第38話 姫の奇跡と探せ大賢者!
涼は倒れこみ涙をながしている。
俺は無力だった…何を考えていたんだろう…ここは現実だ…死んだ人間が蘇る訳がない、わかってた筈だ…敵を倒しても人は蘇らない…俺はあの馬鹿勇者共と同じだった。
どこかでドラマと同じと思い込んだ、それがこのざまかよ…俺は…ヒーローなんかじゃない…
「涼…」
みんな何を言ったらいいか判らない。
やっとの思いでカイアナスを解放出来たと思いきや魔宝石を奪われた人や操られていた人達はとうに死んでいた…こんな馬鹿な結末なんて誰が思っただろうか…
「姫さま!」
塞ぎ込む涼に近づくアリシア姫。
「涼!」
声をかけるが反応しない。
「涼…涼!しっかりしなさいよっ!」
アリシアは涼の前に回り込み両手で涼の顔をバシッと叩く。
「ちょ!姫さま!!」
「アリシア姫!?」
リアとコハクはアリシアを止めようとするが、信道とカイエンが止める。
「ここは姫様に任せてみようぜ」
「ああ、あの娘は根がしっかり強い娘だ、次期女王に任せてみよう」
カイエンと信道は涼をアリシアに任せてみる事にし見守る。
「涼!しっかりしなさいよ!貴方は勇者なのよ!」
「俺は…勇者じゃない…人殺しだ…あいつらの言う通り…」
涼の目に生気はない。
「涼!」
アリシアは涼の顔を自分の方へ向かせる。
「貴方は人殺しなんかじゃないわ!勇者なのよ!同時に人なの、勇者の力で全てがどうこう出来る訳じゃないの!人である以上は万能じゃないのよ!」
その通りだ。
勇者と言われていても全てがどうこう出来る訳じゃない。それは人である以上に全てがそうだ出来ない事があるこの理不尽はどこの世界でも変わらない。
「でも…俺は…助けられなかった…ヒーローだと思い込んでいた…それだけだ…」
涼は嘆く。
「ヒーローじゃなくてもいいじゃない。貴方は馬鹿で真っ直ぐで仲間思いで優しい人なの!貴方はヒーローじゃなくて、救世主よ!勇者なのよ!この世界が選んだ私達の希望の1人!私達は戦隊なんでしょ?」
涼は周りを見ると仲間達が皆手を差し伸べて笑っている。
「全く君は…馬鹿だな」
「涼さん、私達は貴方の味方ですよ!」
「人殺しと言われても我輩達は涼殿を信じていますぞ!」
「まだくたばれないだろ!馬鹿野郎が!」
「涼、これが戦隊なんだろ?」
みんなは俺を信じてくれてる。俺が始めた突拍子もない活動なのに。
「ティラ!」
涼!俺もずっと一緒!とルビティラはすり寄ってくる。
小さくなった宝石獣達も皆励ましてくれている。
「間違いは誰でも起きるわ、だからこそ最後まで生きて使命をまっとうするの!それが勇者の責務よ!ううん、私達ホウキュウジャーの責務なの!だから立ち上がって涼!」
アリシアはそう言うと涼に手を差し伸べる。
涼は涙を流しながら手を取る。
「みんな…ありがとう…」
涼は改めて現実と向き合うことを誓う。
この先も必ず悲しい事が待ち受ける、だからこそ痛みを忘れず逃げず受け入れ前に進まないと、ありきたりかも知れないがちゃんと向き合って受け入れて立ち上がり誓った使命を必ず成し遂げると。
「え?」
アリシアの体から眩い閃光が放たれる。
「な、何だ?」
アリシアの中から巨大な眩い閃光を放つ巨大な宝石が現れる。
これは、王の宝石アレキサンドライトだ!
「アレキサンドライト!?どうして??」
アリシアも判らない。今までこんな事無かったからだ。
アレキサンドライトから小さな光の玉が現れると、その光の玉は砕け散り、破片は魔宝石を奪われた人達に降り注ぐ。
すると、宝石を抜かれて死んでいた人達が次々と蘇った。
え?嘘だろ!?何が起きた??
「い、生き返ったっ!?」
「確かに魂が戻ってる!!」
カイエンはデュラハンだ間違いなく魂は戻っている。
「姫さんどうなってんだ?」
「私も判らないわよ!!」
アレキサンドライトは宿主さえ触れない宝石だ。何故急に力の一部を発動したのか、判らない。
「勇者様…勇者様が私達を救ってくださたったわ!」
「魔王が居なくなった!俺達は救われたんだ!」
おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!
ちょい待てや!!俺達は何も解決はしてないぞ!!
「勇者様、バンザーイ!」
「ホウキュウジャー様バンザーイ!」
ええ…何この状況…
俺達は必死に今回の活躍は無いと説明したのに街の人や亜人は誰も話を聞いてくれず、勝手に俺達が救った事にされた。
:
その夜
「で、結局居酒屋やるのかよ!オイのぶさん!」
「気前よく酒を大量注文されたからな!飲み屋として稼ぎ時だ!資金だっているだろ!」
俺達はその夜、結果的に解放されたカイアナスの宴会に参加している。会場としてな…
信道の商売魂に火がついてしまい、居酒屋金の鳥の屋台で俺達は酒とつまみと食い物をひたすら配って回っているのである。
「俺達は紛いになりにも勇者だろ!何で飲み屋を!」
「すべこべ言わずこのエールを持っていけ!キンキンに冷えてて美味いからな!終わったら枝豆持ってけよ!」
だから何で異世界に枝豆とかビールがあるんだよ!しかも普通に売られてるし。
「信道!焼き鳥と串カツよろしくね!十人前よ!」
「あいよ!姫様銀杏を彼方さんに持って行ってくれ!後冷やっこ上がったぜ!」
信道は素早く用意したつまみをアリシアに渡す。
アリシア姫もすっかり慣れたもんだ。
みんなも忙しく配って回っている。のぶさんも良くやるよな、終いにゃ俺のおごりとか言い出しそうだよ。
街の人達は笑いながら酒を飲みはしゃぎ踊り倒れるまで宴会を続けた、おかげで夜明けになってしまった。
:
「たく…何で異世界で居酒屋のバイトをしなきゃならんのだ…」
「バイト?」
「手伝いの延長みたいなもんだよ…」
涼はアリシアに説明した。
「みんな!お疲れ様!細やかだが食事だ!」
信道は刺身に串カツに天ぷらにエールに煮物に汁物を作って持って来た。
「信道!流石ね!」
「美味しそうであります!」
「やっとご飯か…」
「待ちに待ちましたね!」
「のぶ殿、早く早く!」
「焦るなって!さあ、みんな乾杯だ!」
「お、いいな!」
信道の提案に乗りみんなは飲み物を注いだコップを手にする。
「色々あったが、丸く収まって良かった!でわ乾杯!」
「「「「「「「乾杯!」」」」」」」
まあいいか今日くらいは…
「やっぱのぶさんのご飯は最高であります!」
「ありがとう!」
のぶさんはベルの頭を撫でる。
やっぱ嬉しいもんなんだな。
「今回は何かラッキーが起きたが、次はこうは行かないな…」
「ああ、色々と俺達は知らな過ぎる」
「基礎的な力も足りません」
「このままでは、我輩達は…」
確実に次は負ける…俺達はそう確信した。
色々と知らない事やこの世界の戦いや様々な基礎が俺達には足りない。
それを痛感した、だから学ばなきゃならない。でもどうやって…
「ねぇ、提案があるの。賢者様に会いに行かない?」
「賢者様?」
賢者って魔法に精通した達人って印象のアレだよな。実際には良く知らないが。
「賢者マナリア様は先代の勇者の1人なの!」
「先代の勇者の1人!?」
「ワニ!!」
何とあやつは生きていたのか!と突然湧いたワニ爺。
「オイ、ワニ爺。知ってるのか?」
「ワニ!」
知ってるも何もワシのパートナーじゃ!
は?ワニ爺のパートナー!?
「ワニ爺のパートナーだって?」
「マジかよ」
「つか、生きてるってその人何歳だよ?」
100歳超えの老人?長生きだな随分と。
「賢者様なら今のみんなに必要な事を教えて下さると思うわ!」
「その賢者は何処にいるんだよ?」
「確か東の国のサイネリア王国にいるって話だけど」
東の国?
ガネット以外でも国があるのか?いや普通にあるか異世界だし。
「サイネリアって確か魔宝族の国だったよな…」
「魔宝族?ってなんだよ?魔法使いか?」
「魔宝族は魔宝石を使い神秘な力を操る一族で各地に見る人種だ!俺の婆さんも魔宝族だったしな!」
信道の話では、魔宝石は魂の宝石。磨けば光神秘の力を使えるようになる。俺達ホウキュウジャーもそれを力にしている。
魔宝族はその力を具現化し理を読み解きあり得なり力を引き出す神秘の人種らしい。
ようは魔法使いだろ。この世界じゃ、魔宝石が力の根源で魔法ではなく魔宝(魔法)と呼ぶらしい。
ちなみに、魔宝石を使った魔法自体は鍛錬さえすれば習得は可能だが魔宝族のがマナ量で圧倒的にまさってるらしい。
マナとは魔宝石のエネルギー量の事だ。
「ついていけないな…たく…」
「とにかくサイネリアに行けば賢者様に会えるわ!ガイアナサスから半日で行けるから朝一に行けばすぐ着くわ!」
割と近いんだな。
「よし、明日朝一にサイネリアに向かおう!」
俺達は賢者マナリアに会いに行く事に決めた。
:
次の朝、カイアナスの人達の別れの挨拶を済ませた俺達はサイネリアに出発した。
ひたすら広がる草原を馬車で向かう事半日。
確かに昼過ぎには大きな城下町が見えてきた。
「ティラ!」
あれか?ルビティラは俺に聞いて来た。
「姫さんアレがサイネリアか?」
「ええ、あそこよルビティラちゃん!向かって!」
「ティラ!」
わかった!ルビティラは言われた通り向かった。
検問がある為、俺達は駄々をこねるベルと宝石獣達を宥めて留守番させ。
7人でサイネリア国に入国した。
サイネリアはいかにも魔法使いって感じの人達が沢山いた。
辺りには梟や蝙蝠に黒猫がいたり。
箒が売っていたり、動くお菓子があったりとまるでかの有名な魔法使いの世界だ。
ただ、違うのは杖の持ち手に人口の宝石が取り付けられている点だな。
「しかし、どうやって賢者を探すんだよ?」
「確かに魔宝族だらけで誰が誰だか?」
「とんがり帽子だらけだしな…」
本当にはたから見たら魔法使いだ。
「大丈夫よ。すぐ判るから!」
え?すぐ判る?
「あ、あの店よ!賢者様が良くいる店!」
ん?アクセサリーショップ?賢者って女なのか?だとしたら相当な婆さんかよ…
「賢者様とは女性なのですか?姫様?」
「ルーガル!ここでは普通にアリシアよ!バレたらマズイし」
確かに王都の姫様がぶらついてればな。
「失礼いたしましたアリシア…殿」
「ええ、マナリア様は女性よ!」
やっぱな…どんな婆さんだよ。
いくつになってもジャラジャラと…
「うわぁ!これ可愛い!!」
ん?やたらとキャピキャピした女の子がいるな?
その娘は綺麗な赤い髪にオレンジ色と黄色のオッドアイで胸もデカイ!いやデカすぎる!
際どい格好してて。歳は17〜8位か?
「あ!居たわ!」
え?何処だ?何処に賢者の婆さんが!?
アレ?でもそんな婆さんいや歳な女の人はどこにも居ないぞ。
「じゃあ、これを下さいっとと!」
女の子は何もない所で転んでしまう。
オイ…後ろのスカートが大胆にめくれてパンツ丸見えだぞ…
「イタタタ…いやーん見ないで〜」
慌てて隠す少女。しかしもう遅い。
「大丈夫ですか?」
「アリシアちゃん?」
少女はアリシアの名前を呼ぶ。
「姫…じゃなくてアリシア!その娘知ってるのか?」
まあ、アリシア姫も他国で友人くらいはいるか姫様だし。
「お久しぶりです賢者マナリア様!」
え?今何て言った??
「賢者マナリアって…婆さんだよな?」
「え、この人が先代の勇者で賢者のマナリア=セシリー様よ!」
え…
「「「「「「えぇぇぇぇぇーーーー!?」」」」」」
「ふぇ?貴方達はだあれ?」
ちょっと待て!!この女子高生みたいな若い娘が先代の勇者だって!?
何かの間違いでだろ絶対!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます