第119話 大陸の先の責任者
「魔界だと!?」
「この赤潮だらけの世界がか!?」
「間違いないでありますよ。」
「でもここ魔界なら他の魔人族は?」
確かにそうだ。
ここが魔界なら魔人族は何処に行っんだ?
「ベル。やっぱここは魔界じゃないんじゃ!」
「いや、魔界だここは!」
探索から戻って来た信道、ルーガル、愛。
「信道!」
「のぶさん何でいいきれんだよ?」
涼が信道に聞いた。
「それはな、これだよ!」
信道の後ろに居たルーガルは誰かを背負っている。
ツノを生やした男だ。
血だらけでぼろぼろじゃないか!
「ま、魔人族!!」
「我輩達が行った先の大陸で助けたのですぞ」
「ルーガルさん。こっちへ。治療室へ向かいましょう!!」
「かたじけないリア殿。」
リアはルーガルと治療室へ連れて行った。
「その様子だと、そっちも何かみつけたんだな?」
「ああ、かなりヤバイ物を見つけたよ。魔王軍は自分の世界で核実験をしてかもしれないんだ!」
「核実験ですって!?」
「祖父さんが昔言ってた爆弾の燃料か?」
「ざっくり言うとそうだ。」
信道の祖父は第二次大戦時代から召喚された人間だ。当然あの兵器の恐ろしさは誰よりも知ってる。孫である信道はよく聞かされていたので名前は知ってるが、住んでる異世界には存在しない代物だ。
「信道。そっちはどうだったのよ?」
ブリッジの椅子に座りながら話し合っている涼達。
「僕達の方も大陸は見つけました。けど、凄い貧困騒ぎでした…」
「貧困騒ぎだと!?」
「ああ、食うか食われるかのヤバイ光景だった」
「降りたら我輩が危うく食われる所でしたから…」
「あの魔人族は?」
「戻る途中で海岸で見つけてな。ほっとけなくて拾って来たんだ」
信道達の方は涼達の様に荒れ果てた荒野ではなかったが、人々が貧困状態で食うか食われるかの状態で過ごしている難民の村があったらしい。
「ベルちゃんどうなってるのよ?」
「私も良く知らないでありますが、もしかしたらヴァニティが現れた時に何人か権力者が現れ、その際に格差を作り追いやったんじゃ…」
は?何処の悪質な貴族だよ。
「確かベルは魔人族の一般市民って言ってたよな?この世界には格差社会があるのか?」
「あるでありますよ。」
「なんだよソレ!?」
「そもそも魔人族はジルドレイがヴァニティとつるんで送ったのが始まりだろ?」
そうだ、あの憎ったらしいジルドレイのせいで魔王軍は異世界へ渡り現在好き放題しているのだ。
「ベルは最初俺達が敵って言ってたよな?アレは何なんだ?」
「アレは向こうに行った魔人族が無残な姿で帰還したからあっちの世界の人間に皆殺しにされたと聞かされたんでありますよ!」
「多分それは、皇時也に怪人にされて当時の勇者達に倒された…人体実験に使われた一般市民だ。」
つまりベル達魔人族が俺達を敵視していたのは無残な姿で帰って来た仲間を見てそれをやったのは異世界の人間と教えられて来たから。
実際は時也に怪人にされた魔人族が無残な姿で元に戻されて見せられて誤解したんだろ。
「そんな…私達は騙されていたでありますか!?」
「あのくそったれの放火魔野郎だ。絶対に違いねぇ!」
「皇時也…本当に頭に来る!!」
「落ち着け海斗。これで一つ謎が解けた」
「そもそも魔人は何の為に私達の世界に来たのかしら?」
「確かにそれは考えた事ないよな?」
確かに今まで悪い一面しか知らないから本質的に魔人族が何しに来たかなんて知る由もなかったな。
「聞いた話では新たなエネルギー源になる鉱石を求めて旅だったと聞いたでありますが」
「エネルギー源?」
「魔法石か!」
「でありす。魔石は貴重でもう大半取り尽くしてしまいエネルギー不足になってるんでありますよ」
魔界って今そんなエネルギー源不足で困窮してる世界だったのか!?
「もしかして、この世界に核があるのは!?」
「エネルギー不足を補う事を理由に」
「本当の目的は知らされない上に副作用も知らないまま実験した成れの果て…か…!?」
だとしたら誰が魔界に原子炉なんか持ち込んだんだ!?
「そんな…これじゃ都合のいい家畜扱いじゃないかよ!!」
「多分ヴァニティが何かして、それに釣られて設置を許して実験を繰り返していく内に…海はああなった…」
「酷い話ですな…」
「あくまでも推測だ。」
けど、この世界の人達を利用してる事に変わりはない。
「私もまさか、魔界の海がこんな事になってるなんて知らなかったったでありますよ…」
「何してものぶさん達の方角なら安全そうだな。」
「ベル。エンジンはどれくらいで直る?」
「うーむ。のぶさんと2人で何とか今夜中には直すであります!」
「よし来た。俺の錬金術なめんなよ!」
あ、錬金術あんだよなこの世界。
のぶさんはその道のプロだったよな確か。
「皆さん。」
リアとルーガルが入って来た。
「目を覚ましましたぞ!」
「本当か!?」
「話を聞いてみましょう!涼は私と来て。信道は何か食べる物をお願い!」
「あいよ!」
「他のみんなは待ってて。大勢で押しかけたら驚くから!」
アリシアはそう言うと涼を連れて治療室へ向かう。
治療室のベットの上で目を覚ました魔人族の男は信道が作ったお粥をかっこんでいた。
よっぽどロクなもん食べてなかったんだな。
「ありがとうございます。助かりました。」
「いやいや。それより何があったんだ?」
「はい、間も無くこの世界は滅んでしまいます」
「滅ぶってどう言う意味だ?」
「海の向こうのかつての都市…あそこに建てられた神のエネルギーのせいで海は死にたえ…大地は枯れて…仲間達は謎の病に倒れて3日と持たず死に絶えたんです…」
放射線の後遺症か…
「神のエネルギーって核の事か!?誰がそんな事を!」
「魔王ヴァニティ様はかつてこの地の魔石を全て持ち去り代わりと言って神のエネルギーとその責任者を置いて行かれたのです!」
「責任者?」
「万物を創造する世界から呼び寄せた救世主の1人だと言っていたそうなのです」
ちょっと待て、万物を創造する世界の救世主ってまさか、俺の世界の誰かをしかも原子炉なんかを作れる奴を読んだってのか!?
「子供の頃から当たり前の様にあり変化が起きたのはここ数十年の間です」
「溜まりに溜まった放射線が牙をむいてあねありまさか…」
「ちょっと待って!あの施設に行ったけどざっくり100年くらいは経ってる程腐敗してたわよ!アレは一体??」
「確か、100年くらい前に第1研究所が爆発したと聞いてますが…」
あーなるほど。
おかしくなったのは放射線ダラダラの状態でまた原子炉を作り知らずに使っていたからか。
「その責任者って誰?」
「確か名前は間藤…間藤ジンと聞いた事が…」
「間藤…ジン…」
また異世界から呼び出した犯罪者か!?
一体何を考えてんだよヴァニティの奴は!?
「その間藤ジンって何処にいるか判るか?」
「確か噂では、ポーカーシティを根城にしてるって聞いた事が…」
「ポーカーシティ…何処だ?」
「私の村の先の都会です」
涼とアリシアは大体の話を聞き終えると男をベットへ寝かせるとブリッジへ2人は戻る。
「異世界の来訪者、間藤ジンか…」
「皇時也みたいに異世界に来た犯罪者か!」
「まだ、分からないがな」
「で、これからどうするんだい?」
「船がこれじゃどうにもならない。部品の調達も兼ねてそのポーカーシティへ行こうと思うの!」
船が飛べないんじゃまず意味はない。食料にも限界は必ずくる。そうなる前に戻る手がかりを探さないとならない。
だとしたらその間藤ジンとか言う奴が何か知ってるに違いないはずだ。
「吊るし上げて洗いざらい吐かせるぞ!」
「そいつが悪い奴ならな…」
「違うというのですか?」
「正体が分からなきゃって話だ」
「だったらやっぱり行くべきですね姫様!」
「そうねリアさん。みんなそれでいいかしら?」
仲間達は皆首を縦に振る。
意義はないようだ。
「エンジンも明日には修理出来るであります!」
「俺達で明日までに仕上げてとくからな!」
「2人共お願いね!後は各自体を休めて明朝より出発よ!」
仲間達は今は身体を休める為に個室へ向かいベットへ行った。
水も食料も少ない今、少しでも身体を休める為に。
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