恋愛の神様を演じて

2人は知らない。

それが導かれたものであるということを……。

偶然じゃないんだよ。

君たちは、その事実に死ぬまで気づくことはない。


あのとき、私は店長という立場でアルバイトのシフトを作っていた。

社員だけでも5~6人居たので、規模の大きい店だった。

パート・アルバイトまで入れてしまうと60人近くになった。

募集をかけて、面接をして、雇うか雇わないかの判断も私の仕事だった。

バイトの応募に来る若い子は、「週3回で……」という大雑把な感じで言ってくる子が多かった。

当時、どの時間帯に、どの性別の、どんな性格の奴が働いているか……、当然、私は把握しているので、それを考慮した上で採用するかどうかを決めることになる。

ある意味、チームプレイなので、人間的に合うか合わないかは非常に重要である。

店長によっては、何も考えずに雇う奴もいれば、私みたいに合わないと思ったら片っ端から不採用にする奴もいる。

私は、対人間に関しては、かなり慎重な方だった。


恋愛の神様は、すでに採用の段階で発動している。

10代後半や20代前半の学生が、バイト先で恋に落ちるなんてことはよくあること……。

私の場合、シフトを作るとき、この子とこの子は合いそうだ、ひょっとしたら恋に落ちるかも……、という期待を込めつつ、同じ曜日の同じ時間帯の同じ売場の同じレジカウンターで配置してみる。

先輩バイトと新人バイトという形でね。

すると、どうだろう。

私の思った通り、数か月後には恋に落ちているじゃないか……。

そうやって、少なくとも10組以上の恋愛を成立させてきた。

のちに結婚して子供が生まれた奴もいる。

私が裏で糸を引かなければ、2人は出会っていない……。

当時、楽しそうに仕事をしている2人の姿を、時折、遠くから眺めていた。


それから数年後、私の人生は完全に壊れてしまった。

恋愛の神様を演じた私が、のちに、本当の恋愛の神様に殺されるという、何とも皮肉な現実にさらされることになったね。

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