第118話 死に行く世界の車窓から
「うわー!」
「き、気持ち悪い….」
そりゃそうだ、ジェットコースターみたいに激しく上下左右と回りながらスターダムオリオン号はワームホールの中で跳ね回っているからだ。
「持ち直さないと!」
「結界を一回切るんだベル!」
「戯け!結界を切ったらあっという間にペシャンコだぞ!」
ブラキオが声を上げた。
ワームホールの中は磁気嵐が酷く宝石獣さえアルミ缶みたいにぺちゃんこだ。
今結界を切ったら皆んな潰れてしまい忽ち血の雨だ。
「皆んな落ち着いて!」
「それは無理ですぞ!姫様!」
「かっこいい旅立ちになる筈だったに!!」
「んな事言ってる場合じゃないだろが!!
頭が外れ弾みながら声を上げるカイエン。
「(´༎ຶོρ༎ຶོ`)」
「狼狽えるな胴体!いててて!」
身体はシートベルトで固定されてるが頭は壁にぶつかりまくる。
「見て下さい!光が!」
ワームホールの先に光が見える。
きっと出口に違いない!!
「みんな捕まるでありますよ!」
涼達は必死に捕まる。
ワームホールを抜けた船は出ると同時に結界が切れると下に真っ逆さまに落ちた。
「「「「「「「「「「「「うわー!」」」」」」」」」」」
声を上げながら真っ逆さまに墜落するスターダムオリオン号。
ドボン!!
スターダムオリオン号は水に落ちた。
そして、ぷかぷか浮いて来た。
「み、皆んな…無事か…」
涼はクラクラする頭で必死に起きた。
「うー頭が…」
「(@_@)」
「まだクラクラする…」
「な、何があったんですか?」
「し、死ぬかと思いましたぞ…」
「で、あります〜」
「いててて」
「たく、毎度毎度トラブルばかり」
「もういやこんな生活…」
「それは言わないの!!」
「ここは一体?」
とりあえず全員無事だった。
「ルビティラ達は!?」
涼は宝石獣達が待機してる格納庫へ走る。
そこでは皆ひっくり返ってはいるが宝石獣達は全員無事だった。
「ルビティラ!大丈夫か!」
「何とか大丈夫ティラ!」
涼はルビティラをコックピットへ連れてきた。
「ベル、ここは魔界なのか?」
「判らないであります」
「何だって!?」
「赤い海なんて知らないでありますよ!」
「赤い海だと!?」
涼は窓の外を見る。
そこは一面血のように赤い海が広がっていた。
「何だここは!?」
「場所もそうだがここはマズイぞ」
和樹が真宝剣で何かを調べていた。
「ただの海じゃない….汚染された海だ!」
「汚染だと!?」
「ああ。この海はもう死んでるも同じだ!」
「何だって!?」
「じゃあ赤いのってまさか、赤潮!?」
「そうだ。」
赤潮って確かプランクトンが異常発生してる時に起きる現象だよな?
