第64話 ありがとう…
「俺は…悪くない!俺は悪くないんだっ!」
くそ泥棒女になんかされたせいで頭の中はどうなっちまったのか??
俺は悪くないってまた現実逃避かよ。この歳のガキは面倒くさいな全く。
涼は何とか傷つけまいと刃が出ていない部分の鞘を当て攻撃を防いでいる。
幸いダイヤと水晶で出来ているこの鞘は頑丈で当たると痛い。
「落ち着け!お前は何に怒って泣いてるんだよ!」
「俺は悪くない!何故俺がこんな思いして毎日を過ごさなきゃならない!何故自殺を許さない!」
カズはもはや恨みだけで暴れている。そしてその恨みが膨れ上がりこれまでの勝手な日々は自分のせいではないと言う自分勝手な気持ちも相まってもはや振り下ろした拳を引けなくなってしまったのだろう。
「前にも言ったろ。お前がした事は許される事じゃないんだ。」
「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ!俺は帰りたいんだ!それが叶わないなら死を望んで何が悪いんだっ!」
カズは怒鳴り上げながら爪でひたすら涼を斬り裂き続ける。
「お前はまだ死なす訳には行かない!やる事がお前らには山程ある!」
「俺達に罪滅ぼしを知ろと言うか!勝手に喚び俺達を閉じ込めたこんな世界にかっ!!」
確かに勝手に喚んで帰さなかったのはやり過ぎだとは思う所はあるさ。でも自分が許されない事をしたと言う事実は変わらない。
「確かに誘拐みたいなもんだったかも知れない。お前が恨むのも仕方がないのは判る。でも、もうお前も自分がした誤ちをいい加減に背くのは止めろ!」
「っ!!」
「そんな事しても何も変わらないし、お前の時間は戻って来ないんだ!」
涼はカズの爪を剣で弾き長く伸びた爪をたたっ斬り地面に着地する。
「だ、だけど…だけどよ…あっちで誤ちを起こして謝罪したくても…もうお袋には会えないんだよっ!!」
カズは泣き叫びながら口からエネルギー包を撃ち放つ。
「いいから話を聞けよ!」
ドッカーン
涼はカズの攻撃を剣で弾き上に飛ばした。攻撃は空で大爆発した。
「な、何ですの?」
「涼は何やってんだ?」
「まあ考えがあっての事ですぞ」
いやそれは無いな涼だし。
「とりあえずあの防壁を何とかしないとな」
「攻撃が効かぬならあの手ですな!」
「まさかアレか?涼じゃあるまいし」
「アレはキツイですぞ!故に効きますぞ!」
まあ攻撃が効かないならアレが良く効くのは確かだ。
「まあ女だから余計に効くな」
「ですな。のぶ殿は技の準備を!」
「あいよ。濁酒銃」
ルーガルは一人でアイカ達へ剣を片手に突っ込んで行き人口宝石(ジンコウジュエル)を剣にはめ込みグリップを引くと剣から黄色い煙の刃を放つと急いで離れた。
「蜥蜴一匹来た所で何も出来ませんわ!」
「面倒だし〜」
メリッサは再び防壁を貼る。
ルーガルの放った攻撃は無論簡単に防がれたがアレは攻撃では無い。
ぷ〜〜ん!
刃は爆発し黄色い煙が充満した。
「うっ!?いやぁーーん!!」
「臭いし〜!!」
そうコレは涼が得意のオナラジュエルだった。
「いやぁーーん!汚い臭いが染み付く〜」
「ング。アンタ臭いし〜」
「何ですって!んぐっ!!」
アイカは文句を言うが余りの臭さに息が出来ず口を塞ぐ。
「のぶ殿!」
「判ってる!雷酒一撃はっ!」
信道の銃から雷の弾丸が放たれアイカ達へと飛んでいく。
「「え!?」」
ドッカーン!
