第97話 謎の女怪盗

次の朝。カイエン達はワニ爺に再び乗り込み次の島へ向かった。

「次の島は集落があるのか!」

「人がいると?」

「みたいだな」

「では何か手がかりがつかめるかもしれないですな!!」

「だといいがな…」

なんか嫌な予感がする。

カイエンの感は大体こう言う場合当たり酷い目にあう事が多い。

「何かあるのか?」

「いや何でもない。ワニ爺!」

「ワニ!」

あいわかった!ワニ爺はそう言うとスピードを上げ島へ向かう。

反応があった次の島は人が住んでいる。見た感じ集落だが奥にデカイ屋敷が見える。

「なんだ?島なのに領地がいるのか?」

「何でこんな辺境の地で?」

「さあな、とにかくこの島の鉱山へ向かうぞ」

「鉱山はこの地の領地の敷地内よ」

「ん?何奴!?」

3人が振り向くと綺麗な髪の美少女が後ろにいた。

「何だお前は?」

「通りすがりのガイドよ」

「ガイド?」

「道案内人の事だ」

「で、そのガイドが何の用なんだ?」

「アンタ達が鉱山へ向かうと小耳に挟んだから忠告しに来ただけよ」

次の反応があった鉱山はこの島の領地の敷地内にあるらしく勝手に入ったら盗っ人扱いされるらしい。

「はぁー!?じゃあどうすんだよ!?」

「大丈夫ですぞカイエン殿!」

「何か根拠はあるのか?ルーガル?」

一様聞いてみる和樹。

「我輩達は勇者ですぞ。貴族とは言え人の子ですぞ。故に話をすればわかってくれる筈ですぞ」

「お前馬鹿だろやっぱり…」

「なんですとー!?」

「こんな島丸ごとを領地にしてる奴だぞ、大方金の亡者に決まってる」

「アンタ感がいいわね。ここの領地はやたらと飾りたくったった意地汚い女よ」

やっぱり…

「そんな奴が話を聞いてくれる訳ないだろ!」

「し、しかしですな!!」

「なあ、本当に話の通じない奴なのか?その女領地は?」

「ええ、税金ばっかり引き上げてばかりよ。そのせいで此処に住んでいた人達をあの島へ追いやったのよ!」

ガイドの少女の指の先の島は活火山の大きな無人島である。

「あそこって確か…」

「まだ確認してない反応があった島だな」

「仕方ない此処は一旦パスしてあの島へ向かうか?」

「そうだな、もしかしたらあの島にあるかもしれないからな」

「アンタ達島に何か用なの?鉱山ばかり回ってるみたいだけど」

「我輩達はタングステンと黒曜石を回収しに来たのだ!」

ルーガルがガイドの少女に話した。

「確かにあの島はタングステンの宝庫よ」

「やっぱりか!」

「あの島が当たりか!さっそく向かおう!」

「一年前までね」

「「「え?」」」

三人が向かおうとした時だ。

「今は火山噴火して全部燃えたわよ」

「「「な、なんだとーー!?」」」

嘘だろ!?じゃあどうすんだよ!!

「じゃあ黒曜石も!?」

「だろうな…」

「くそ!振り出しに戻るのかよ!」

此処まで来てそりゃないぜ…

「黒曜石ならこの島のあの屋敷の中だけど」

「なぬ!?」

「それは本当か!?」

「ええ、ここの領地が以前あの島で見つけて宝物庫に保管してたのよ」

マジかよ…じゃあこの島に黒曜石があるのか!

「ついでにタングステンもこの島の鉱山にいっぱいよ!」

「マジで!」

「だが、やはりこの島の領地に話をつけるしかないか…」

「ホラ、我輩の言った通りであろう!」

「なんかムカつくな」

「奇遇だな俺もだよ」

いつもはホラばかりで役に立ってなんかないくせによ。

「そうと決まれば領地さんに会いに行くか!」

「ですな!」

「情報感謝する」

三人はガイドの少女と別れると島の領地の元へ走っていった。

「頑張ってね」

少女は笑みを浮かべると一瞬で消えた。

:

三人は領地の屋敷へ着いたが、なんとも趣味の悪い屋敷だった。

「な、なんだ此処は?」

「さあ?ナルシスト馬鹿の博物館じゃないか?」

そこらじゅうに小太りな女の金で出来た銅像が置かれているのだ。

「趣味が悪いですな」

「ルーガルお前は黙ってろよ!」

こいつが口を開くとロクな事ないからな。

和樹がインターホンを鳴らすとやたらデカイ音がなる。いつの時代のインターホンだ?

