第151話 次の旅へ
「あえてその運命を受け入れると?君らしいよ全く」
「何にしてもその石があれば運命を変える事ができるって事なんですよね?」
「因果をな。」
「同じだろ」
結局は。
「因果を変えるって事は、やり方によっては世界そのものを変える事が出来るんじゃないか?」
「と、いいますと?」
「例えば、ヴァニティが誕生しない因果を作る事も出来るって事だよな?」
「確かに。因果とは運命と違い結びつく道筋を解いて無かった事にも出来る。決まっている結び目を変える事が出来るぞ!」
「蝦蟇殿もっとわかりやすく…」
わかるぞ俺も判らないからな。
「要は過去の因果さえ変える事が出来るって事よ。つまり過去をまるごと変える事も出来るのよ。その石を手に入れれば!」
「おお!まさに神さまになるのですな!!」
視点は違うがまあそんな感じか。
「そうなったらヴァニティはどうなる?」
「因果を変えるって事は即ち奴が魔界へ行く運命が消える、だからヴァニティもあの犯罪者の異世界人達もこっちに来る事がなくなる。要は奴らの存在が完全にこの世界から消えるはずだ」
「つまり因果石を使えば不幸な偶然に巻き込まれたあいつらも元の世界の人生をやり直せると?」
「そうなるな。」
つまりこの異世界がおかしくなる因果を切る事が出来るんだな。魔人族に支配される事もそれどころかヴァニティが消えれば魔界もあんな腐敗した世界になる運命も差し替える事が出来る。
「じゃあ、ヴァニティを完全に倒すにはその因果石を使って奴の存在を消せばいいって事か?」
「ヴァニティが消えればあの犯罪者達の因果も豚箱行きに変わるからもう好き放題には出来ないはずだ」
「ちょっと待って下さい!」
リアが待ったをかける。
「なんだいリア?」
「ヴァニティを消せば確かに世界は救われますけど、ヴァニティは涼さんなんですよね?」
「確かにそうですが奴は涼殿であって涼殿ではないんですぞ!まるで他人ですぞ!」
「いや違うぞ。」
コハクが口を開く。
「何が違うんだ?」
「涼は勇者石を拾ってこの世界に来た、ヴァニティはその運命があったから生まれた存在だ。ヴァニティを消すって事は…」
「は!?涼がホウキュウジャーの存在も無くなる…」
アリシアは気づいた。
涼が勇者石を拾い導かれこの世界で勇者にヒーローになった、ヴァニティは勇者石を拾わなかった世界のもう一人の涼。つまり、運命の分かれ目はその地点。
ヴァニティを消すというのはイコール涼が石を拾わなかった運命に最初からする事になる。
「つまりヴァニティを消すには涼がこの世界に来る因果を無かった事にしなきゃならないって事なのか!?」
「そうなるな…」
「嫌よ!涼が居なくなるなんて!私嫌よ!!」
「大丈夫だよ。俺は居なくならないよ」
「ですが、因果石を使うと言う事は!?」
「他に使い道があるかもしれないだろ?だったら探そうぜ方法も模索しながらな」
涼はそう言う。
確かに因果とは結果論だ。必ずしも正解の運命がそれだけとは限らないはずだ。きっと他に方法はあるはずだ。
「そうだな。因果石をどう使うかはその時に判断すればいいんだ。今はヴァニティを止める力を見つける事が最優先だ」
「そうだよなのぶさん!」
「そうですね。未来はいくつも広がっているんです。他の選択肢も必ず見つかるはずですよ」
「だとしたらのんびりしてらんないな」
「ですな!探しましょう因果石を!」
仲間達は同意見だ。
「話はまとまったか?」
「蝦蟇爺。因果石を探す。それでいいよな?」
「お前達なら間違った使い方はしないだろ。」
蝦蟇爺も笑っている。
「後、エルフ王。涼の手を治す事は出来ませんか?」
アリシアがミハエルに尋ねた。
「手を治す?」
「これなんです」
アリシアは涼の両手の包帯を外す。
包帯を外すと中から黒く変色した両手が露わになる。
「何だこれ?呪いか??」
「いや放射線にやられたから」
「放射線?」
「俺の世界のヤバイ石の後遺症って奴だ」
「こりゃ酷いな…」
ミハエルはじっくりと見ると涼の手に治癒術をかける。
「どうですか?」
「これは無理だな…」
「そうですか…」
「エルフの術でも駄目なのかよ…」
どうやら涼の両手はエルフ王でも治せないらしい。
「ミハエル。アリシアの剣はどうじゃ?」
「アレか〜宝石神は無理なのか?」
「ブラキオは今力を失っているので…」
「そうだな〜直せるかは判らないが、ドワーフ族とゴブリン族なら直す手立てを知ってるかもしれないな」
ミハエルは砕けた宝救聖剣を見てそう言う。
「本当ですか!?」
「ドワーフとゴブリンか〜こりゃまた面倒な種族を当たるな〜」
「なんだよ蝦蟇爺?」
「ドワーフとゴブリンは確かに優れた刀鍛冶(ブラックスミス)だがゴブリン族はかなり恩着せがましい奴らと聞くからな」
ドワーフ族は物を作りゴブリン族は特殊な金属や宝石を加工する事ができる種族だ。ドワーフは物分かりはいい反面ゴブリン族は対価を要求したり恩着せがましかったりと余り愛想のいい種族ではない。
「でも直せるんですよね?姫さまの剣」
「あくまでも可能生があるって話だ」
「かつてジルドレイもゴブリン族から加工を学び剣を制作したとワシも聞いた。確かに出来るかもしれん。性格が問題がある種族ではあるが…」
蝦蟇爺は正直心配なのだ。
会ってどんな要求をされるか判ったもんじゃないからだ。
「行きましょう!」
「話を聞いていたのか?アリシア姫。可能生があるだけで絶対はないんだぞ」
「それでも、私は涼達と戦いたい。そして決着をつけたいの」
「アリシア…」
「ヴァンフォワード様お願いします。行かせて下さい、」
アリシアは頭を下げる。
「全く…貞とジャンヌの子孫だなお主は…いちど言い出したらテコでも動かんのじゃから」
「決まりだな蝦蟇爺!」
「よし、いっちょドワーフとゴブリンに会ってみるか!」
「そうだ、お前さんの手ならもしかしたらトレイニー族なら癒せるかもしれないな…」
トレイニー?
トレイニーって確か植物の精霊みたいな連中だろ。
たしかに薬草や治癒力の高い何かをしってるかもしれないからな。
「トレイニー族はエルフの森を抜けた先の外れの森に住んでいる。ドワーフとゴブリンはその側の国で商売してる筈だ」
「わかりました。みんなそうと決まれば善は急げよ!」
「このまま行くんだな?」
「ええ!」
「じゃあベルちゃんに連絡しますね!」
涼達はまずはトレイニーに会いに行く為にエルフの森の出口に案内された。
「ありがとうございました。エルフ王!」
「剣が直ることを祈ってるぜ!」
「ありがとうなおっさん!」
「ああ、ルビティラに宜しくな!」
「さらばじゃミハエル!」
涼達はエルフの森を後にすると旅立って行った。
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