今が永遠に続けばいいのに……
今が永遠に続けばいいのに……。
『今』という言葉は、数秒後には『さっき・先ほど』になる。
日付をまたぐと『昨日』、月をまたぐと『先月』、年を越すと『去年・昨年』となる。
残念ながら、あのときの『今』は、いつしか20年前、30年前の出来事になっている。
今が永遠に続けばいいのに……。
この言葉は、一般的には今が幸せの絶頂期であることを示している。
同時に、その幸せは不確定要素が犇めく未来では、継続しない可能性が高いという背景も映し出している。
今が永遠に続けばいいのに……。
私もこの言葉を使ったことがある。
だけど……、その言葉に潜む背景が、一般的なものとはちょっと違うんだ。
なぜなら、幸せというものを味わったことがないから……。
私の場合、「幸せが続いてほしい」ではなく、「可能性のある時間が続いてほしい」である。
可能性は加齢とともに消滅していく。
友人を作れる可能性……。
将来設計・人生設計を立てられる可能性……。
デートができる可能性……。
セックスができる可能性……。
恋人を作れる可能性……。
結婚できる可能性……。
子供を作れる可能性……。
大半の人間が、可能性のある時間、すなわち、若い時間にそれらを叶えることができている。
そして、その時間でしか味わえない幸せを手に入れている。
今が永遠に続けばいいのに……。
私にとってその言葉は、焦燥感そのものであった。
幸せになれないことくらい、小学生のときにはもうわかっていたけど……。
ただ、同年代の幸せと成長を、目の前で見ているだけ……というのは、本当にツラかった。
今しかできないことが、今、できなかった。
時間は待ってくれなかった。
情け容赦なく過ぎていった。
せめて可能性のある時間が少しでも長く続いて、希望を持ち続けたいと願った。
明るく煌びやかに輝く同年代たちの姿を見ながら、想像の世界で疑似恋愛をし、それに満足している自分が嫌で嫌でたまらなかった。
可能性のある時間に私の能力が原因でそれが叶わないのと、可能性そのものが無くなってしまうのとでは意味が違う。
このまま可能性が無くなったら絶望するだろうな……。
この時間に、少しでも長く留まり続けたい……。
今が永遠に続けばいいのに……。
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