秋雨に打たれて
街は知らぬ間に色褪せていく。
雨の日、半袖ではもう寒い。
深夜や早朝も、半袖ではもう寒い。
今日は雨が降っている。
季節が巡るたびに離れていくのは、若い時間だけではない。
私が生きる天涯孤独の世界から、みんなが生きている世界が見えなくなっていく。
若い頃、世界観の違いはそれほど感じなかったけど……。
それだけじゃない……、この天涯孤独の世界ですら、徐々に領域が狭くなっている。
「幸せを味わったことがない」
私のつぶやきが向こうの世界に届くと、いつも同じ言葉が返ってくる。
「私も同じだ」と……。
(冗談じゃない!)と、不幸の背比べには付き合わず、人間関係を強制終了させる。
今年の秋は、すぐに終わりそうだ。
雨音からは、寒さが伝わってくる。
雨は季節を先取りして、気温を一気に下げる。
秋雨は、春の訪れを告げる3月までの、長いトンネルを暗示する。
毎日毎日1分1秒単位で、人生を考えている。
家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで終わった1回きりの人生……。
生涯、誰とも出会えない……。
何の手段も無かった……、何のための1回きりの人生だったのか……。
同年代たちは、いったいどんな秋を迎えているのだろう……、どんな冬を迎えるのだろう……。
『極限の孤独』『生きた証』『周りの幸せ』が雨音とともに、頭の中をめまぐるしく……。
もう、この歳になると、一部の同年代たちが、次々と他界している。
同年代たちは、すでにパパやママになっており、間もなく、ジジとババになる。
私は天涯孤独の世界で、誰とも繋がれない人生を送りつつ……、ただ、秋雨に打たれている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。