第63話 アイカとギャル魔再び

涼が必死に頼んだ矢先にカズはピッキングし城を抜け出し闇雲にガネットを逃げ回る。

「はぁ…はぁ…」

カズは廃墟になったガリウス邸へ飛び込むととりあえず部屋に入り埃が溜まっているベッドへ倒れ込んだ。

もう自分が何をしてるのかも判らない程カズは追い詰められていた。

何故ピッキングをして逃げだしたのかも理由は無い。ただもう生きているのが疲れた…だから死に場所を探しているのかも知れない。

カズはもしかしたらと思いこの場所に来た…

「やはり…いたか…」

カズが起き上がりドアの方を見ると…

「カズ様。元気そうで何よりですわ」

「執念深いお前だから奴らへの仕返しをする為に忍んでいると思ったぞ」

アイカがいた。

付き合いの長いカズはアイカが必ず宝救聖剣(ホウキュウカリバー)を奪ったアリシアに仕返しする為にこのガネットに忍び込んでいると踏んでこの屋敷へ入ったのだ。

「あら、そこまでわかって何故此処に?」

「お前の茶番に付き合ってやるよ。でも約束しろ…」

「約束?」

「俺を死なせてくれ…」

「随分と愚かな願いね。いいわ約束してあげる死にたいならコレを食べなさい」

アイカはそう言うと黒い宝石をカズに手渡す。カズは渡された黒い宝石を口に入れ飲み込んだ。

「ぐっ!?ぐぁぁぁーーー!!」

カズは声を上げた。

カズの目が黒く染まり身体がどんどん変わっていく。身体から黒い鱗の様な物が生え角を生やし黒い翼が生えると身体から莫大な魔力が溢れ出しカズはもはや魔物の姿へ変貌した。

「さあ、せっかく望み通りにしてあげるんだからアリシアを殺しに生きなさい魔族になったカズ様」

「殺す…全てを…殺す!」

カズはそれだけ言うと屋根を破壊し飛んで行った。

:

「たく、アイツ何処に行きやがったんだ?」

「だから止めとけって言ったんだ!」

「今のアイツはかなり精神的にかなり不安定だ。ほっといたら何するか判らないぞ」

「とにかく探さないと」

涼達が必死に街中を探して回っていると。

「ウガァァァ!」

上空から変貌したカズがアリシア目掛けて攻撃してきた。

「危ない!」

涼はとっさにアリシアを抱き寄せ間一髪のところで交わし地面に転がってる。

「涼、姫様!」

「二人共大丈夫か?」

「ああ」

「大丈夫よ。アレは何なの!?」

「魔人族か?」

「でも何だか変ですぞ!」

「ブラキオが言ってた魔族に似てませんか?」

確かにレッサーデーモンだっけ?何かそんな感じになってる。

「貴様一体何者なのだ!」

「アリシア…殺す…剣を渡せ…」

「お前!まさか!」

涼はこの怪物に逃げたカズの面影を感じた。

「カズくん!?カズくんなの!!」

基地からモニターを見ていたマナリアが声を上げた。

「でもあの姿はどう見ても魔人族でありますよ!」

「あの馬鹿たれ邪気に食われたな!」

「ブラキオ!マジでありますか!?」

「マズイぞ。人間が邪気なんか取り込んだらやがて死に至るぞ。」

「な、なんですと!!」

「貴方の加護があるのに?」

「我の術はあくまで自殺をさせぬ物だ。それ以外の死はどうにもならん!死ぬって言ってもただ死ぬんじゃなく奴はビックバンを起こすぞ!」

「ビックバン?」

「つまり自爆だ!こんな城下町なんぞ消し炭になるぞ!」

えーーー!?

「マジかよ!?」

「皆んな聞いた通りであります!何とかしてでありますー!」

通信ジュエルから泣き叫ぶベル。

「邪気ならアレキサンドライトの力で浄化出来る。そうよねブラキオ!」

「そうだ。お前達アリシアが技が放つ時間を稼げ!出来るだけ急いでな!」

ブラキオはそう言うと通信を切った。

「けど無茶言うな」

「でもやるしかないわよ!」

涼達は剣を構えると今度は魔王軍の兵士達が現れた。

「こいつら何処から!?」

「どうやら魔人族が絡んでるみたいだな」

「てことはこの前のカルタノ達も!」

「多分こいつらだろうな!」

「いつも邪魔ばかりしますね!」

コハク達も剣を構えた。

「ウガァァァ!」

怪物と化したカズが爪を伸ばし涼とアリシアに斬りかかる。

それに合わせて兵士達も攻撃してきた。

涼達は攻撃を交わしながら剣に勇者石(チェンジストーン)をはめ込み、信道は斬りながらチェンジエッグに勇者石(チェンジストーン)を入れた。

レッド、ブルー、ピンク、グリーン、ブラック、マジェスティ!ザ!宝救武装!

