第98話 先祖は怪盗で勇者?

「か、怪盗??」

「初代勇者の末裔だと!?」

「泥棒が勇者の末裔って何だよそれ!」

「違うわよ!義賊よ!義賊!盗っ人と一緒にしないでよ!」

いや怪盗って様は泥棒だろ?

「んな事どうでもいいわ!何で黒曜石を盗んだ!」

「あんた達には関係ないでしょ!」

「それが無いと困るんだよ!!」

「頼む!それを俺たちにくれ!」

「あげるわけないでしょバーカ!」

パ・ルームはそう言うとまたハングライダーを広げた。

「待ちやがれ!」

三人は跡を必死に追いかけた。

しかし、滑空してるとは言えやはり空を飛ばれちゃ追いつけしない。

「へーんだここまで来てみなさいよ!」

パ・ルームは三人を馬鹿にしながら逃げようとすると。

「え!?何?うわ、うわ危ない!」

突然ハングライダーに弾丸の雨あられが飛んできた。ハングライダーは穴が空きバランスを崩す。

「え?嘘ーー!!」

パ・ルームは泣き叫びながら海岸へ落ちて行った。

「海岸の方へ落ちたぞ!」

「今の銃声は一体??」

「多分あの豚ババアだろうな!」

三人は海岸へ走る。

海岸では無残な姿になったハングライダーと何故か砂浜に埋もれ足だけでていた。

「何だあのマヌケな姿は?」

「どうしますぞ?」

「とりあえず助けるか」

カイエン達は砂浜に埋まってしまったパ・ルームを引っ張り砂から出してあげた。

「ぷはっ!!ぺっぺっ!あんた達助けるなら早く助けなさいよ!」

「何なんだよお前はよ!」

「助けてやったのになんて態度だ貴様!」

「オイ、言い争いしてる場合じゃないぜ!」

カイエンがそう言う。

あの豚ババアの手下達が武器を構えてこちらに向かって来ている。

「げ、やっば!!」

「まずい隠れる所ないぞ!」

「そうだ!ステルスジュエル!」

10秒だけ見えなくする人口宝石。

「駄目だ隠れる所がないんじゃ直ぐに見つかるぞ!」

確かに十数秒で海岸から抜けて隠れるのはちょい無理だ。しかも町から離れちまったから余計に無理だ。

「世話やけるわね!こっちに来て!」

「何だよ?」

「捕まりたいの?早くしなさいよ!!」

パ・ルームは砂浜を走り出す。

三人は跡を追っていく。松明の灯がそこら中から見えてきた。早くしないとまずい!

やがて海岸の端っこに来た。見渡す限り岩しかないぞ!

「おい!」

「こっちよ!」

パ・ルームは一番大きな岩に向かって走るそして岩をすり抜けて消えた。

「な、何だ?何処に行ったのだ??」

「一体どうなってんだよ?」

「全くだ」

三人が混乱してると岩から顔だけが飛び出した。

「アンタ達、早く入りなさいよ!」

「「うわ!」」

パ・ルームは怒鳴り上げるとカイエンとルーガルの手を引き2人を引きずり込んだ。

「えーいままよ!」

和樹は目を塞ぎ岩へ突っ込むとすり抜け何処かの部屋へ出た。

「うわっ!とと!!」

肖像画から和樹は飛び出しバランスをくずしながらも着地した。

「此処は?」

「どっかの屋敷か??」

「みたいだな」

「全く、アンタ達本当に勇者な訳?」

「あのな〜俺たちはってお前は!!」

三人の目の前に居たのは昼間ガイドを名乗っていた少女だった。

「お主は昼間の!?」

「お前が怪盗!?」

「そうよ、悪い?」

いや悪くはないが。

:

海岸では見失った4人の探索が行われていた。

「何処へ行ったの?」

「わかりません!何故か足跡が途切れていまして」

「岩を登ったのでしょうか?」

「違うわジェームズ。きっとあの女狐が絡んでいるに違いないですわ!」

あの忌々しい溝鼠ですわ!