つか異世界にインターホンがあったなんてな。

「はい?どちら様ですか?」

インターホンから老人の声がする。

「俺達は旅の者だ。領地に頼みがあって来た。中に入れては貰えないだろうか?」

和樹がインターホンの先の人物に語り終えると鉄で出来た扉が開いた。

「中へ入れってことか?」

「どうしますぞ?」

「行くしかないだろ!」

三人が入ると扉が閉まる。

「ようこそいらっしゃいました。さあ、此方へ!」

中に入るといかにも執事らしき老人が屋敷に案内した。

屋敷の中も酷い有様だった。趣味の悪い肖像画と銅像に何故か宝石がまるで美術館の様に並んでいる。

三人は客間に案内されるとソファへ座る。

「中も酷い趣味だな〜」

「どんだけナルシストなんだ…」

「ナル?シスト?我輩達暫くは当番はありませぬぞ!」

「それは、それは当番のシフトだ!ナルシストってのは自分が好きすぎる奴の事だ!」

「ああ〜泥棒女みたいな〜」

まあ、あながち間違いではない。

ていうかギャグにもなってないだろ!

三人が話していると扉が開き誰か入ってきた。

「あーら?貴方達がお客さんですの?」

「「「いっ!?」」」

三人は驚いて凍りついた。

目の前には金髪縦ロール?ドリル?みたいな髪型に肥満で指輪をつけまくりの厚化粧の中年くらいの女が入ってきた。

な、なんだ?豚か?

漫画で見たような…欲深そうな奴が来た。

豚男爵を思い出しますな〜

止めろ!いくら似ててもアイツだけは話題にだすな!

「あ、アンタは?」

「この方はこの地の領地であらせらる。タナロット様でございます」

「階級は伯爵ですわ」

執事が説明した。

てか、伯爵!?まじかよ!

「で、わたくしに何の用ですの?」

優雅に茶を飲んでるつもりなのか?

「は、はい我輩達は!」

「この屋敷の鉱山のタングステンと黒曜石を譲って頂きたく参りした!」

和樹が話す。

ルーガルが話すと何をしでかすか。

「わたくしのコレクションを?」

「は、はい!それがどうしても必要で是非とも譲って頂きたいのです!」

「そうですね〜お金はありますの?」

「ご心配なく我輩達には姫さまが…んぐ!」

カイエンはルーガルの口を塞ぐ。

(馬鹿!余計な事言うな!)

「姫とは?」

「えっと、ガネットから使いで来たんです」

「まあ、ガネットから〜はるばる。さぞ長旅でしたでしょう!」

「え、ええまあ」

「ジェームズあれを!」

「かしこまりました」

ジェームズはそう言うと部屋を後にした。

あいつジェームズって言うんだな。

異世界でも執事の名前は共通なのか?

暫くするとジェームズがトレイに乗せて黒光りした石を持って来た。丁寧にガラスケースに入ってる。

「これはまさか!」

「黒曜石です」

「デカイな!」

「これがブラキオ殿が隠した石なんですな!」

ゴチン!

カイエンはルーガルの頭をげんこつした。

「な、何をするんですか!カイエン殿!」

「だから!黙ってろ!」

「ブラキオ?」

「あ、えーとペットの魔物なんすよ!」

カイエンは必死に誤魔化した。

「差し上げてもよろしいですわよ!」

「本当ですか!」

「ですが、お高いですよ」

何!?まさか…金取るのかやっぱり…

「そうですね、貴方がた私の鉱山のタングステンも欲しいと言ってましたわね!」

「あ、ああ」

「全部見積もって」

タナロットはそろばんを取り出し計算する。

て、そろばん!?何で異世界にあるんだよ!!

「ざっとこれくらいですわ」

そろばんの球を覗き込む三人。

「い、いくらなんだ?」

「わかりませぬ」

そりゃそうだ。

「えーと、1、10、100…」

和樹は授業で習った古い資料の読み方を思い出す。そりゃそろばんなんかもう無いしな。

「この世界の通貨が金貨だから…金貨8000枚つまり…は、80000000万!?」

えーーーー!?出せるかそんな金額!!

「ちょ、ちょっと待った!いくらなんでも高すぎる!!」

「こんな額だせるわけないだろ!!」

「姫様に叱られますぞ我輩達が!!」

「ガネットの王族の関係者なら安いもんでございましょう〜」

うわ…ルーガルが余計な事言うから。

「頼む!この石が無いとマジでこまるんだ!」

「何とか譲って頂けないだろうか!」

「わたくしは高貴な身分ですわ。げ民にはこれでも安くしたのですよ〜」

馬鹿にしやがって!!

「我輩達は勇者ですぞ!」

「勇者?」

「あ、馬鹿!」

「バラすな!」

「貴方がた、まさか噂に聞くホウキュウジャーとか言うギルド?」

「そ、そうだが…」

「何でバラしたんだお前は!」

「我輩達は正義の為に!」

「それが余計だって言うんだよ!」

全く話が進みゃしない!

「貴方達はガネットの王女と知り合いなのかしら?」

「知り合いも何も我輩達は仲間だからな」

だから余計な事なって言ってんだろ!

「ある条件を満たしてくれるなら石は差し上げても宜しくてよ!」

「ほ、本当ですか!?」

ルーガルは声を上げた。

ん?何だ急に…なんか嫌な予感しかしない。

「その条件とは?」

「なーに簡単な事ですわよ。」

タナロットがそう言うと扉が開き誰かまた入って来た。

「ママおやつまだ?」

「「「いっ!?」」」

三人は再び言葉を失う。

現れたのは目の前の豚女と瓜二つのデブだった。キャンティを片手に鼻を垂らし汚い印象しかない。

な、何だ今度は!?豚か?また豚か!?

この異世界は豚顔が何故こんなにいるんだよ!?

オークの子供ですかの?

いやギリギリ違うからな!

「息子ですわ!名はシャルルです!」

顔と名前が一致してねーーー!

三人は心の中で声を上げた。

「で、頼みってのはなんすか?」

「簡単ですわ。ガネットの王女と息子を婚約させて欲しいのですわ!」

「「「無茶だ!無理だ!絶対に無理だーーーーーーーー!!!」」」

三人はとうとう声を上げた。

「何ですって!!私の息子の何がいけないと言うのですの?」

「いやどう考えても姫が絶対嫌がるだろ!」

「嫌なら石は諦めていただきますわよ」

「大体こんなオークもどきに!」

「お、オークですって!!」

あ、馬鹿…ルーガルが本音をついに口走ってしまう。

「もう結構です!」

「ああ、こっちももう良いわ!」

「出直してブラキオに他の場所を聞いてみよう」

「だな、最初からそうすりゃ時間は無駄にならなかったものを!」

三人はそう言うとソファーを立ち上がる。

すると上から鉄格子が降って来た。

「「「な!」」」

三人は閉じ込められた。

「オイ!なんの真似だ!」

「決まっていますわ!貴方がたは伯爵の身分の私の屋敷に土足で上がり込み屋敷を荒らしたよって族として引き渡すのですよ!」

は?何無茶苦茶言ってんだよ!?

「何でそうなるんだよ!!」

「我輩達は客ではないのか!?」

「わたくしは持て成した覚えはないですわ!まあ通報されたくないなら身包みを全てわたくしに献上なさいな」

「黙れ豚ババア!」

「ぶ、豚ババア!?」

「あのテナルディエとか言う豚を思い出しますぞ全く!!」

「て、テナルディエですって!!そうでしたか、貴様達がわたくしの弟を殺した犯人でしたのね!」

「は?弟だぁ!?あの豚男爵が!?」

おいおい、このババアがあの豚男爵の姉だと!?ていう事は…

「貴様、魔人族だったのか!!」

「何で魔人族が領地なんかしてんだよ!!」

「答えはアレだろうな」

和樹がババアの胸に指をさすと、そこには長い女の形のロザリオが。

「て、あのロザリオは!」

「ジルド教ではないか!!」

「どうやらジルド教の残党らしいな」

「貴様達!弟だけではなく我が宗教まで潰したとは許しませんわよ!」

マジかよ…こいつは魔王軍の関係者だったのかよ。ていうよりかはどっちかと言うと出世した弟に便乗しただけの名ばかり貴族だったんだ。

「あんなイカレ宗教潰れて当たり前だ!」

「お黙りなさい!貴様達生きて帰れると思わない事ね!」

ババアがそう言うといつのまにか屋敷の警備員達が檻の周りで銃を構えていた。

「いつの間に…」

「変身する暇は…」

「こりゃ無いな…」

流石に部が悪いと手をあげる三人。

「弟の仇ですわ!さあ死になさい!」

パチン

アレ?暗くなった??

突然停電した。

「な、何が起きているの??」

「ママ!怖いよ!!」

「大丈夫よ!坊や」

ババア達は慌てている。つか気持ち悪いなたく。

「ん!オイ待て!」

「何だ?どうした?」

「カイエン殿?」

「誰か黒曜石を奪って行ったぞ!」

「「何!?」」

三人は剣を引き抜き鉄格子を破壊した。

暗いがカイエンは夜目が利くので2人を連れ出しどさくさに紛れて抜け出した。

灯が戻ると黒曜石とカイエン達が消えていた。

「な、何処へ行ったの!探しなさい早く!」

ババアの甲高い声が響いた。

:

カイエン達は屋敷を飛び出した。

すっかり外は夜だった。

上を見上げるて誰かがハングライダーに乗って上空を飛んでいる。

「居た!アイツだ!」

「こらまたぬか!」

「お前は一体だれだ!!」

謎の人物はハングライダーから民間の屋根の上に着地した。マントを羽織っている。

「だっさ。あんた達それでも勇者なわけ?」

「な、なんだと!!」

「いきなり盗んだ奴に言われたく無いな!」

「黒曜石を寄越せ!」

「イヤよ!これは私の獲物!」

何が獲物だ!返せこら!

「お前一体何もんだ!?」

「ふふふ、よくぞ聞いたわね、聞いてくれちゃったわね!」

謎の人物はマントを脱ぐと中から黒い服を着て仮面をつけた女だった。

「お、女?」

「誰か呼んだか正義の義賊!」

おいおい何か始めたぞ。

「我が名は怪盗パ・ルーム!誇り高き初代大怪盗パ・ルームの子孫でありそして正義の義賊にして初代勇者の末裔よ!!」

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