝦蟇爺。
「レッドベリルくらい有名ならな…」
「レッドベリルか〜そう言えばレッドベリルを見つけた場所で二つに割れた石があったな…」
「二つに割れた石?」
「ああ、妙な石でな空から降って来て落ちた場所からまた割れ一つは空の彼方へもう一つはこの地の何処かに飛んでいったのじゃ」
何だそりゃ?空から降って来た?隕石か何かか?
突然涼のバックルが鳴り響く。
「ん?何だ?」
涼は応答する。
「ベルか?」
「俺だよ!」
バックルから聴こえて来たのは知らない奴の声。
「誰だよ?」
「アイシクルプリズンで相部屋だったろが!!」
「あ!あの時のエルフのおっさんか?」
「おっさんじゃねーし!!」
通信相手はアリソナ砂漠で出会った六人目の先代勇者だったエルフ族のミハエルである。
「その声はミハエルか?」
「ん?ヴァンフォワードの爺さんか?」
「何故お前が?」
「チビ助に聞いてな」
そういやルビティラがまだ子供だった時に知り合ったって話だったな。
「で、何の用だよ?」
「いやな、魔王軍がこっちでやたらと活発に動いているんだよ。お前ら因果石って知ってるか?」
「因果石?」
「エルフ族の間じゃ有名な宝石で何でも運命を自由に操作できるっていうお宝だ。」
「それを魔王軍が探してるのか?」
「らしいぞ。」
因果石…?魔王軍が探してる宝ってまさかコレの事なのか?
「それ何処にあるんだ?」
「さあな〜何せ型が定まってないらしくてな。伝説では輪廻転生の導きより選ばれた運命を持つ1人だけが手に入れるって話らしい。」
「輪廻転生の導き…」
「後どうやら、この石は2つあったらしくて一つはこの地の何処かにもう一つはワームホールを通って行ったらしい」
ワームホールを通って行った?まてよ、その伝説が本当なら…まさか…
「まさか…おっさん。その宝って運命を弄るんだよな?」
「伝説ではな」
「例えば何の力も無い人間を魔力を持つ運命に差し替える事出来るか?」
「伝説が本当ならありえるが…」
「マジかよ…」
「どうした?」
「いや、ありがとう。次はこっちから連絡する」
涼はそう言うと通信を切る。
「涼、今の通信って?」
「前に船の部品探して行った砂漠であったエルフ族のおっさんだ。」
「因果石とミハエルは言っていたな?」
「その様な話我は知らぬぞ」
「天文学数値レベルの突拍子も無い話でしたね」
「流石に魔王軍もそんな物を探しませぬよ」
「いや…あるんだ…」
涼は思いつめた顔になる。
「先生?どうかしたんですか?」
「みんなには話したよな?ヴァニティが…もう1人の俺だって事…」
「ああ聞いたぞ。」
「おかしいってずっと思ってた…」
「何をですぞ?」
「何で勇者に選ばれてない人間があんな滅茶苦茶な力を持っていたかだ。答えは簡単だった…」
「答えですか?」
「一体何よ?」
涼はソファーに座り口を開く。
「その因果石は魔界へ飛んで行き、それをもう1人の俺が拾って使ったからだ!」
「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」
一同はハッとなる。
「でも因果石は伝説でしょ?」
「いや、ワシがあの時見た石がその因果石だったのかもしれない。」
「その石っていつ見たんだ?」
「定を召喚したその日にだ」
「つまりヴァニティの無茶苦茶な力の正体はその因果石によるものだと言いたいのかお前は?」
信道が涼に聞く。
「そうとしか考えられない。勇者石を拾わなかったもう一人の俺がどうやって力を得たか?きっとその石だ。」
「じゃあ魔界は蝦蟇爺達が魔族を追いやった時にはとうに奴は君臨していたって事か?」
「多分な…いやそれだけじゃない。魔界に俺達の世界の人間が混じっていてしかもヤバイ連中ばっかり。」
「奴からが来る事は運命操作で決まってたって言いたいのか?」
和樹がソファーから立ち涼に聞く。
「だって話が上手すぎだろ?魔人族がこの異世界を支配する為の布石があっち側にとうに整ってしかも、こちらの事情まで完璧に把握した上でこれまでの事をしたなら。そう考えた方が辻褄が合いすぎるだろ?」
「確かにジルドレイの実験の成功やカルト集団に泥棒女の先祖を魔界を導き更には豚男爵がガネットに潜り込んだ事も全てこちら側の情報が伝わる運命として弄ったから筒抜けだった事か!」
馬鹿げすぎた話だけど、その伝説の石が本当ならこれまで魔人族側にあれだけのアドバンテージがあった事も説明がいく。
「もしそれが本当なら、僕達に勝ち目はないじゃないですか!!」
「確かにヴァニティに運命操作の力があるなら僕達が束になってもまず勝てない…」
「だが、逆にその因果石を俺達が見つけられれば互角に渡り合えるって事だよな!」
確かに信道の言う通りだが。
どんな形でどんな物かも解らないんじゃ探しようがない。
「なあ、エルフのおっさんとコンタクトを取ってみないか?」
「そうね。情報が少なすぎるものね。私は涼の意見に賛成だわ」
「それにエルフ族なら涼の身体の異変をどうにか出来るかもしれんしな」
話題には出ていないが涼の両手は黒ずんだままなのだ。
一種の呪いかと思い聖水などで治療したがまるで効果が現れない。恐らく放射線が原因か。
「エルフなら私の剣を直せる方法も知ってるかしら!」
「そういや、折れたんだったな姫様の剣」
宝救聖剣はヴァニティに破壊されてしまった。
しかも、今のブラキオでは直せないと来た。エルフ族なら初代勇者と関わりがあったと伝承でもあったくらいだから何か知ってるかもしれない。
「よし決まりだ!」
「で、蝦蟇爺。エルフのおっさんは何処に住んでるんだよ?」
「エルフの森じゃよ」
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