「怪盗パ・ルームですか?ですがあの者は確か…」

「ええ、奴は私がバルマス国王に引き渡して処刑させたのよ!」

おかげで私は伯爵の地位を得たのだから。

弟、テナルディエ・ガリウスとバルマス国王は旧知の仲でしたからね。ジルドレイ教祖様共親しき仲。最近風の噂で三人が消えたと聞きその犯人がホウキュウジャーとか言う英雄気取りの生意気な餓鬼共と聞いていましたからね。

「本来ならテナルディエがアリシア姫を我が息子の妻に仕立て上げ地位を全て手に入れる算段だったのに。」

「誤算があったのですわね。叔母さま」

「まあ〜アイカちゃん!私の可愛い姪っ子」

そうこのタナロット・ガリウス・エタフォードルはアイカの父方の叔母なのだ。

「大変でしたわね叔母さま」

「そうなのよ〜泥棒はくるわ。息子を豚呼ばわりされるわでもう最悪よ」

豚は間違ってないわよ。あんな家畜な従兄弟なんか。

「此処に偽勇者達が来たのね叔母さま」

「ええ、弟の仇がきたわ!」

「叔母さま。私も協力しますわ!パパの仇ですもの〜」

「ありがとう〜流石我が姪っ子〜」

この豚ババアもチョロいですわね。奴らは魔界へ来る為の力を秘めた石を探しているのは調べがついているのよ。

「奥様!盗まれた黒曜石が浜辺に!!」

兵士が割れたガラスケースから持ち出した黒曜石を渡した。

「私のコレクションが無事でよかったわ〜」

「叔母さま。その石を私に貸して下さらないかしら?」

「いいに決まってるじゃない!」

タナロットはアイカに黒曜石を渡した。

:

その頃、パ・ルームの隠れ家に避難した三人はソファーに座り茶をすする。

「で、お前は一体誰なんだ?」

「今更隠してもしかたあるまい!」

「初代勇者の子孫と言うのも気になるからな」

「いいわ。その代わりアンタ達の事も聞かせなさいよ!さあ、自己紹介しないよ!」

上から目線な奴だな。

「俺はカイエン。見たとおりデュラハン族だ」

「我輩は誇り高き竜の末裔のルーガルである」

「アンタ、リザードマンでしょ!蜥蜴じゃない!」

笑われてる。

「蜥蜴ではない!!」

「もういいから」

カイエンはなだめた。

「俺は和樹だ。一様異世界人だ」

「ホラ次アンタな!」

「うっさいわね。」

自分で言ったんだろが!あーもう面倒くさいなこいつ。

「私はパーシバル・レム・スカーレット四十世よ!可愛いくパーシーって呼んでね!」

「じゃあ泥棒猫って呼ぶわ」

「「異議なし」」

「アンタ達喧嘩売ってるの!!」

怒鳴り上げるパーシー。

「で、泥棒猫。お前結局なんなんだ?」

「何よ首無しのクセに!!」

「いいから説明してくれ」

「まあいいわ。私のご先祖は初代勇者の1人だったのよ!」

「泥棒が?」

「義賊よ!初代 怪盗パ・ルームよ!聞いた事くらいあるでしょうが!!」

「怪盗パ・ルーム?」

和樹は知らない。

「確か各国で指名手配されてた大泥棒だって俺は聞いたが」

カイエンはそのくらいしか知らない。

「確かに我輩も都でその様な泥棒が騒がせてると長老から聞いたような〜」

2人共それくらいの噂しか知らない。

初代勇者の最初の仲間は実は余り文献も記録も残っておらず。

わかっているのは、アリシアとアイカの先祖である、2人と蝦蟇爺と関係者のジルドレイくらいだ。

「蝦蟇爺は確か最初五人だって言ってたよな?」

「そう、その1人が私のご先祖様。初代 怪盗パ・ルーム事、パーシバル一世よ!」

パーシーはそう言うとさっき飛び出した肖像画を指差す。

「俄かには信じられない」

「確かに」

「先年以上も昔だからな〜」

「ほ、本当よ!私は初代勇者の末裔なの!」

「その初代勇者の末裔の泥棒猫が何の目的で俺たちに近寄って来たんだ?」

確かに絶対に裏があるはず。

「決まってるじゃない!あの豚ババアを追い出す為よ!」

「あのババアを追い出す?」

「それと我輩達になんの関係が?」

「相手は仮にも領地やってる奴だぞ、下手に刺激したらマズイんじゃないのか?」

「わかってるわよ!決定的な証拠がないから奴らを訴えられないのよ!そこで、アンタ達の出番って訳!」

は?何で俺たちが??

