生きたまま棺に入れられて

ここは地中だ。

地面から3メートル下である。

生きたまま棺に入れられて、地中に埋葬されてしまった。

閉所恐怖症の人からすれば、その究極の形態とでも言うべきか……。

こういう夢はよく見る。

ただ、実生活でこういう事態に陥る人はほとんどいないだろう。


あのときのことを思い出す。

貯金が無くなるまで、部屋の中に籠りきり……。

彼女1人作れないどころか、デート経験やセックス経験も無いまま、この世を去らなければならないという現実を前に、生きる意味・気力・目的・希望を失ってしまった。

仕事を辞めてしばらくしたら、身体が動かなくなり、精神も崩壊していった。

この世に頼れる人間など、どこにもいない。

会話の相手やメールの相手すらいない。

床に一日中寝たきりの状態で、排泄物垂れ流し生活をしていた。

まぁ、当たり前のように家族がいて、当たり前のように住む家があって……という人生の人には、そんな奴は、ゴミにしか映らないのだろうけど……。


きっと、生きたまま棺に入れられて、そのまま埋葬されたら、当時の私と同じ状況に陥るのだろう。

棺を中から叩いても、出られない。

棺の中から助けを求めても、誰にも聞こえない。

排泄はその場でしなければならないし、食料を調達しようにも身体が動かない。

私は夢じゃなくて人生経験として、それに似た疑似体験が記憶に残っている。


私の1回きりの人生とは、何だったのだろうか……。

生きたまま棺に入ると、そればかりが頭を駆け巡っていた気がする。

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