透明

ポツリポツリと見えていた人影が、1人……、また1人と……、見えなくなっていく。

小学生のときには、あんなにたくさんの人影が見えていたのに……。

これが、独りで生きてきたという証だ。

私の人生の軌跡だ。


長い年月をかけて、1人、また1人と、人影が消えていった。

この年齢までくると、もう、何も見えない。

世の中の人は、きっと、「歳を重ねると、人間関係は、減ることはあっても増えることはない」と思っているだろうし、「そんなのは誰もが同じだよ」と言いたいのかもしれないけど、私は人間関係の話をしているのではない。

人影の話をしているんだよ。


今、私からは何も見えないし、人間社会からは私が見えない。

昔、人影が見えていた頃は、なぜか、人の輪の中にいるような感覚だったんだよ。

それが無くなってしまった。

人間関係は、最初から最後まで存在しない。

人影という、かすかに残る人の匂いすら、私には見えなくなってしまったということが言いたいんだよ。

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