第60話 邪気纏う宝石獣

無事にブラキオサンドライトが見つかりガネットへの危機を回避した涼達は一度ガネットへ行き国王に事の自体を伝えていた。

「初代魔王の復活か…」

「すまないな我が身体を奪われたばかりに」

「いえ。宝石神殿のせいではありませぬ。やはり私がアイカにいい様に使われたばかりに」

それこそ王様のせいじゃないだろ。

「お父様。お願いがあります」

「なんだ?」

「こうなった以上頼れるのは涼達だけです。ですから私も勇者に選ばれた以上彼らと共に戦いたいのです。」

「しかし…アリシアに何かあったら」

「なーに我がついておる心配無用だ王よ」

いやこんな小ちゃい奴じゃ返って心配だろ。

「まあ俺達もいるし。何より王様今の俺達にはアリシアは必要なんだ。」

「涼」

「確かに涼より頼りになるからな」

「姫様は強いですからね」

「ブラキオサンドライト殿がこちらに付いてくれた今鬼に空盥ですぞ!」

「金棒だよルーガル」

「これだけ癖が強い連中だから返って大丈夫だろ」

確かにそれは言えてるな。

「わかった。皆さんアリシアの事を頼みましたぞ。」

ガネット国王はそう言うと玉座を立ち涼達に頭を下げた。

「お父様…」

「きっとエミリアも誇らしく思っている筈だ。立派な後継ぎになったと」

「お母様…」

「アリシア我が付いておるどーんと任せておけ。」

「ブラキオ…ありがとう…」

アリシアはブラキオをギョッと抱きしめる。ブラキオは真っ赤になる。

「お?ブラキオ照れてるのか?」

「戯け。屈折で赤くなっただけだ。」

「素直じゃないですな〜ブラキオ殿は」

「ごちゃごちゃ言うなこのイモリめ!」

「い、イモリだと!?リザードマンに向かって!!」

「イモリも蜥蜴だから一緒だろ」

「全然違いますぞ!あんな水ん中で暮らす輩とは違いますぞ!」

輩ってリザードマンっていくつか種類がいるのか?

「結局は蜥蜴であろう」

「蜥蜴ではない!リザードマンだ!」

いやだから蜥蜴だからな。ルーガル。

「お前たちいい加減にしないか」

「ゾンビは黙ってろ」

「ぞ、ゾンビだと!この野郎デュラハンに向かって!」

カイエンまでキレた。

ブラキオはアリシアの手から抜け出し逃げた。

「あ!逃げましたぞ!」

「こらまてブラキオ!」

「待たぬわ!ていうか我は宝石神。神ぞ。お主ら扱いが雑ではないか?」

「「チンチクリンじゃ貫禄ないわ!」」

「チンチクリンだと!おのれブラキオサウルスに向かって!」

幼稚なレベルの喧嘩を何回もやるなよお前たち。仮にも勇者と神と呼ばれた奴だろが。

「本当に任せて大丈夫ですかの?」

「あれで結構やる奴らだから大丈夫ですよ」

信道はさりげなくフォローした。

しかし、二人と一匹はまだあーだこーだと言い合いを続けた。

シラを切らした涼達は二人と一匹を引きずって生き馬車の秘密基地へ戻っていった。

「報告します!」

涼達と入れ替わりで城の兵士が飛び込んで来た。

「どうした?」

「黒い宝石獣がこのガネットへ向かっています!」

「黒い宝石獣だと!?あの先代勇者達の宝石獣が何故この国に…とにかく涼殿達に知らせるのだ」

「はっ!」

兵士は急いで涼達の馬車へ向かって行った。

:

