漫画の内容と記憶がリンクする(メルエムとコムギの姿が私を精神破壊の世界へいざなう)

私は、大手カー用品店の待合室にいた。

ユーザー車検の待ち時間を、そこで過ごしていた。

予約していたけど、混んでいて、時間がかかるらしい。

私はこの世に会話の相手とメールの相手がいないので、スマホをいじっても長い時間は潰せないので、棚に置いてある漫画の単行本を読むことにした。


「HUNTER×HUNTER」を読み始めてから、数時間が過ぎた。

あるシーンで、突然、私の過去の記憶と重なった。

覚えていないはずの中学生のときの記憶が、鮮明に映し出された。

中学生のとき、何か1つ、クラブに入らなければならなかった。

それは部活動と違って、時間割の中に組み込まれているものだった。

いくつか希望を書いたものの、通らず、将棋クラブに強制加入させられた。

そこで1人の天才と出会った。


当時は体育会系の部活動に限らず、普通の授業でも先生が殴る蹴るなんて当たり前の時代だった。

おまけに個人情報保護やプライバシーなんて存在していなかった。

同学年の全生徒のテストの結果が1位から最下位まで、壁に張り出されていた。

内容は、氏名・〇年〇組・総合順位とその点数、各科目の順位とその点数だった。

当時は学校の数が少ないわりには生徒数が多かったため、同学年は約500人いた。

私の成績は、500人中400~450位くらい。

それでも家族崩壊するまでの総合成績は4位~8位だった……、12クラスあったので単純に割ると、当初はクラス1位の成績だった。

ここで目を引いたのは、毎回のように総合順位で1位を取る奴の名前とその点数だった。

バケモンだった。

高校と違って、小学校や中学校では天才からアホまで、全ての人がそろっている。

ただ単に、同じ学区に住んでいるというだけだからね。


すでにぶっ壊れてアホになっていた私が、この将棋クラブで、その天才と対局することになった。

この天才は、当然、負けたことが無い。

私と対局する前、この天才の友達が「彼は凄い奴だ」と持ち上げていた。

そりゃそうだろう、頭脳が違うんだから……。

だけど、こいつは……。

私に負けた。

大きなショックを受けている様子だった。

以後、何度やっても私に勝てず……。


そんなくだりが「HUNTER×HUNTER」読んでいたら出てきたわ。

だから、思い出したのだろうけど……。

「もう一回……」というセリフも漫画の内容と一緒だった。

あのとき成績上位だった奴らはフェイスブックで調べると、議員や大学教授をやっている。

そいつの名前は名字しか覚えていないので検索できないが、おそらく、それ相応の社会的地位で生きているのだろう。

あの時代のことは、あまり思い出したくない。

精神が不安定になるから……。

案の定、精神が不安定になった。

車検終了のアナウンスがかかってからも、私はただ、ボーッとそこに座っていた。

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