抗弁
そうだ、お前の言う通りだ。
私は、何を言っているんだ?
そうだ、お前の言う通りだ。
その通りだ。
「刑務所に入ったのは、あなたが悪いことをしたからじゃないの?悪いことをしなければいいだけじゃない!」
そうだ、その通りだ。
突然、金づちで頭を殴られた感覚だった。
何か、麻痺していた。
麻痺というのは、他人と自分とでは生きている世界が全く違うのに、感情任せに、自分の感覚で言い放ってしまったことを指している。
他人に、自分の人生は、これこれこうだからこうなんだ、と説明しても意味はない。
「お前だって、私と同じ家に生まれ、同じ外見・性格・身体的能力・知能指数(IQ)を持ち、同じ環境で育ったのなら、同じ運命をたどっていたはずだ」と反論しても意味はない。
私の人生では、犯罪は必然だった。
家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで、1回きりの人生が終わってしまった。
生きる意味・気力・目的・希望は、全て失われた。
自暴自棄になった。
善悪の区別がつかなくなって、壊れていく自分を止められなかった。
『本当の孤独』に陥って破滅した人間の気持ちなんて……、他人にわかるわけがない。
それなのに、不可抗力という言葉を盾に、心の中で抗弁してしまった。
感情に任せて言い放ってしまった。
そうなんだ。
お前の言う通りだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。