確か海が相当汚れてる時に起こる。
「何でこんな事に…」
「ていうか一体何で船は爆発したんですぞ?」
「いい質問だルーガル」
「答えはコレだな!」
信道が何か持ってきた。
「何だそれ?」
「コレは魔王軍の時限爆弾であります!?」
「魔王軍の爆弾!?」
「何でそんな物がこの船に!?」
「ていうかいつの間に設置されたんだ!?」
恐らく設置したのは斑鳩の国の技術者である。
ジュリアンが命令していたのだ。
「それもいい質問だ。少なくとも僕達ではないのは間違いない。考えられるのは一つだけ…」
「まさか!?」
「斑鳩が!?」
「それしか考えられないだろうな」
「信道何で言い切れるのよ?」
「ガネットは他の国の情報はどうしていたんだ?」
信道はまずアリシアに他国の情報について確認する。
「え?それは国に直接伝令で来たわよ!」
「最近の事件は全て俺達が知らない国で起こった事が殆どじゃないのか?」
「確かに…アリソナ砂漠の氷漬けも」
「害虫大量発生も」
「魔人族が領地になっていたのも、僕達の手の行き届いてない国ばかりだ!」
「それらは全てはガネットには伝わってなかったですよね姫様?」
「確かに…ジルド教の事もそうよ…まさか!?」
アリシアは一つの仮説を立てる。
それは全て友好国 斑鳩が情報操作をしていたからではないかという仮説。ジルド教だけでなく斑鳩大国が絡んでいたならこれまでの悪質な事件が隠蔽されていのも納得できるからだ。
「斑鳩とジルド教が全て隠蔽してたって事なの!?」
「その裏には魔人族が絡んでる!」
「ていう事は船が壊れたのはあのジュリアンとか言う王子のせい!?」
「それしか思い当たらないよ!!」
おいおい。これってかなりヤバイじゃないか。
もし、斑鳩のいや、ジュリアンの目的が俺達をあの世界から追い出す為だとしたら、今頃ガネットは!?
「お父様!ひいお祖母様!」
アリシアは慌てて食堂に設置された冷蔵庫へ走る。食堂も酷い有様だった。
食器は割れて散乱し食材はバラバラ事件の様に転がっていた。
アリシアは急いで冷蔵庫に取り付けた人口宝石を回し冷蔵庫を開けるが中は普通の冷蔵庫のままだった。
「嘘!?ガネットに秘密基地につながらないわっ!?」
「何だって!?」
駆けつけた涼が声を上げた。
ベルが慌てて冷蔵庫のコンソールを弄るがエラー標識が出てしまう。
「な!?向こう側のどのマーキングにも繋がらないであります!?斑鳩の仕業でありますっ!!」
えーーー!
「誰も向こう側に帰れなくなったでありますっ!!」
嘘だろ…俺達ガネットに戻れないってのかよ!?
「駄目だ…動力部もやられてるぞ!」
「センサーも壊されてます!!」
「おい!誰が聞こえぬか!?」
ジージーガーガー
無線も駄目だ。
「最悪だ、積荷がもぬけの殻だぞ!!」
「何だって!?」
積荷を見に行ったカイエンが声を上げた。
「そんな…これじゃ船を直せないで…あります…こんなのってないでありますよっ…う、うわぁぁぁぁぁん!!」
ベルはとうとう泣き出してしまう。
積荷には修理に使う部品や予備の功鉱石が積まれていたが恐らく騒ぎに紛れて斑鳩の兵士達が全て捨てたのだろう。
「泣かないでベルちゃん!大丈夫ですから!」
「ベル!泣くなティラ!」
「うわぁぁぁぁぁん」
ベルは座り込み大泣きする。
「大丈夫だ!ベル。泣かなくていいぞ!」
「え?」
「皆んながついてる!周りを見ろ!」
ベルは周りを見渡す。
仲間達は誰一人として自分を責めず微笑んでいる。
「ベル!ウチで1番の天才はお前なんだ!だから俺達はお前を信じてる!だから頑張ろ!な!」
「涼…さん…」
ベルは袖で涙を拭いた。
「そうでありますね!泣くには早いであります!」
「そうだぜベル!その行きだ!」
「ベルちゃんに私達がいますよ!」
「泣きたくなったらプリンを作ってあるからな!」
「俺も特大プリン作りますよ!」
「ベルちゃんだけが頼りよ!だから頑張ろ!」
「はいであります!姫様!」
ベルはそう言うと立ち上がる。
