肝試しの約束
次の日ケントは朝早く起きた。昨日は何だかんだ言って寝たのは、深夜になってしまった。が、気分は爽快だった。外に出て井戸で顔を洗うと気持ち良かった。傍にあった石に腰かけると、改めて自分が居候しているハック宅を眺めた。決して豪華な家ではない。むしろぼろい。でも……ハックを見ている限りそんな風には感じられない。なぜなんだろう。そんな事を思いながら、しばらくぼおっとしていた。
家に戻るとハックはもう起きていてパンをかじっていた。目がほとんど開いて無かった。
「おはよ~」
ハックは、むにゃむにゃっとなにか言ったが聞きとれなかった。ハックは朝が弱いのだろう。パンでもむりやり口の中に流し込んでいる。ハックは目の前のテーブルを指差す。指差した先には、昨日の残りのおかずとパンが置いてあった。ケントも座ってパンをかじり始めた。しばらくするとハックは、あくびをかみころしながらしゃべり始めた。
「ふああ~眠い。ケント、元気だなあ。もう後十分したら出るから、戸じまりよろしく」
ハックは椅子から立ち上がって、服を着替え始めた。そして出かけて行ってしまった。ケントもパンを食べ戸締りをすると出かけた。
教室に着いた時、まだフーオ先生は来ていなかった。グレンもきていないようだった。三十分してから、フーオ先生が来た。
「みなさん、おはようございます。今日も、いつもの通り始めます」
フーオ先生は、ケントの前につかつかとやってきて教科書をくれた。
「ケント、頑張ってついてきて」
フーオ先生は、ケントに一言いうと、また前に行って皆に言った。
「分かっていると思うが、私の教えられるのは、音楽に対する姿勢だ。小手先の技術じゃない。どうしても分らない所があったら、まず自分で考えてみる。それから、聞きに来なさい」
フーオ先生は、七ページ目を開いて授業を始めた。
授業は二時間で終わった。初日の手応えは、まあまあだった。授業が終わって教科書諸々をかばんの中に詰め教室を出ようとすると、ロンと数人が駆け寄ってきた。
「ケント、一緒に帰ろうぜ」
ロン達はケントを囲んで話始めた。そのうち、話は、ひょんな事から、例の森の話になった。例の森とはケントとハックが釣りをしている最中に見た、フルートの音色が聞こえる森のことである。
「ケント、知っているか、この辺に幽霊の出る森があるんだぜ」
ケントは森の話を聞いて得意になって答えた。
「昨日、幽霊の吹くフルートを聞いてきたばかりなんだ」
セイルが「へえっ」って言う。ロンはしばらく考えている風に見えたがやがて口を開いた。
「それじゃあ、さあ。森を探検して見ないか」
「え~でも」
ケントは、渋った。一緒にいたセイルもうなずいた。
「セイル、怖いのか?」
マークがセイルに尋ねた。セイルは何も言わなかった。
「じゃあ決まりな。三日後の日曜日、夜十時、フーオ先生の家の前で集合」
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