まだ、若いだろ……

「まだ、若いだろ……」

年上の人間に、そう言われた経験は誰にでもあるだろう。

私も若い頃に言われたことがある。

こういう事を言ってくる被害妄想者は大嫌いだ。


いちいち言い返さないけど……、もし、言い返すとしたら……。

「じゃあ、お前は、私と同じ年齢のときに、家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしという状況だったのか?この世に会話の相手とメールの相手が1人もいない天涯孤独だったのか?デートやセックスを1度も経験できずに終わったのか?路上生活を何年していたのか?精神病院に強制収容されたことはあるのか?逮捕収監歴はあるのか?『若い』という理由だけで、どうにかなるのなら、こんな人生、送ってねえわ、ボケェ!お前、団塊世代だろ?一番どうにでもなった時代じゃねえか、ボケクソ野郎が!私と同じ天涯孤独でも、その時代は、東京に行けばどうにでもなっただろうが……。兄弟はたくさんいるし、高度経済成長期が背中を押して、誰もが出世できて、誰もが家を買えて、誰もが結婚できて、誰もが子供2人いて……、しかも、その時代は、私の半分の仕事量で、何倍もの給料をもらっていたはず……、そのくせ、家では偉そうに『俺は苦労して生きてきた……』とぬかしよる。天国じゃねえか、クソジジイが。今は、お前の時代と天と地くらい違うんじゃ、ボケが!戦後生まれのボンボン世代が、私に向かって偉そうな口を聞くなバーカ!お前も、戦争に行った世代の人から見たら、まだ若いだろ!クソ野郎が……」


若さに羨ましさを感じるのは、人間なら誰だって同じだが、もう一度、そのときに戻りたいか?と言ったら、話は別だ。

おそらく、こんな薄っぺらい事を言ってくる奴は、若い頃に戻れるものなら戻りたいと思っているのだろう。

私は、生まれ変わりたいと思うことはあっても、若い頃に戻りたいと思ったことはない。

若い頃に戻ったところで、再び、同じ苦しみを繰り返すだけ……。

生まれる前からやり直さないと何も変わらない。


戦後生まれのボンボン世代が、私の世代を『若い』という理由だけで羨ましく思う暇があったら、自分が恵まれた時代に生まれたという事実に感謝して、幸せな顔をして、さっさと死ねや、バーカ!私の世代に被害妄想を振りまくな、ボケが!


私は、今、社会と繋がっている。

未熟で人生経験の足りない若い人たちの「死にたい」とか「苦しい」という言動には、思わず「まだ、若いだろ……」と言いたくなる場面がある。

だけど、私が若い頃に言われて言い返そうとした言葉を心に抱かれるだけなので、何も言わない!

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