第43話 仲間達の決意

サイネリアの一件の後、アリシアとルビティラは雨に打たれながら秘密基地に帰って来た。ルビティラの背には倒れた涼を背負って。

「アリシアちゃん!」

賢者マナリアが雨の中飛び出してひ孫のアリシアの元へ走る。

「大丈夫?どこも怪我してない?」

「私は大丈夫…でも…」

アリシアの後ろのルビティラに背おられ気を失っている涼に視線がいく。

「涼!」

信道が馬車から飛び出して駆け寄る。

「ルビティラ、何があった??」

「涼が前の勇者達を倒した…ティラ…」

「ん!?ルビティラお前喋ったのか!?」

そりゃ驚くわ。今まで喋る宝石獣なんていなかったんだから。

「今は彼を治療しないと!」

「そうだった!ルビティラお前も休んでろ!」

「そうするティラ…」

ルビティラは馬車の後ろの荷台に乗り横になった。

涼はマナリアの術で傷を癒して貰ったがまだ意識は戻らない。

「涼がハンターズを倒した!?」

「1人でかよ。」

「一体どのようにして彼奴らを!?」

「ルビティラちゃんもいつから喋れる様になったの?」

目を覚ましたコハク達も話し合いに加わっている。夜になってようやく4人は目を覚ましたのだ。

「いっぺんに聞くなお前たち!姫様が混乱するだろ。姫様とにかく話してくれ!」

「わかったわ…」

アリシアは事の経緯を話し始めた。

「兄様が涼さんにコレを渡したでありたすか!?」

「ええ、ルビティラちゃんはそう言ってたわ」

アリシアは涼がハンターズと同じハザードシリーズを持っていた理由をルビティラから聞いたのだ。

「ハザードシリーズだったか?そのアイテム?」

「使った彼奴らは尋常じゃない力を手に入れていたですぞ!」

「ああ、この黒い宝石はなんなんだ?」

コハクはバーサークグリップに着いている黒いダイヤみたいな石が気になる。

「これは!魔石であります!」

「魔石って魔人族が使う奴だよね?」

「さすが賢者様、大正解であります!」

「魔人族の宝石なのか?」

魔石とは魔界の魔力をおびた黒い石で魔宝石とよく似ている。違うのは、魔宝石はマナがエネルギーなのに対して魔石は魔力をおびており魔人族以外が下手に使うと命が危ない代物なのだ。

「この石一つに莫大な魔力が詰まっているんであります!そう魔王クラスの!」

「ま、魔王クラスだって!!」

「そんなもんで武装してりゃ俺たちより強い訳だ!」

あのヴァンデストと同じ力があるのかこの黒い石に。

「マナが私達の生命エネルギーと自然の力を使い使うに対して魔人族は魔力って言う持ち得た莫大な力を使って戦うから私達と違って体力の消耗が違うのよ!」

「ひいお祖母様どうしてよ?」

「お婆ちゃん言わない!魔宝石は魂の結晶で魂と直接干渉していて使うもの。マナは生命が作るエネルギーでそれを取り入れて魔宝石は力を使うの!生命のエネルギー故に直結している私達も消耗したマナの影響をモロに受けるから疲れてしまうの!」

つまり、使えるエネルギーに限りや個人差がある上に周りから貰うと力量が足りないと疲れてしまうのか。取り入れる量が多すぎても使えるエネルギー量は一定で余分に取った分のマナは消費されず疲れに変わるらしい。

「逆に魔力は持ち得たエネルギーの事で、修行すれば使えるエネルギーも増えて強力になるでありますが、それでも術に使うと減るでありますし疲れたしまうであります。でも、魂には直接干渉してない分疲れは大した事はないであります!」

つまり、魂と直結してる魔宝石と違い元から備わっているエネルギーだから体力の消耗だけで済むしいちいち周りから集めるマナと違い鍛えれば強くなる代物か!そのかわり限りがある。色々面倒なんだな。

「自然界にある魔宝石は高純度のマナの結晶!魂と干渉してないからエネルギーを使い果たしても自然に回復するのよ!オマケに害は無い。人体にかかる負担もない!宝石獣達はまさに莫大なクリーンなエネルギーの塊なのよ!」

成る程なだからルビティラは狙われてるのか!そんなもんをアクセにすれば確かに術だって手を汚す事なく使い放題もいいとこだしな。

「逆に魔石は莫大なエネルギーを有する代わりにデメリットで体に負荷がかかるんであります。しかもヤバイレベルであります!」

魔石は莫大な力と引き換えに命を落とすか精神が崩壊するか身体に以上をきたすか。このどれかだ!

「調べたらこのアイテムは使えば魔王クラスの強さを手に入れるのと引き換えに、その使用者のトラウマを呼び覚まし恨みを増大させ脳を侵食し自我を失い…やがて殺戮人形と化すであります…」

「マジかよ…」

「使ったら殺人鬼と化す悪魔のアイテムか…」

「アッシュベルはそれを知った上で涼殿に渡したのか!」

「酷い!涼さんが壊れるとわかって渡すなんて!」

我が兄ながら筋金入りのマッドサイエンティストであります。

「私が勝手な事をしたから涼は…あんな悪魔の力を使わないといけなくなったんだわ…」

「姫様…」

「確かに姫様が悪いな!」

「の、のぶ!!」

「立場をわきまえず、勝手に行動した結果がこれか?一国の王女が犠牲になれば解決すると思っているのか?貴女はまだ子供だ!思い上がるのは仕方ないが王女なら立場を理解し思い上がった行動は慎め!いいな!」

「わかったわ…」

信道のキツイ言葉に驚く一同。

しかし、その言葉にはちゃんとアリシアを思っての事だとは伝わっている。

「ガッチ・ランクアップはこの有様でありますからね、危機を脱するには使うしかなかったのでありましょう」

ベルは机の上の無残な瓦礫と化した自分の発明をみる。

しかも、壊れ方が半端なく直すより新しく作った方が速いらしい。

「僕達は…涼に…宝救剣に頼りすぎた…」

「そうですな…」

「俺達が強くないから…涼に無理させてあんな物を使わせちまったんだな…」

「私達もっと自分の力を上手く使えないといけないんですよね…」

4人は改めて自分達の力不足を痛感する。事あるごとに涼が無茶をかってでるから自分達はそれに甘えていたのだ。

「俺もこのままじゃな…」

「私も…足手まといなんてもう嫌よ…」

「みんな!大丈夫だよ!」

マナリアをみんな見る。

「その為に私を訪ねてきたんでしょ!」

「ひいお祖母様!力を貸してくれるんですか!」

「勿論!可愛いひ孫の為だもんね!後、お婆ちゃんは無しよ!教える以上は賢者様と呼ぶのよいいわね!」

「はい!ひいお祖母様!」

「だから!お婆ちゃん言わないっ!」

「ひっはらないでー!!」

アリシアの顔を引っ張るマナリア。

「賢者マナリア様!改めて僕達の指導を宜しくお願いいたします!」

「我輩達どんな試練も耐えてみせますぞ!」

「お願いします!」

「賢者マナリア頼んます!」

「俺も爺さんの指導だけじゃな、若い連中に混ざります!賢者様お願いします」

5人は改めて賢者マナリアに頭を下げる。

「はい、任されました!」

マナリアは笑顔で答えた。

:

「う…ん…ここは?」

涼は目を覚ますと見慣れた天井だった。

最近こんな事ばっかだしな。

「アレ?みんなは?」

俺は起き上がり辺りを見るが誰もいない。

涼は外へ出ると。

「お!来たな!」

「涼!起きたのね!」

外はもう夜で皆外で焚き火をしなんとバーベキューをしていた。

「ば、バーベキュー!?」

「涼!上手いティラ!焼き石!」

ルビティラは焼けた石を食べてる。

「ルビティラ!そういや喋れるようになったんだよな?」

そう、あの時火事場の馬鹿力でルビティラは言葉を発したのだ。

「涼殿!さあ食事ですぞ!」

「早くしないと無くなるぞ!」

「あ、ああ…」

涼は場の雰囲気を汲み取れず空返事。

「ほら!肉だ!俺の味付けは最高だぜ!」

信道は笑顔で串に刺した肉を渡す。

「ああ…ん…美味い!」

「だろ!金の鳥自慢のタレだからな!爺さんの代からの継ぎ足しで受け継いだ…」

「のぶ!長いよ!」

「わりい、わりい!さあ、みんなエールも開けるぞ!今日は楽しもう!」

「姫さん大丈夫だったか?」

「ええ、涼は大丈夫?」

「俺は大丈夫だ」

「そう、よかったわ!」

アリシアは肉を頬張る。

「みんな!俺は!んぐ!?」

涼の口に海老が突っ込まれた。

入れたのはリアだ。

「涼さん!みんな分かってますから!」

「んぐ!リア…」

「お前の馬鹿っぷりはチームを組んだ時から知ってるが…」

「それが君のいい所だ」

「ですな!」

「みんな…」

「涼!お前は馬鹿だが好かれる馬鹿だ!」

なんだよそれ…

「好かれる馬鹿は仲間に恵まれる!1人で抱え込むな!俺達がついてる!」

信道が笑って言ってくれた。

「そうであります!涼さん!私も涼さんの力になれるアイテムをいっぱい作るであります!」

「涼!今度はみんなで貴方の力になるわ!」

「また…暴走するかもしれないぜ、みんなを傷つけるかもしれないんだぜ…いいのか?俺に付き合って…」

「バーカ!とうにお前の馬鹿っぷりは知ってる言ったろうが!」

カイエンがおちょくる様にそう言った。

「暴走だって?このチームで暴走しない奴はいないだろ!」

確かに蜥蜴に猫は暴走するなうんうん!

蜥蜴でわない!猫言うな!

回想シーンにまで突っかかるな!!

「ふふ、確かにみんな無茶しますよね!」

「ですな!我輩なんか何度怪我したか〜」

「そりゃお前の自惚れが原因だろう」

「カイエン殿も頭よく無くすではないか!!」

「俺はデュラハンだ無くなっても見えない糸で繋がってるから大丈夫だよ!」

「何を根拠に言ってんでありますか…」

「ジャリは引っ込んでろ!」

「チビ言うなでありますっ!!」

まだ、暴走する子供がいたな。

誰が!マメジャリかーであります!!

だから回想シーンまで突っかかるな!!!

「あははは!そうだな…俺の仲間は無茶する奴ばっかりだな!」

涼の顔に笑顔が戻った。

「たく、やっと笑ったか!」

「世話がやけるな本当に!」

「ですな!」

「涼さん私達も貴方と肩を並べられるように強くなります!」

「その為に私が指導してあげます!」

「賢者様」

「涼!貴方の周りにはこんなに沢山の優しい仲間で溢れているわ!間違いは誰でも犯す者よ私も選択を間違え貴方を修羅にしてしまった…」

「姫さんは悪くねえよ」

「だから今度はチーム一丸となって戦うわ!涼、私達を信じて!もう貴方を1人にしないわ!私達は戦隊でしょ!」

アリシアは力強くそう言ってくれた。

「そうだったな、俺達は戦隊だ!」

どこに居てもどんな世界でも俺達は勇者でこの世界の戦隊だ!

「よし!涼が元気になったし!肉追加するぞ!」

「のぶさん!早くしてくれよ!」

「我輩待ちくたびれましたぞ!」

「お前ら野菜とか食わないのか?」

「白虎は肉が主食だ!」

どんな理屈だよ。

わいわい五月蝿い男性陣だ。

「男の子って」

「馬鹿であります…」

「100年たってもそこは変わらないのよね」

「特に涼はもっと馬鹿!」

失礼だなおい!

「前はあの3人も笑ったりしたんだけどな…」

「ひいお祖母様?」

「な、何でもないよ」

「これからは賢者様の指導の元私達は魔宝石の基礎を学んで力をつけるんですよね!」

「ええ!任せてね!」

「はい!」

鍛錬もでありますが、今のままでは絶対に魔王軍には勝てないであります…悔しいけど、兄様の発明品の力は私以上であります。

やはり認めざる終えない兄の作った発明品を。でも犠牲の元で成り立つ発明なんて間違ってる。しかし、今はこの暴走装置を使うしか生き残る道は多分ない。

「この兄様の発明品の暴走を止める装置を開発するしかないであります!」

ベルは兄の発明を超える為の自分の発明品の開発を今夜から始めた。

皆を守る為に!兄を止める為に!

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