ホノカニウチヒカリテ
辺りは真っ暗……。
月が薄っすらと外の景色を映し出す。
一般病棟に移されてから、何日目だろうか……。
私は、6人部屋の窓側だった。
病院で1番苦しいのは、孤独だ。
孤独と言っても、私は人間関係ゼロの天涯孤独なので、どこで何をしていようが、この世に会話の相手とメールの相手は1人もいない……。
ただ、病院は、日病生活や刑務所より、遥かにツラい。
この部屋の連中とは、会話することもないし、運命共同体でもない。
ずっと他人のままだ。
しかも、こいつらの家族がお見舞いに来たりする。
そんな絵面を目の前で見せられるのは、天涯孤独の私には、とても耐えられない。
月を見ていると、いつ病院を脱出するか、現時点での請求金額はいくらか……などの現実から、少し離れることができる。
ただ、私を覆う孤独から逃れることはできない。
退院しても、この世には誰もいない。
家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで終わった1回きりの人生を、最初から違う形でやり直すことはできない。
もう、若くない。
生きる意味・気力・目的・希望は失われたまま、終わってしまった。
人生の終わりを認めたくはないけど、認めるしかない。
人間の力ではどうにもならないことだ。
月明かりって、意外と明るく、ハッキリと街の風景が見えるね。
私は、駅のすぐ近くにある病院に運ばれた。
今、すぐにでも外に出たい。
でも、夜の脱出はすぐにバレてしまう。
外は、とても静かだ。
人影も無い……。
脱出したところで、そこにも無限の孤独が広がっているだけ……。
明日の昼過ぎには、もう、ここにいないだろう。
誰もいない1回きりの人生が、これほどまでに残酷とはね……。
優しそうな月明かり……、少しだけ浴びてみようか。
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