第42話 危険ジャガーノートモード

バーサークグリップを使い、ハンターズと同等の力を得た涼は拳を降りかざす。

「私達の技術を盗むなんて!何て卑怯な!」

「テメェが言うな!」

涼はアイカの顔に思いっきり右ビンタをお見舞いした。

「う、うわっ!!」

アイカはくるくる回りながら民家の窓に激突した。割れたガラスが舞う。

「え…嘘…」

アリシアは口をあんぐりだ。

「な!テメェ!よくもアイカを!」

カイトが槍を降りかざすと涼は難なく受け止めカイトの腹に蹴りをお見舞いし吹っ飛ばした。

「うわっ!」

涼は奪った槍でカズとアインに斬りにかかる。

カキン!カキン!と火花を散らす槍と剣。

「俺達と同じ装備でこの差はなんだ!?」

涼の方がハンターズを押している。

バーサークグリップはハンターズの物より前に作られた調整前の試作品だ。

つまり力を制御されていない全力の状態で戦っている為出力は上回っているのだ。

「クソ!押してはいるが身体が痛みについて行けない!?」

凄まじい力の反動が身体にモロにくる為全身にかかる負担と痛みが涼にのしかかる。それ相応の反動があるのか。長くは使えない。

「カズさん離れて!」

アインが矢を放つ。

涼は簡単に受け止めて粉々に矢を破壊した。

「う、嘘でしょ!?」

「くそ、身体が言う事をきかない!?」

余りの力に振り回されやっと動かしている涼にある異変が起きた。使い始めて3分ちょっと…

!?

突然頭が痛み始め、何か聞こえてきた。

な、何だ!?

お前だっせー

この声はなんだ??

いい歳してまだヒーローごっこかよ!

小学生だぜ俺達はもう、行こうぜゲームしようぜ!

お前は1人遊びしてろよな!

これは…子供の頃の…

猿渡!お前いくつだ!そんな幼稚な事をするならしっかり勉強しないか!

涼、お前はちゃんと高校へ行き勉強するんだ!いつまでも幼稚園の遊びはよさないか!

お子さんは高校へは行けませんよ、ヒーローごっこなんてやる中学生はいない。

中学校ん時の…

お前オタクかよ!だっせー!

今時ヒーローなんて見てんのかよ!みんな!こいつまだヒーローごっこなんてしてるんだぜ!

猿渡は頭おかしいんじゃないですか?ヒーローごっこで同級生を病院送りにするなんて、精神病院には行かれたんですか?お母さん! 俳優ねぇ〜猿渡、お前その顔で俳優を目指すのか?

アレは彼奴らが先に喧嘩を売ってきたから…

何だよ…先生…俳優を目指して悪いのかよ…

君さ周りがまるで見えてないね。

それに芝居が自己完結しているな、君は役者には向かないからほかの道を探したらどうだい?

はぁ?新入りがいきなりヒーローをやれる訳ないだろ?戦闘員やれるだけありがたいと思うんだな。

涼、貴方もう25よ!いつまでぶらぶらしてる気なの?これ以上ヒーローごっこはしないで!

真っ当な就職にもつけないのか。

ハローワークは芝居小屋を探す場ではありませんよ!

お前に俳優は無理だ!

頭がおかしいって自覚しろよ!

ねぇ、一度病院に行きましょう!ね!

いい加減にしてくれっ!!

もう、沢山だ!ヒーローが好きで何が悪い?

俳優を目指して何が行けないんだ?人と違うだけで…誰がそうしてくれてと頼んだ…誰が無理と言った…誰が頭おかしいと呼べと頼んだ!!人と違うだけでヒーローになりたくて何が悪いんだよっ!!肩書きだけで全て判断しやがって!!

「俺は…俺を否定し判断した全てを…恨むっ!!」

そうだ…全てを壊せ!血祭りに上げるんだ!そうすれば全てが終わる!殺せ!殺せ全てを!

ああ…そうしてやる…全てを根絶やしにしてやるっ!!!

涼の思考はそこで消えた。

「…」

「涼?」

突然脱力になり動かなくなる涼。

「よくもアイカを!」

カイトは涼が落とした自分の槍を拾うと涼に降りかざす。

しかし、涼はアリシアを突き飛ばすと無言でカイトの槍を掴むと破壊した。

「え!?」

カイトは唖然とする。

涼は宝救剣の持ち手のグリップを引く。

ジャガーノートタイム!

「えっ!?」

ドッカーン!

「ぐはっ!!」

剣からあからさまにヤバイ事が起こる音楽が鳴ると涼はカイトの懐に入り、黒いエネルギーを纏った拳でカイトをひたすら殴りまくるとカイトは爆発し鎧とスーツは吹っ飛び変身が解けたカイトは血を吐きながら転がる。

「くはっ!?げほっ!?」

「カイトさん!!」

「何だ!?一体?」

「…う…が…あ…」

涼のヘルメットが赤く光り輝き牙を向くと、涼は一瞬でカズ達の元へ行き2人を思いっきりぶん殴る。

「「うわー!!」」

壁を貫き民家に打ち込まれる2人。

「何だ?この力は?」

「う…が…あ…」

涼は黒いオーラを纏い凶々しい奇声を上げながら数の頭を掴み壁に押し当て更に殴る。

「うわぁっ!やめっ…うわぁ!」

涼はひたすら壁に押し当てヘルメットを殴り続けるヘルメットにヒビが入る。

最後に涼はカズの頭を持ったまま黒いオーラがバチバチに火花散る右足で蹴り壁ごとカズを蹴散らす。

「けはっ!」

カズの変身が解けると体から血を流しながら血を吐き出し倒れた。

「ひっ!来るなっ!!」

残されたアインはひたすら弓矢を打つが、まるで効かず矢が当たっても朽ち果て廃になるだけだった。

「ひっ!来るな、来るなー!」

アインは剣を降りかざすが涼は片手で受け止めて粉々に破壊すると首を掴む。

「うが!は、離せ!離せ!」

「う…があ…あぁぁぁぁぁぁぁ!」

涼は奇声を上げながらアインの腹を殴り鎧を破壊し空へ放り上げる。

アインは上空で変身が解けた。

しかし、涼は宝救剣を構えてグリップを4回ひく。

「ちょ!まさか!?」

アインはまさかとやな予感がした。

涼の剣が黒いエネルギーを貯め始め落ちてくるアインに構えている。

「あ…あい…つ…まさか…」

「あ…いん…をそのまま…や…めろ…」

ヤバイと感じた2人は意を決して立ち上がり走るか間に合わない。

「涼…駄目よ!」

アリシアは涼の元へ走る!

「涼!よせティラ!」

ルビティラは兵士達を引き剥がし涼の元へ走る。

「「止めろーーーーーーー!!」」

「止めろティラーー!」

「涼!駄目よっ!だめぇぇぇぇぇぇ!!」

「うわー!?」

ジャガーノートフィニッシュ!

涼は落ちてきた丸腰のアインに問答無用で必殺技を叩きこんだ。

アインの両足は弾け飛び爆発し大量の血が弾け飛び血の雨を降らす。

「うわぁぁぁぁぁん!!」

アインは今まで感じたことない痛みに泣き叫ぶ。両足が跡形もなく破裂し現実の恐ろしい痛みを襲った。

「う…う…」

虫の息のアインに剣を構えた涼がゆっくりと近づいてくる。

「く、来るな!来るなっ!!」

アインは泣き叫ぶ。

がしっ!アリシアは涼に身体に纏わりつき止める。

「やめて!涼!お願いだからやめて!」

しかし涼には届かない。

「涼!目を覚ますティラ!」

ルビティラが尻尾で涼を吹き飛ばすと宝救剣からチェンジストーンが外れた。

「げほっ!げほっ!」

変身が解け涼は正気戻る。

「姫さん?ルビティラ?俺は一体?」

「覚えてないの?」

あれだけの事があったのに!?

「あいつら、何であんな怪我を?」

「はっ!?お前が俺達を殺そうとしたんだろっ!!」

はっ?

「お前なっ!もう戦えない奴にトドメを刺すのか!何が戦隊だ、ふざけるな!この暴君が!」

カズ達は涼に怒鳴り上げる。

正直この状況は自業自得と言って片付ければそれまでだが、正義の味方だのヒーローとほざいていた奴がこんな殺戮行為をしかも無意識でやっていたなんて。

「貴方は…ヒーロー…なんかじゃ…ない…うっ!!」

「もう喋るな!行くぞカイト!」

「ああ、いいか…この借りは必ず返すからなっ!覚えておけ!」

気絶したアイカを抱えたカイトは涼に戦線布告するとハンターズ達は消えた。

「俺が…やったのか…この状況…」

涼は覚えていない。

周りは無残な瓦礫と血の跡それに巻き沿いを食らい怪我した人達ばかり。

「涼…」

アリシアは涼に触れようとするが先程の殺戮行為を働いた涼が怖くて触れない。

「涼…お前が…傷つけた…ティラ…」

「本当に…俺がやったのか…」

あの時、使うしかなく使ったバーサークグリップを使います振り回される力に翻弄されたのは覚えている。しかし、そこから先は何も覚えていない…ただトラウマを引き出された…あとは覚えてない…

バーサークグリップはその人のトラウマを呼び覚まし恨みで自我を支配して殺戮の気持ちだけで動かす危険な代物だったのだ。

アッシュベルは知っていて渡したのだろ。

「嘘だ…」

「涼…」

「嘘だ…嘘だ…」

「ティラ…」

「嘘だと言ってくれよっ!!」

涼は声を上げ膝をつくと地面を殴る。

俺は…また…また…

雨が降って来た…

「うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

雨の音が涼の泣き声をかき消す。

涼は今日この日始めて自分の無力さを非力さをそして恨みにかられた愚かな自分を許す事も受け入れる事も出来ずひたすら泣き叫ぶだけだった…


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