弾丸は見事に命中し2人は空の彼方へ吹っ飛ばされ消えた。
「やりましたぞ!」
「これで邪魔は消えた。俺達は加勢へ行くぞ!」
「行きますぞ!」
2人は怪人を相手にしているコハク達の加勢へ向かう。
:
「うぁぁぁぁぁ!!」
カズは力任せに涼に拳を叩き込む。涼はそれを交わしながらひたすらカズに言葉をぶつける。
「お前、お袋さんと何かあったのか?」
「五月蝿い!貴様には関係ない!!お前に…お前に判るかよ…周りから迫害される気持ちが、二度と親に謝れない悔しさがっ!!」
カズは泣き叫ぶ。
そうか…こいつは…イヤこいつらは社会に溶け込めずずっと殻に篭って生きていたんだ。
だから逃げる様に現実逃避する為にゲームに撃ち込んでずっと逃げてたんだ。
まるで…俺だ…俺は昔からヒーローが大好きで始めて行ったヒーローショーでレッド握手した嬉しさは忘れてない。だからずっとヒーローになりたくて在ろうとしてた。でも…歳をとるにつれて誰もヒーローの話をしてくれなくなり、次第に周りは忘れて行きやがて俺は周りからは恥ずかしい奴と言われてきた。
俳優になって俺もヒーローになりたかったけど…現実は甘くない…いくらやってもオーディションには受からずバイトばかりで親とは一切話もせずに飛び出して今に至る。
「確かに俺はお前とは違うし気持ちは判らないかも知れない。でも迫害された気持ちは判る」
「だったら何故邪魔をする!」
「決まってんだろ!それは俺達が戦隊だからだっ!」
「寝言は寝て言いやがれっ!!」
カズが爪を伸ばし涼に突き刺す。
しかし涼は交わさずあえて受け左肩が貫通した。そしてそのままカズを掴んだ。
「寝言なんかじゃない。俺は今この世界の勇者でこの世界の戦隊だ!間違えた奴を正して助けたい、それだけだっ!!」
涼はそう言うと渾身の力でカズを思いっきりぶん殴り地面に叩きつけた。
「貴様…ぐ!?ぐぁぁぁーーー!?」
カズは苦しみ出し声を上げた。もう身体が限界を迎えたのだ。
「アリシア!」
「準備オーケーよ涼!」
「アリシア行け!」
涼はもがき苦しむカズを抱えそのままアリシア目掛けて投げた。
「宝救聖剣(ホウキュウカリバー)!邪気滅殺!はっ!!」
アリシアは金色に輝く宝救聖剣をふりかざし光の刃をカズに叩き込む。
光の刃はカズの体から邪気を追い出す。身体から黒い煙が飛び出しカズは血だらけの姿で元に戻る。
飛び出した邪気はサイの怪人に入り込む。
そしてサイの怪人はそのまま巨大化した。
「ウガァァァ!!」
「な!?」
「おいおいデカくなったぞ!」
「まだ倒してないんですよどうして!?」
「多分アレがあの黒い石だったからだろうな。宿主を無くして代わりに取り付いて本来の力を出しただけだろうな。」
信道の言う通りだった。
邪気はまだ払いきれていなかったのだ、カズから抜け出し交戦中のサイの怪人に乗り移り巨大化したのだ。
「涼さん。この人は私達が保護するであります。」
「みんなはあの魔人族を!」
駆けつけた馬車から出てきたベルとマナリアがカズを馬車へ連れて行った。
「よし、行くぜルビティラ!」
「ブラキオ私達も!」
「よし行くティラよ!」
「我の出番だな!」
ルビティラとブラキオサンドライトは巨大化した。
「よしエンガホウキュウオーだ!」
「「「「「オウ!」」」」」」
「真・宝石合体!」
「宝石変形(ほうせきへんけい)!」
宝石獣達は皆本来の姿へ戻り巨大化すると一斉にバラけた。
ルビティラを中心に仲間の宝石獣達は一つに集まり今、真の力を得た宝石巨人が誕生する。
そしてブラキオサンドライトもまたパートナーと一つになりその巨体をバラし一つに再構築し巨大なる神の巨人が降臨する。
「「「「「「完成!エンガホウキュウオー!」」」」」」
「完成!ブラキオダイオー!」
完成した二体の宝石巨人はサイの怪人に向かって行く。
サイの怪人は黒いオーラを纏いながらエンガホウキュウオーに体当たりした。
エンガホウキュウオーはイカ大剣改でサイの怪人をいなして斬りつけ吹っ飛ばした。
エンガホウキュウオーはかなり負担が大きい合体だが涼達が訓練によって何とか燃費の悪さを調整しているため前よりはマシにはなったがやはり合体している宝石獣達は維持するだけで負担がかかるので早くケリをつけないと。
「サンドライトスピアー!」
ブラキオダイオーは左手の硬いランスでサイの怪人を突き刺しそのまま投げ飛ばした。
「みんな行くわよ!」
ブラキオダイオーはブラキオレールガンにエネルギーを貯めていく。
エンガホウキュウオーもイカ大剣改に雷と炎のエネルギーを貯め始めた。
「ブラキオダイオー!アレキサンダーバスター!」
「「「「「「エンガホウキュウオー!炎雷兜割り!」」」」」」
ブラキオダイオーは右肩のブラキオレールガンからキャノン砲を放ち貫きすかさずエンガホウキュウオーが怪人を真っ二つに斬り裂いた。サイの怪人は爆死した。
:
「ん…んん…ここは?」
涼達の秘密基地の中で目を覚ますカズ。
ベッドの上で包帯が身体中に巻いてある。手当てされたのか。
「起きたか?」
「お前らは…」
カズの目の前に涼達が椅子やソファーに座り目を覚ますのを待っていたのだ。
「お前カズって言うんだっけ?」
「和樹だ…カズは仲間同士のあだ名だ…」
カズは本当の名前を明かした。
「何故を俺を助けた?」
「言ったろお前にはやらなきゃならない事が沢山あるんだ。」
「今更…俺が何が出来る…俺はお前の言う通りだった…」
和樹は下を向き口を開く。
「俺は沢山人を殺した…今更…罪滅ぼし何かしたって…」
「関係ないだろ」
「え?」
「今更とかよ。お前は今まで自分がした事を後悔し反省したんだろ?そしてお袋さんに謝りたかった。帰りたかったのはそうなんだろ?」
「でも…母さんは…にはもう…会えない…」
和樹は涙がボロボロと流す。いつも味方でいてくれた母親にあんな最悪な言葉を投げかけて傷つけてしまった上にもう謝る事も出来ない。
「だったらお袋さんの為に残った人生全て使って傷つけた人達を償っていけ!犯罪者のままのお前をお袋さんは喜ぶわけないだろ。」
「く…どうすりゃ…いいんだよ…俺は…人を沢山…殺した俺に…どうしろって言うんだよ」
「決まってんだろ!」
涼は和樹に手を差し伸べる。
「え?」
「俺達と来い。そして世界を救うんだ!」
「「「「「「「「はっ!?」」」」」」」
皆は一斉に声を上げた。
何を言ってんだお前は!?
「馬鹿か君は!」
「全くだ!何でこんな奴を引き取るんだよ!」
「我輩も反対ですぞ!」
「であります!!」
「涼何でだ?」
「こいつはただ本当にお袋さんに会いたかっただけだった。そりゃやった事は許される事じゃないさ」
「だったら!」
「でもな、こいつは別に根っからの悪い奴じゃないと思う。」
そうだ、根っから悪けりゃあんな馬鹿な事してまで家に帰りたいとは思わないはずだ。
お袋さんがずっと気がかりだっただけだ。
「それにな。悪党が仲間になるのは特撮の定番でもあるからな!」
だからお前の世界の芝居の常識は知らないからな。後そんな理由でいいわけないからな。
「お前…」
「お前じゃない。涼だ。猿渡涼だ!」
涼はそう言うと和樹にもう一度手を出す。
「和樹だ。」
和樹は涼の手をとる。2人は握手を交わす。
「えっと…その…皆さん…本当に申し訳ない事をしてごめんなさい…」
カズは頭を深く下げる。
「これからは自分なりに罪を償っていきます」
「僕は認めない」
「我輩も」
「悪いが俺もだ」
「構わない、これからの俺を見てくれ」
コハク達はため息を吐きその場を後にしていった。
「気にすんな和樹。少しずつやっていこうぜ!」
「涼…さん」
「照れくせぇから、涼でいいって!」
「ありがとう…涼…」
「私はリアです。宜しくお願いします和樹さん」
「俺は信道だ!まあ何だまずは飯を食えや」
「まあ、涼さんがそこまで言うなら…信じてやるでありますよ…ちょびっとは」
「ベルちゃん。」
やれやれとマナリア。
「マナリア」
「ん?」
「すまなかった…」
「言葉じゃなくて態度でしめしてね。和樹君」
「さあ。飯にしようぜ!仕込みは終わってる!」
「マジか!和樹行こうぜ!」
「あ、ああ…」
「信道さんのご飯は美味しいですよ!」
「信春くんの孫だもの!」
「え!アイツの孫!?」
和樹は信道がかつて同僚だった信春の孫とは知らなかった。
「爺さん直伝の味楽しんでくれよ!」
信道はそう言うと唐揚げを出してくれた。
「唐揚げだ」
「さあ食ってみな!」
「いただきます…」
和樹が唐揚げを箸で掴み口に入れると、懐かしい味が口いっぱいに広がる。
母の作ってくれた唐揚げを思い出し涙を流す。
「く…ひっぐ…美味い…」
「そうか!沢山食えよ!」
「はい!」
和樹はその日の夜は久しぶりに腹一杯ご飯を食べて久々のベッドで深い眠りについた。
これからは涼達の仲間として罪を償う為に全力で共に取り組むと誓いながら。
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