ルートム記
流浪
序章
「今日からこなくていい。荷物をまとめなさい」
突然師匠に言われた。なんでですか? と問い返す。見込みがないからだ。そういうと、師匠は部屋を出て行ってしまった。ケントと呼ばれた金髪の少年の目からは、悔し涙が流れ落ちる。なんでいつも……こうなるのだろう。今回だってそうだ。師匠は、最初会った時には見込みがあると言ってくれた。途中まではうまくいっていた。それなのに……なんで最後はこんな結末になるのだろう。たまらなくなって部屋に戻って荷物を纏めると家を飛び出した。ある国での出来事である。この日はどんよりと厚い雲が、町を覆っていた。
半年後……
この森を訪れたのは春の盛りだった。母国に帰る途中だったが、どこをどう間違えたか、今どこにいるか分らない状況だった。途中までは小道があったが、いつのまにか道無き道を進んでいる。しかし、それは大したことではなかった。今まで三人の師匠に弟子入りしたが最後にはことごとく失望され、たまらなくなって逃げ出した。深い孤独感を味わいながら。ケントは、心に深い憂いを抱え、地図を片手に歩いて行く。森は、とても歩きにくかった。着ている服も泥だらけになってしまっている。しかし、もうどうでもよくなったケントはとぼとぼと歩き続けた。歩いていくうちに、背中にしょっている袋の中にある笛を思い出す。心にずきっと来るものがある。苦しかった。
「なにいってんだ。そんなの慣れっこじゃないか」
涙があふれ出てくる。涙を振り払い歩き続けた。
日が傾き始めた。この森もどんどん暗闇が迫ってきて視界が悪くなる。迷った……あせる。足早に歩くが、もうどこにいるか分らない。いつの間にか早足で森の中を進んでいく。(神様!)と祈りながら……。前方に光が見えた。藁にもすがる思いで突き進んでいく。光の先は草原だった。目の前には大きな町もあった。(助かった……)そう思ったケントは、緊張の糸が切れて倒れこんでしまった。
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