ガネット王国の外れの森。

木を蹴散らしながらガネットへ向かっている黒い宝石獣達。

「グガァァァァァ!!」

唸り声を上げながらひたすら木を嚙り砕きバラバラにする宝石獣カルノタウルス。

身体の色が更に黒ずみ目が赤く輝く。

カルタノの後ろから森を破壊しながら突き進んでくる宝石獣スティラコサウルス。

この宝石獣も更に黒くなっておりこいつも目が赤く輝き凶々しいオーラが体から出ている。

更に空から暴風を起こし森にいる魔物達が逃げ出しその魔物達を捕まえそのまま空に上げ丸呑みにした宝石獣プテラノドン。

黒い翼と身体に赤い瞳が赤く輝く。三体は唸り声を上げながらガネットへ走り向かっている。

「何!?あの宝石獣達がガネットへ向かっているって」

「はい。国王陛下が皆様に出場依頼が。」

「わかった。後は俺達に任せてアンタ達は街の人々を誘導してくれ。」

「分かりました。」

兵士は急いで城へ戻る。

「あの馬鹿勇者達の宝石獣が何で?」

先代勇者達が逃亡したあの日、涼達はカルタノ達を回収しようとしたが既に彼らは消えてしまい行方不明だったのだ。

「報告では身体が黒く成り果てて輝きすらなくなって炭みたいになってるらしいわ」

「炭みたいになった?」

確かに大半の宝石は火山の石とかが長い時間をかけて生まれたって聞いたが。

逆に黒ずむなんてあるのか?

「ブラキオなんか判るか?」

「宝石獣が黒く変色するとはな…知ってるといいたいが…ハッキリ言って知らん」

「ブラキオが解らないんじゃ僕らじゃどうしようないじゃないか!」

「お前らは仮にも勇者だろうが何とかしろ!」

小さくなってから本当偉そうになったなコイツ…本当に神と呼ばれた宝石獣か?

ドカーンと街の方から大爆発が。

「うわ!来たであります!」

画面を見ていたベルが声を上げた。

「皆んな行くぞ!」

涼達は基地から出ると城下町へ向かう。

街では城壁を破壊して入り込んだカルタノ達が街を破壊していた。

ただひたすら壊しまくり街の人々は逃げまわる。涼達は逃げ遅れた人達を誘導しながカルタノ達に近づいていく。

「お前達止めるんだ!」

「「「ウガァァァ!」」」

唸り声を上げながら建物を破壊するカルタノ達に声は届いていない。

「オイ。俺達の声が聞こえないのか!?」

「もうお主達を縛る彼奴らはいないぞ!」

「だから暴れないで!」

カルタノは棘だらけ尻尾を涼達にふりかざした。

「みんな避けろ!」

涼達七人は避けたが地面に大穴があいた。

「いったいどうしたんだ?」

「もう彼奴らに奴らを操る力はないはずだ!」

そうハンターズは力を全てあの日失った為縛っていたカルタノ達は洗脳が解けている筈だが全く解けてない。これじゃただの危険な魔物だ。

「そうか!邪気か!!」

「ブラキオ!?ルビティラちゃんも」

ルビティラに乗って駆けつけたブラキオサンドライトがそう言った。

「ブラキオ。なんだ邪気って?」

「そうかお前達は知らないか。そりゃそうだ本来の勇者の役目など知る由もないか」

「本来の勇者の役目?」

「確か悪い魔物を駆除してバランスをもたらすってアレか?」

そう本来の勇者は異世界に増えすぎた生態系を脅かす程の力を持った魔物の数を減らして生態系のバランスを保つ事が本来の勇者の役目だった。

「そうだ。だがそれは最近の話だ。アレはもっと前の…貞の時代の魔族の力だ。」

「魔族?」

「初代勇者達が倒して異界の彼方へ追い払ったヤバイ魔物の怪物達だ。対象に取り付き邪気と呼ばれる危険な力で操り世界を消そうした物達。アレはその邪気に間違いない」

「でも彼奴らを操っていたのは魔人族の技術だぞ。それが消えたのに何で…」

「これは憶測なんだが魔人族は魔族の子孫じゃないのか?」

「子孫?」

「魔族の特徴は1〜3本の角を生やして翼がある事だ。魔人族がその子孫でアレはその技師を発展させた物なら奴らの気の狂いも説明が出来る。」

ブラキオ曰く初代勇者がいた時代今から1,000年以上昔、この地には魔族呼ばれる奇妙な怪物の種がいたらしく奴らは自分達が頂点と考え他の生き物を皆殺しに世界を作り変えようとした。

しかし、後のガネットとなる名もなき国の術師により異世界から世界を救う力を持つ者を喚んだ。それが後の初代勇者事、藤原ノ貞道である。彼が持ち込んだ宝石がこの地のマナを受け動物の姿を得たのが宝石獣と呼ばれる様になった。そして初代勇者達によって魔族の王は倒され異界の彼方へ永久追放したという。

「それが最初の勇者達の使命」

「そうだ。邪気は魔族にしか作れぬ。魔人族が我らが追いやった魔族の子孫という証だ。」

「ベル知ってるか?」

通信ジュエルで聞いていたベルに確認をとる涼。

「うーん。魔界の神話では確かに光の者と戦って追いやれたとは聞いたことはあるでありますが」

「間違いない。魔人族は魔族の子孫だ。」

「それは判ったけどさ。早く彼奴らを止めなきゃ!」

コハクが指をさしてそういった。

こうしてる間に街がどんどん壊されていく。

「ブラキオ。正気には戻せないのか?」

「邪気その物を出せれば奴らは正気に戻ると思うが。」

「どうすりゃ戻るんだよ!?」

「落ち着け。お前達では無理だ!出来るのはアリシアと我だけだ!」

「え!?私も!?」

「だったら速くやってくだされ!」

「そりゃ無理だ」

は!?何で!?自分で言っといて。

「我は見たとおりこの有様。力が全く足らん…今わな。」

「え?」

今は?

「力が貯まれば我が何とかする。だがそれには時間がかかる上に我だけでは無理だ。そこで足りない分を宝石獣とお前達からマナを借り受ける。その間奴らを足止めしろ!」

「どれくらいかかるんだ?」

「うーん…宝石獣9体分を我にアリシアの勇者石にお前達6人分のマナがいるからな〜短縮して10数分だがお前達の全てのマナがいる」

「全員そうででやるのか」

「でもそれって」

「マナを全部渡したら」

「我輩達は動けなくなる」

「でも間に合わなかったら」

「ガネットは終わるわ!」

ブラキオにエネルギーを渡せばカルタノ達は何とかなる。だがもし奴らがそれより速く街を破壊尽くしたらガネットも終わる。かなりヤバイ博打かよ。

「わかった。それで行こう!俺が奴らを食い止める」

「ちょ本気かよ!間に合わなかったらお前の身も危ないんだぞ!」

「10数分なら何とか足止めくらいは出来るさ!それにコレがあるから大丈夫だ!」

涼はドンガンバッチグーを取り出す。

「でも!」

「私達も及ばずながら力を貸しますわ!」

「であります!魔人族の私の魔力も使うでありますよ。」

画面越しからベルとマナリアもそういった。

「うむ。確かにマナが多く使える奴が多ければもっと短縮も出来るはずだ!」

「よし。俺と涼で兄貴達を止めるティラ!」

「何言ってんだルビティラ。お前も残って力を渡すんだ。」

「何を言ってるティラ!一人で兄貴達は無理だティラ!」

「でもデカイ分マナも多いお前も必要だし、それに一人じゃホウキュウオーになれないだろ」

「そ、それは…ティラ」

そうだ、ルビティラだけじゃホウキュウオーになれないのだ。最低でも三体が合体しないと人型は保つ事は出来ないのだ。

「ワニ!」

涼。ルビティラを連れて行け!

話を聞いた宝石獣達がベルとマナリアと駆けつけてきた。

「ワニ爺!お前達も!」

「ケラ!」

「パッキー」

「ギャオ!」

「テーゴ」

「アーアー!」

「くーくー」

「きーきー」

「キロ!」

行ってこいルビティラ、涼!!

「お前ら…」

「涼。僕達を甘くみるなよ!」

「修行したんですマナ量も増えてます」

「我輩達にどんと任せて下され!」

「たまには独りよがりすんな!」

「そう言うこった。」

「涼。ルビティラちゃん行って頂戴。必ず間に合わせ駆けつけるから!」

「涼…一人でカッコつけんなティラ!」

ルビティラが体を軽くぶつける。

「ルビティラ…わかったよ。行くぜ相棒!」

「オウティラ!」

涼は宝救剣にドンガンを取り付け勇者石(チェンジストーン)はめ込む。

レッド!ザ!宝救武装!ガチガチ!ガンガンターイム!

「宝救武装!」

掛け声と共に剣から光が吹き出してスーツと鎧とパートナーを模したヘルメットを装着する。更に眩い光の水晶が涼を纏い更に強固な鎧を纏ったそしてマントを装着し変身完了した。

「ホウキュウレッド・ガンナー!」

涼はルビティラに跨るとルビティラは本来の巨大な姿になる。

「ルビティラ突っ込め!」

「行くティラよ!」

巨大化したルビティラは涼を背に暴れ回るカルタノ達へ向かって行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る