「アンタ達あの豚ババアの弟、つまり魔人族を倒したのよね?」

「あ、ああ、まあな」

「アンタ達にはあのババアの注意を引いて欲しいのよ!」

「何!?」

「俺達に囮になれと?」

「そうよ。その間に私はアイツの屋敷から証拠を盗みだすのよ!」

証拠ってなんだよ??

「ちょい待てや。証拠ってないんじゃ?」

「あるのよ一つだけ。あのババアの屋敷の地下にあるのよ!囚われてる子供達が」

「はっ!?ちょい待て今何て言った!?」

「奴の地下に子供達だと!!」

「亜人族の子供があのババアの屋敷で監禁されてるのよ!後女の人達!!」

「オイ、それってまさか奴隷として売られてやばい場所に行かされたんじゃ」

「え、アンタ達なんか知ってる訳?」

「ジルド教の地下闘技場でみた亜人の子供達ですな!!」

「後街にいた奴隷の子達か!」

そうあの日涼達と逃げた際に通り抜けたあの地下の賭博の競技場。あの中なの武器を持って戦わされている人間や亜人の子供達がいた。事件後アリシアが手を回して助け出し保護施設に入れたのだが何処から来たまではつかめなかったのだ。

「そういやあのババアもジルド教だったよな!」

「確かにロザリオを見ましたぞ!」

「おそらく誘拐された亜人の子供達はジルド教のルートを通して各地に売りさばかれているんだな。」

「あのババアがジルド教ならやってる可能性は高い!」

「ここがそのルートの発信源だったんだな」

まさか片付いたと思ってたあのカルト教事件がまだ終わってなかったなんて。

「どうする?お前ら?」

「裏が判った以上ほっとけないですぞ!」

「俺達は戦隊だからな!」

「決まりだな!」

三人の気持ちは同じだった。

「泥棒さんよ。付き合ってやるよ!その悪巧み!!」

「わ、悪巧みじゃないわよ!」

「表は我輩達が引き受けてますぞ!」

「でもかなり危険なのよ!!」

「巻き込んだ奴が今更言うか!」

「俺達は戦隊だ。見過ごせないって涼なら言うよな!」

「ですな!」

「絶対に言うだろあの馬鹿なら」

この場にいたら絶対になんかやらかすだろ。

「せ、戦隊って何よ?」

「正義の味方ですぞ!」

「まあ、ギルドみたいなもんだ」

「あ、そう…じゃあ手伝ってくれるのね?」

「まあ一様助けられたしな」

「アンタ達…」

今の勇者って何というかお笑いみたいな連中かと思ってたけど、不思議とできる様な気がする。

「その代わり黒曜石を俺達に渡してくれよ!」

「あんな石くらいくれてやるわよ!」

「約束だぞ!」

「で、どうするんだよ?」

「作戦があるの!決行は明日の夜!」

「今ではないのですか?」

「怪盗には色々と準備があるのよ!」

「まさか予告状だすんじゃ…」

「馬鹿ね!」

「だよな…」

「出すに決まってるじゃない!」

パーシーはそう言うと懐から封筒を取り出し肖像画へ飛び込み消えた。

「「「やめないか!」」」

三人はハモり急いで跡を追うが。

ゴチン!

肖像画は通り抜けられなかった。

「いってー!」

「何故通れぬのだ!!」

「頭が外れたじゃないか!」

胴体は必死に頭を探しているが机の下に入ってしまった上に横になり身動きとれない。

「おーい!お前ら助けてくれ!!」

:

「まあ!何よこれ!!」

豚ババア事タナロット伯爵のコレクションの一つのガラスケースにカードが張り付いていた。

「何んですの?これ?」

「あの溝鼠ですわ!」

カードを見るとメッセージがある。

「明日の夜10時に貴女の富と財産と全てを頂きに参上します!

では豚ババアさんへ御機嫌よう!

by 怪盗 パ・ルーム」

「ムキィィィ!あの溝鼠めぇーー!」

「怪盗パ・ルームって確か叔母さまがバルマス国王に差し出したコソ泥ですわよね?」

「ええ、あの女狐の娘よきっと!」

「異分子に変わりはないですわね叔母さま」

「そうね。アイカちゃん。必ず弟の仇を一緒に撃ちましょう!」

「ええ。勿論ですわ!」

別に大して気にはしてないですが、まあ叔母さまは金回りがいいから良しとしましょうか。

「見てなさい!溝鼠共!必ず弟の仇を取るわよー!」

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