へい!とりあえずゴールド一丁!

「「「「「「宝救武装(ホウキュウチェンジ)!」」」」」」

「乾杯(プロージット)!」

掛け声に合わせて剣から光が飛び出し涼達は走りながら変身し目の前の敵に攻撃する。

「情熱のルビー!ホウキュウレッド!」

涼はティラノファングを盾に怪物化したカズの爪を弾き飛ばし周りにいた敵兵を斬り倒し名乗り始めた。

「こんな時まで!やるでありますか!」

通信越しに突っ込みを入れるベル。

「気にしたら負けだぞ。激突のオニキス!ホウキュウブラック!」

カイエンはステゴアーチェリーを爪にし二刀流で敵兵を斬りながら名乗る。

「揺蕩うアクアマリン!ホウキュウブルー!」

コハクは宝救剣にルビーを氷の人口宝石をはめ込み地面に刺し周りにいた兵士を凍りつかせ名乗り上げた。

「疾風のエメラルド!ホウキュウグリーン!」

すかさずルーガルがラルトルバンカーを伸ばして凍りついた敵兵を倒しながら名乗る。

「輝くピンクダイヤ!ホウキュウピンク!」

リアは地面をパキケファログローブで地割れを起こして蹴散らしながら名乗る。

「凄い力だな!おっと。一金提供!ホウキュウゴールド!見参!」

信道は飛んできた敵兵を三枚におろして名乗り上げた。

「高貴の銀帝!ホウキュウシルバー!降臨!」

アリシアが両手で剣を振り回しながら敵を蹴散らしながら名乗る。しかし前より剣が重く感じる。

「「「「「「「勇気の宝石身に纏い」」」」」」」

「我ら七人の救世主!」

「宝石戦隊!」

「「「「「「「ホウキュウジャー!」」」」」」」

名乗り終えると同時に花火があがり涼達は敵兵を全て蹴散らした。

「相変わらずふざけたカッコつけですわ

ね!」

怪物化したカズの後ろから現れたアイカと巨大化をしていたコギャルの魔人族が現れた。

随分久しぶりだな。

「泥棒女にギャル魔!」

「アイカ!やっぱり貴女ですか!」

「ギャル魔じゃないし〜メリッサだし〜」

「だったら名のれよ!」

「涼、今はどうでもいいからな!」

カイエンに突っ込まれた。

「一体何しに来たんだ!」

「ただの実験ですわ」

「実験?」

アイカはメリッサのカバンをあさりそこから黒いダイヤモンドを取り出した。

「アレは確か」

「ギャル魔が魔人族をデカくする時に使ってるやつだ!」

「メリッサだし〜ヤモリはキモいし〜」

「や、ヤモリだと!貴様リザードマンに向かって!」

「だからもういいから!」

カイエンはルーガルを引っ込めた。

「それが何だよ!」

「これ自体が〜邪気の塊だし〜」

邪気の塊だと!じゃあやっぱりブラキオが言ってた通り魔人族は初代勇者達が追いやった魔族の子孫だったのか。

「これは魔人に与えれば巨大化はするの。でも人間に与えればこの通りですわ!」

「殺す…殺してやる!ウガァァァ!!」

怪物化したカズは唸り声を上げた。

「でも力に耐えられず〜直ぐに死ぬけどね〜」

「しかも無残に爆発してよ〜あはは。ウケるわ〜」

こいつ!!どこまでふざけた奴なんだ。

「お前!そいつに無理やり飲ませたのか!!」

「人聞き悪いわね〜それが死にたいって言うから手を貸しただけよ。私は関係ないわ」

「貴女はそれでも初代勇者の末裔なのですか!こんな命を粗末にして!!」

「もとあと言えばアリシア。アンタが私の剣を奪ったからいけないのよ!大人しく渡しておけばあの材料達も街を破壊しなかったのに〜」

やっぱりカルタノ達はコイツらにやらされていたのか!

「お前は本当に人間かよ。こんな人を弄んで貶めて嘲笑う。それでいて卑劣」

「貴女が王に選ばれなかったのは当然です」

「お前なんか人聞ですらねぇ!皮を被った悪魔だ!」

「化け物風情が勇者になってる時点で貴様達の方が面汚しですわ!ああ〜ご先祖様勇者になれなくて申し訳ありません。あの家畜達が剣を奪ったばっかりに〜」

「この野郎!さっきから聞いてりゃよ。皆んなを悪く言いやがって!テメェなんか勇者どころか雑用さえなれねぇ!あまつさえ王様になんか絶対にな!」

「お黙りなさい!さあ、カズ様。あの恥さらしを殺しなさい!」

「こ…ろす…殺してやる!」

怪物化したカズは体中から凄まじい魔力を放出している。ありゃかなりヤバイな。

「もう止めるんだ!これ以上馬鹿な事をするなよ。本当に処刑されちまうぞ!」

「俺は…悪くない!悪いのはこの世だ!だから皆殺しにする…そうすれば…俺は死ねる!!」

ヤバイ精神が支配されちまって声が届いてない。世話ばかり焼かせやがって。

「アリシア、浄化を頼む!」

「勿論。でも前よりパワーが落ちたから時間がかかるわ。それまでお願い」

アリシアは宝救聖剣(ホウキュウカリバー)に自信のアレキサンドライトのマナを集める。

前より遥かにパワーが落ちてしまい剣を振るうだけでも両手がいる程だ。力を一度貯めないと浄化なんて不可能だ。

「させませんわ!」

アイカがそう言うと魔法陣らしき術からサイみたいな怪人が現れアリシアに突撃してきた。

「させません!」

「姫様には近づけさせない!」

「涼、のぶ、ルーガル。その馬鹿は任せた!」

コハク、リア、カイエンがサイの怪人を取り押さえて止めた。

「姫様。私たちが守りますから準備を早く!」

「わかったわ!みんな頑張って!」

アリシアは集中する。

アリシアの周りに魔法陣が描かれる。

「ウガァァァ」

カズは爪で涼達3人を飛びながら引き裂きまくる。

「この!」

ルーガルは槍を伸ばして高くジャンプする。

「ルーガル、深追いするな!」

「大丈夫ですぞ!こやつは弱い!」

「調子に乗るんじゃねぇ!」

カズはルーガルより速く動き槍を破壊しルーガルに蹴りを入れた。

「ぐはっ!」

落ちてきたルーガルをキャッチする信道。

「かたじけぬのぶ殿」

「だから油断するなっていったんだ」

「すまぬ。涼殿!そやつの力は尋常ではないですぞ!」

「サンキュ!だったらドンガンを使う!」

涼は鞘型の強化アイテム ドンガンバッチグーを取り出す。余りにもダサいネーミングだからとりあえずドンガンと略している。

涼は刃先が隠れていない翡翠の方を表にし宝救剣に差し込みバーサークグリップを取り付けた。

ガチガチ!どんどんターイム!

「宝救武装!」

刃先から緑色の翡翠の鎧が飛び出し涼のスーツに纏い変身完了した。

「ホウキュウレッド・ラピード!」

強化変身した涼とカズが目にも止まらぬ速さで互いにぶつかる。

「我輩が目で追えぬとは!」

「俺達じゃまず追いつけないな」

「のぶさん、ルーガル。この馬鹿は俺がやるからアリシアを頼んだ!」

「確かにその方がいいな。ルーガル俺たちは姫様の邪魔するアイツを追い払うぞ!」

「あの女をですな!涼殿我輩達にお任せを!」

信道とルーガルはアリシアを邪魔しているアイカの元へ向かう。

「何をしているの!もういい私が直接」

アイカは火の玉を放つ。

「止めぬか!」

「コイツ!」

ルーガルと信道が攻撃しているアイカの火の玉を斬り裂きそのままアイカへ剣を向ける。

「メリッサ、アンタも戦いなさいよ!」

「アンタうざいし〜」

メリッサはそう言うと防壁を貼り二人の攻撃を弾いた。

「あの者やりますな!」

「ああ。あんなに硬い防壁を張れるなんてな。」

ただの巨大化要員じゃなかったのか。

こりゃ結構解決まで時間がかかるかもしれないな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る