「取り敢えずあり合わせまずは飯だ!」
「腹が減っては何とやらですな!」
「海斗、リア手伝ってくれ!」
「はい!」
「分かりました師匠!」
信道達は厨房へ向かう。
「僕達はまず情報の確認だ!」
「まずは状況確認ですね!」
「それと皆んなが旅先であった事も話して頂戴!」
少しして信道達がサンドイッチを作って持って来てくれた。涼達はそれを食べながら情報の確認を始める。
「初代勇者の末裔ね〜そんな人に会ったんだ」
「ああ、まさか初代勇者に泥棒が混じっているとは驚いた」
「ですな!」
「いや、ルーガル俺達はもっと驚かれてるだろ」
確かに蜥蜴と首無しが勇者だからな。
「小人もそうなんですよ!」
「小人だって!?」
「初代勇者は小人族もいたそうだ」
「まさに異世界あるあるだな…」
「僕達も人の事言えませんよ和樹さん」
異世界人が勇者も漫画やゲームん中の話だからな。
「怪人がまさか人体実験された人間だったなんて…」
「皇時也…俺はアイツを許せない…」
「判るぜ海斗。俺もアイツには用がある!一発殴る!」
「自分は2回殴ります!」
「しかし、アイカは本当にロクな事しないわね」
毎度何処からともなく現れてトラブルばかり引き起こすんだから。
「身内を殺す為だけに火山を噴火させるわ…」
「放火魔を異世界に呼び寄せて犯罪者をそのまま怪人にして好き放題させるわ…」
「砂漠を自分勝手に氷漬けにして周りの人達を平気で生ゴミ呼ばわり…あったまくるわ!:
本当に悪行の数々だ。
だが、しかし疑問点もある。
「あの人はどうやって魔界と行き来してるんでしょうか?」
「確かに…」
ワームホールは磁気嵐だらけでとても人間が通れる訳がない。だが、魔人族はどうやってあっちの世界へきてるんだろ。
「それに俺たちが旅してる間の泥棒女が現れた時間帯は、ほぼ変わらない…」
「時間と空間を操ってるとか?」
「いや違うだろきっと…」
「ですが、魔人族ですぞ、そう言う力があってもおかしくないかと…」
「確かに泥棒女が俺達とタイムラグがズレないで現れたのはどうもおかしいぞ」
そう涼達以外でアイカなんと同じ時刻と時間帯に現れてらいたのだ。3週間前に同じ時刻で別の場所に同時にいるなんておかしい話だ。
「時差とかは?」
「あったとしても一瞬でその場所に行けるのか?」
確かに瞬間移動でもしなきゃ無理か。
「でもその方法が判れば!」
「ガネットに戻れる!!」
「そうか、ここが魔界なら何かしらあるはずだ」
「でも魔界かどうかも謎ですぞここは!?」
「あ、そうか…」
手がかり判ってもここが何処か判らないんじゃな。
「とにかくまずは位置確認が重要でありますね!」
「よし、海斗。ゴルーケンとプテラで偵察に行くぞ」
「分かりました師匠!」
「ちょっと待って!」
アリシアが待ったをかける。
「何があるから判らないから小隊を組んで行った方がいいわ!」
「そうだな。その方が安心だ」
「で、どうする?」
「取り敢えず二手に分かれてましょう!」
話し合いの結果。
それぞれ、船からみて東と西をゴルーケンとプテラで偵察へ行く事にした。
ゴルーケンには信道とルーガルと愛が乗り込み、プテラには涼、海斗、アリシアが乗り込み偵察へ向かう事になった。
「姫様が行かなくても良いのでは?」
「こう言う時だからこそ行くの!」
「全くアリシアはじゃじゃ馬だな。」
「褒め言葉として受け取っておくわ!」
本当にたくましくなったな全く。
「じゃあ行ってくるわ!」
「必ず連絡するでありますよ!」
「無茶するなよ!特に涼!」
「何でだよ」
「ホラ行くわよ!海斗お願い!」
「プテラ行ってくれ!」
「テラー!」
オーケーアーミーゴー!!
プテラは東へ飛んで行った。
「俺達も行くぞ!ゴルーケン!」
「アーアー!」
ゴルーケンも西へ偵察へ向かう。
成果はあるかどうかはまだ謎だが…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます