第3話 私の国
ここは私の国ではないから
わたしの言葉は通じません
何を言われているのか言っているのか
水の中で互いにぶくぶくしながら
ただただ息苦しくてしがみついてたから
爪は剥がれ肉も削げて皮膚のしたには
鱗がきらきら、いつの間にやら鰓呼吸
澱んだ海に棲むものになってしまいました
海面へ遠ざかっていくあなたは
とても正しい発音で話している
でもそこも私の国ではありません
さよなら、に
白紙の手紙だけ残して
さらに深く深くどこまで
いけばいいのでしょうか
あなたの言葉を創造して
あなたもわたしの言葉を
創造して背中合わせで
生活のふりをしていた
こしあんだとか
つぶあんだとか
そんなつまらなさ
泡になってきえて
私は私の国を編んで
たくさんの貝たちに
息を吹きこみ
痩せて尖った
剥き出しの骨は
魚たちが
密やかに啄み
段々と丸くなり
今ではもう優しい眼をした
鯨だって描けるのです
ここは私の国、わたしが
わたしの言葉で編んだみな底
歩き続けていつか陸へと戻る
陽の光が息を吐く場所で
こしあんを食べようが
粒あんを食べようが
自由なんだ
でも私はうぐいす餡が好きなんだよ
知ってた?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます