瞬きほどの生命体
浴室の天井は真っ黒……。
壁も、浴槽以外は、半分くらい黒……。
『本当の孤独』が原因で人生に絶望してからは、掃除なんかしていない。
それでも入浴は心地の良いものだ。
お湯に浸かりながら天井を見上げる。
一面に繁殖しているカビを見て、いろいろ考える。
人類の歴史なんて、せいぜい数千年……
カビは5億年とも10億年とも言われている。
そんな地球の大先輩に見られながら、浴槽に浸かる。
あっという間に死んでいく私という人間を見ながら、彼らは何を想うのだろう?
彼らは雑草と同様『精神的に強い』という比喩に用いられる。
まぁ、私の人生経験では、そういう比喩を用いる奴の見識は浅いけど……。
私は、身体的にも精神的にも、重い症状だ。
突然、倒れたり、意識を失うことがあるからね。
記憶も抜け落ちる。
トイレに行くまでの気力が無く、排泄物垂れ流し生活が続いたこともある。
この状態で天涯孤独なのだから、たまらない。
浴槽の排水口は、いつも手で押さえている。
詮をしてしまうと、意識を失ったとき、すぐに溺死してしまうからね。
そんな醜いことをしてまで生きようとしている私の姿をカビたちに見られるのは、ちょっと恥ずかしい……。
彼らにしてみれば、私の一生なんて、瞬きをしている間に終わっているからね。
『本当の孤独』と嘆いているわりには、なんだかんだで、ダニやカビという生物と同居してるんだよね……。
もし、会話ができたら、私の理解者になってくれただろうか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。