ただ、見ていただけ……
高校生のとき、名古屋港のショップでアルバイトをしていた。
当時、好きな人がいた。
もちろん、片想いで、話しかけるどころか、目すら、まともに合わせたことはないけど……。
あるとき、その人は、体育会系の彼氏と一緒に、名古屋港に遊びに来ていた。
田舎だと、デートスポットやショッピングモールなんかに出かけると、すぐに知っている奴とすれ違ったりするけど、ここは名古屋だからね、知っている奴と会うなんて、偶然なんてレベルじゃない!
しかも、結構、至近距離で、すれ違ってしまった。
南極観測船ふじが停泊している近くの広場だったと思う。
向こうは気づいていなかったみたいだけど……。
まだ、社会との接点が少なかった私は、アルバイトをして自分の力で稼いでいることに、優越感があって、自信にもなっていたけど……、あの2人を見たとき、そんなの何の自慢にもならないなって思った。
あの笑顔の2人を……。
離れていく笑顔の2人を……。
私は、敗北者というレッテルを貼りつけられた衝撃に心拍数を壊されたまま、ただ呆然と……、見ていただけだった。
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