第7話 唯一の友だち

忘れ去られ、蔦が這い

色褪せくすみ、ねむったまま

死んでいく、そんな佇まい

そんな救いのような光景を

横目に朝夕を、行き帰る

遠くのタバコ屋の廃屋まえ

どんどんとカメラが引いて行き

エンドロールが遠く聴こえる

そんな空間にいたはずの

そんな物が国道沿線沿いに

移され、あまりにも綺麗に彩色されて

泣いていた


声を押し殺し

口を真一文字に引き結び

静かに泣いている


ポストが


夕陽に濡れて赤々と

泣いている、葉書の一枚も

一通の手紙も与えられず

無用の長物と化した姿を晒されて

一層、赤く、流れない涙に滲んで


***


初めて泣いたのは

いつだったろう?

多分、産まれたときだろう

なんで泣いていたのかは

わかるはずもない

まだ言葉を知らないから

叫んだのかもしれない

ただ言葉にならないものを

叫んだのかもしれない

もう、言葉にならない詩を

叫んだのかもしれない

産み落とされた苦しみを


***


あなたへの手紙を朝に夕に、書き殴り

そうして、なんとか、行き帰る


ポストは変わらず待っていて

腹を空かせて待っていて

銀の唇には蜘蛛の巣

それをゆっくり

ひき裂いて

手紙がなかへ、なかへと

舞い落ちて、虚ろを満たしていくと

わたしは軽やかな器になっていく

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