第6話 わたしがミイラ男だったころ

ミイラ男だったころ

身体は包帯を巻いてひっかけるための

ものでしかありませんでした


歩けば犬が吠え、親は子どもを隠します

皮膚が引き攣るのでよたよた、していると

見知らぬ人たちが不幸だ、不幸だと騒ぐ


そんなことは知らない

痛みと熱、痒み、この爛れた皮膚

さらにぐるぐると巻けば包帯はすべて

遮ってくれる殻、蛹になりたい


ひととせふたとせ待っても

羽化もしない

身体を捨てたくなって

墓を暴く盗人みたいな

手つきで

包帯をといていけば

そこには何もない


空っぽ、あぁ、みんな包帯をみていたのか

包帯が風にさらわれていくなかで

何もないのに熱と痛みと痒みが

生きている、と訴えていた

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