第41話 ホウキュウレッド・バーサーク
「バーサークグリップ?」
アッシュベルはそのアイテムを涼に投げた。
「これが、アイツらを止める方法なのか?」
「それを勇者の剣の鍔の先に取り付ければ、妹のアイテム以上の力が手に入る!まあ、代償は高く付くけどね!」
代償がある?やっぱあるのか?
「代償って何だよ?」
「そのアイテムは魔王クラスの力を手にする代わりに、人で無くなってしまうのさ!」
「人で無くなるだと!?」
「長く使えば使うほど自らの自我が崩壊していき理性は消え失せてしまい最後は…」
最後は何だよ…
「人を殺す衝動に意識を奪われ眼に映る命を根絶やしに奪い尽くすまで止まる事はない殺戮の殺人鬼と化すのさ!」
アッシュベルは笑いながら説明した。
「ウガァァァ!」
この野郎!!ルビティラの怒りが爆発し巨大化しアッシュベルを踏みつけた。
しかし、居ない。
「ティラ?」
どこ行った??
「全くペットはちゃんとしつけて欲しいね」
うわ!後ろにいた!?
「まあ、彼らを止めるには同じ力を使うしかない。果たして君にそれが使えるか」
「俺にはこんな物必要ない!」
「強がらないでくれ、ソレを使わないと彼らを止める事は出来ないし、姫様も助けられない!だろ?」
「アンタ、何で俺にこんなもんを?」
敵に塩を送るなんて特撮では別のシリーズではあるが、戦隊には滅多に無い話だけ。あくまでドラマの中の話だが。
「より多くのデータが欲しいのさ!模造ではなく勇者の剣で試して見たくなった!ただ、それだけさ!」
何だそれ?研究者ってこんなもんなのか?
「アンタ、目的は何だ?」
「僕はただ研究者として知りたいのさ!神話の確信をね!」
神話の確信?
「話が長くなったね!さあ行きたまえ!」
アッシュベルはそう言うと消えた。
「アイツ…」
俺は渡された悪魔のアイテムを握る。
「ティラ!」
涼!急がないと!おっとそうだった!
俺はルビティラにまたがる。
「とばせ!ルビティラ!」
「ティラ!」
振り落とされるなよ涼!ルビティラは全速力で走り出し俺達はサイネリアへ向かう。
:
サイネリアでは縄で縛った国王を踏みつけているアイカが街の広場で先代勇者のカズ達と待っている。
「本当にアリシアは来るんですの?アイン様?」
「ええ、博士の妹が寝返ったなら必ず偵察機の一つを飛ばしている!このゲームには良くあった使用でしたから!」
ゲームって?いつも勇者様達は私の知らない言葉を並べるけど特にゲームの意図はまるで判らないわ?遊ぶのとは違うのかしら?
「このイベントをこなせば奴が出てくる鍵が現れるんだよな?」
「ああ、目的ね為にはな、一様予備は準備済みだが一様本物もな!」
「宝石神が出れば後はそれを使って」
「俺達はログアウトできる日は近い!!」
先代勇者達が訳わからない話を進めている時だった。
「先代勇者様、アイカ様!来ましたよ!」
アリシアがゆっくりとアイカ達に近づく。
アイカはサイネリアの王から足を離しアリシアに近づく。
「アリシア姫様!条件を飲んでくれて嬉しいですわ!」
「もう猫かぶりは辞めたらどう?アイカ!」
「ちっ!相変わらず生意気な小娘ね!アリシア!」
お互いに素の自分になる。
アリシアは少々お転婆だ。
涼達の前では最近素の自分が出てばかりで調子が狂うわよ全く。
アイカは昔からやたらと突っかかって幾度なく私に嫌がらせをしたわ、誘拐事件の時も顔を隠しても趣味の悪い香水の臭いですぐ判ったわ!それで容姿はいいから猫かぶりで母上を亡くした父上にいいよってやりたい放題。
オマケに魔人族と繋がっていたなんて。
「アイカ!こんな事までして王位が欲しいわけ?」
「気に食わないのよ!アンタが産まれるまでは私が継承権1位を持っていたのに」
「持ってる訳ないでしょ!貴女にはアレキサンドライトは無いのよ!」
「持つはずだったのよ!使えない部下がアンタが産まれた後に叔母上を殺すなんてミスをするから!!」
え!?何よそれ!?母上は私を産んですぐ亡くなったのは聞いたわ!でもそれは身体が耐えられなかったからじゃ!
「何?知らないの?お笑いね!」
「母上は…まさか暗殺されたの!?」
「そうよ、私がパパに頼んだのよ!娘の夢を叶えようとしてくれた優しいパパ!でも、部下は使えなかった!毒を入れた水を出産した後に飲ませたんだから!」
嘘…母上が死んだのは叔父上とアイカの企みだったの!?
「母上を…貴女はっ!!それでも初代勇者の血を受け継いだ王族の末裔なのっ!!」
「アンタのせいで叔母様は死んだのよ!全てはアンタを身篭ったせいよっ!!」
私のせい…
母上は私を身篭ったせいで陰謀に巻き込まれて死んで…父上もいい様にずっと操られていたの…
「そんな…」
アリシアはショックのあまり座り込む。
残酷過ぎる真実を目の当たりにしもう立ち上がれない。
「罪を償うなら私達と来なさい!勇者様達の力になればその罪を浄化されますわ!」
「浄化?」
「さあ、おいで、アリシア!」
ああ、もう何がなんでもいいわ…母上は私のせいで死んだ…私が犠牲になって罪が晴れるなら、涼達が助かるなら…
「行くな!アリシア!」
「え!?」
私の上をまたがり現れる巨大な赤い宝石獣と一人の男。
「涼!ルビティラちゃん!」
「ティラ!」
姫、大丈夫か?小さくなったルビティラがアリシアに駆け寄る。
「あら、偽勇者じゃない。それにルビーの宝石獣!」
「泥棒女!街の人達だけじゃなくこんな女の子まで泣かせやがって!」
「貴方こそ!私を王都から追放させたその罪万死に値しますわよ!」
いや、それは自業自得だ。
「勝手ばかりいいやがって!自分が犯罪者と言う自覚はないのか!」
いや、あったらこんな事してないから。
「私は王族よ!次期女王、愚民が気安く声をかけていい存在じゃないわ!それに犯罪者はキサマでしょうが人殺し!」
「聞いた俺が馬鹿だったわ!」
涼は宝救剣を取り出しチェンジストーンをはめる。
レッド!ザ!宝救武装!
「宝救武装!(ホウキュウチェンジ)」
剣から赤い光が飛び出し涼の身体に纏い鎧を構成しルビティラを模したヘルメットを被ると変身完了!
「情熱のルビー!ホウキュウレッド!」
一人名乗りをあげる涼。
「勇気の宝石を見に纏い!宝石戦隊!」
「「ホウキュウジャー」」
「ティラ!」
何故か一緒に名乗るアリシアとルビティラ。
赤い花火が上がる。一人でも上がるんだな。
「なんで姫さんが名乗るんだ?」
「私も戦隊の一員よ!!」
「ティラ!」
そうだ!そうだ!んな事言ってる場合かよ!!
「カッコつけても1人で何ができるんですか?」
「パワーアップアイテムは壊れたからな、もう俺達には対抗できないだろ!」
確かにガッチ・ランクアップはバラバラに壊れちまったからもう使えない。まだ数回しか使ってないのに。
一様さっき渡されたアレがある…でも…アレは使う訳には…
「大人しく姫とその恐竜を渡せば命は助けてやろう!」
「やなこった!パワーアップ無しでも時間は稼げるさ!」
涼はティラノファングをトンファーモードに変えて構える。
「涼!また自分を犠牲にするの!?」
「お互い様だろ!ルビティラ、わかってるな!」
「ティラ!」
おうよ!ルビティラはアリシアを加えて巨大化した。
「ルビティラちゃん離して!涼が!」
「ティラ!」
それは出来ない!涼を信じろ!
「言葉は判らないけど…見捨てていけないわよ!ルビティラちゃん!お願い!」
「姫!我慢…しろティラ!」
え!?
「ルビティラ!?お前今!」
「しゃ、喋った!?今喋ったの?ルビティラちゃん!!」
「俺?喋ってるティラ??」
確かに言葉を発してる?何でだ?
いや、それは後だ!
「ルビティラ行け!」
「わかったティラ!!」
ルビティラは走り始めた。
「逃がしませんわよ!」
ルビティラの前に立ちはだかる巨大化した兵士。
「雑魚まで大きくなったティラ!」
「ルビティラちゃん…辛口なのね…」
「褒めるなティラ!」
でもお馬鹿…泣き
「あの怪獣を捕まえなさい!」
「へん、捕まるかティラ!」
「うわっとと!ルビティラちゃんもっとゆっくり!!」
そりゃ無理だティラ!
とうとう回想シーンにまで紛れてきた!!
ルビティラは兵士に噛み付いては投げ尻尾でなぎ払い蹴散らしていく。
「いいぞ!ルビティラ!」
「よそ見とは余裕だな!」
カズが黒い剣を降りかざす。
涼はバク転してかわす。
「ちょこまかと!」
カイトも黒い槍を振り回す。
涼はスーツアクターの経験を生かして無駄の無い動きでひたすらかわす。
当たらなければ関係無い!!
「何をしてるんですか!?」
アインも黒い弓で矢を放つ。
しかし、涼には当たらない。
思った通りだ!
コイツらの動きは一定のモーションばかりだ!スキルばかりで攻撃する典型的なプレイスタイルだ。自己鍛錬で身につけた力じゃないから無駄な動きばかり、それをスキルとあの黒いアイテムで補ってるんだな!!
「馬鹿すかとスキルを何度も使うからだ!お前らの動きはゲームと同じだ!」
まあ、この世界をMMOだと思い込んでるコイツらだちょっと考えれば動きは大体分かる!
「スキルが当たらないって運動能力はチートされてるな、あのキャラは!」
「当たれば一撃で終わるのによ!」
「どこまでチートを施したんですか貴方のキャラデータは!」
「だから、ここはゲームの世界じゃない!現実の世界と何度も言っているだろうが!」
本当にコイツらの周りはどう見えているんだ!?本当にゲームのディスプレイ画面だってのか??だとしたら、痛い思いをしないと現実を理解出来ないのか…
「ポイズンウイング!」
「うわっ!?」
背中が何かに斬り裂かれた。
何だ!?身体が痺れてきた。
「アイカ!ナイスアシスト!」
「何だとっ!?」
後ろを振り返るとあの泥棒女が魔法を使ったのか!?くそ痺れが広がって来た。
「これなら当たるな!」
「しまった!!」
涼の懐に入るカズ。
「ブラッディブレード」
判決!死刑!ハイ終わり!
カズの剣が黒い刃を放ち涼の鎧とマスクを粉々に粉砕する。
「うわっ!!」
涼の変身が解けて地面に叩きつけられる。
「くそ…卑怯な…」
涼は痺れる身体を起こす。
「涼!」
「涼!うわっティラ!」
ルビティラは増えた巨大兵士に多い尽くされ動けなくなった。
「重いティラ!退けティラ!」
ルビティラも身動きが取れない。
「さあ、年貢の納め時ですわよ!殺人犯!」
「アイカ止めてください!」
「姫…さん…逃げろ…」
「嫌よ!涼を残して行けないわよ…お願い…言う通りにするから…涼を助けて…お願い…」
アリシアは大粒の涙を流し俺の前から退こうとしない。
くそ、また俺は…誰も守れず…終わるのかよ…そんなの絶対に嫌だ!
俺は意を呈して立ち上がりズボンのポケットからアッシュベルに渡された悪魔のアイテムを取り出す。
それを使えば人間ではなくなりまよ!
人間じゃなくなる…でも、こんな小さな女の子1人守れない奴が…勇者って言われるかよ!
涼はバーサークグリップを宝救剣に合体させる。
デンジャータイム!
取り付けた箇所から音楽が鳴り響く。
「涼?」
「俺が必ず…姫さんを…アリシアを守る…この身に掛けても!」
涼はチェンジストーンをはめ込み、グリップのポンプを上に引く。
レッド!ザ!バーサーク武装!
「バーサークチェンジ…」
黄泉!恨み!奈落!ホウキュウレッド!バーサーク!壊せーーーー!!
剣から黒い煙が吹き出し、涼に纏う煙が晴れると黒く凶々しく爪を翼を付けたまるでドラゴンゾンビの様な姿のホウキュウレッドがいた。色は真っ黒だが。
「ん?」
「おい!?アレは!」
「アレは…ハザードシリーズの試作品!!」
「うおりぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺はハンターズに声をを上げながら突撃していく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます