リピート(勾留施設でヤクザの兄ちゃんが放った言葉)

最近、やたらと脳内で再生される言葉がある。

それは、私が勾留施設にいたときに、ヤクザの兄ちゃんが放った言葉だ。

こいつの言葉がエンドレスで再生される。


確か、朝の体操の時間(体操の時間と言っても、実際には看守(留置課の警察官)も混じっておしゃべりをしていただけだった……)に、この年下のヤクザは、自慢げに「俺、自動車窃盗を繰り返して、この前、5年食らったわ」とか、「嫁と連絡取れんくなった……」とか言って、やたらと目立つ奴だった。

また同じことをやって、今度はそれ以上の刑を食らう予定らしい……。


こいつの判決の日、裁判所(刑務所)に移送されるときに、私たちとお別れとなった。

手錠をかけられ、両脇は看守にガードされた状態で、連れて行かれた。

勾留施設から出るための扉が開く瞬間、こいつは振り向いた。


「みんな!絶対、負けんじゃねーぞ!負けんじゃねーぞ!」


アホみたいに怒鳴り散らして、扉の向こうに消えて行った。

このとき、私も含めて各牢屋の中にいた容疑者たちが、一斉に拍手喝采を行なった。


最近、こいつの言葉と、あの情景がやたらと再生される。

それに、妙に励まされているような感覚にもなる。

不思議だ。

だからモテるんだろうな、ヤクザの兄ちゃんは……。

随分前、建築関係の日雇いに行ったとき、解散した元ヤクザの兄ちゃんたちがいっぱい来ていたけど……、やっぱり、あいつと同じ匂いがする。

ああいう人間に生まれたかったな……、というのが本音だね。

気弱で、24時間、365日廃人の私には、ああいう強い生命力がほしかった。


「負けんじゃねーぞ!」


今も頭の中で響いている。

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