眠るように死にたい
誕生日が近づいてきた。
もう、これ以上、歳を重ねる意味はない。
家族なし、友人なし、恋人なし、結婚なし、子供なしで1回きりの人生は終わってしまった。
この世に、会話の相手とメールの相手はいない。
この30年間、仕事と拘禁施設以外で誰かと過ごしたり会話したりした時間の合計、全部足しても24時間いかない。
ここまで誰も殺さずに、自殺もせずに、生きてきたことが奇跡だと思う。
残念ながら服役はした。
でも、死刑や無期懲役ではない。
残念ながら自殺も図った。
でも、障害者止まりで死んでない。
家族主義国家日本で1人で生き抜くには、よほどの才能と、運がないと無理だ。
私には、どちらも無かった。
家族主義国家日本では、家族以外は、全員、敵という扱いになる。
路上生活をしていたから、それがわかる。
声をかけてきたのは外国人だけだった。
10代から死ぬまで独りなんて、ほぼ全ての日本人が経験しないこと……。
どれほど生きていけないか、どれほど残酷か、教えてやりたいくらいだわ。
理解者を探すのは絶対に不可能で、言葉が通じる人すらいない。
日本人は恵まれ過ぎていて、煩わしい人間関係を理由に、独りになりだかるクソガキばかり。
しかも、それは、本当の独りではないし……。
誰か一人でも、私の傍にいたら、人生は天と地がひっくり返るくらい違っていた。
その一人の存在が、全てだった。
出会えない運命と人生が死ぬほど悔しい。
命懸けで探しても、この日本には誰もいない。
家族主義国家日本では、家族観を失った私と出会える人はいなかった。
生涯の孤独が絶対的に確定したと確信したとき、私は、生きる意味・気力・目的・希望が無くなってしまった。
そこから自暴自棄の世界に突入した。
逮捕勾留・転落事故長期入院(自死行為)・精神病棟・路上生活・ホームレス収容施設と一周した。
もう、何もかもがどうでもよくなった。
日本人は自分さえ良ければ他人がどうなろうが知ったこっちゃない民族だ。
恵まれた環境でヌクヌクと生きてきた被害妄想者と、不幸の背比べをして意地でも勝とうとしたがるクソガキしかいない。
家族観の無い私には、無関心という言葉が、この国を覆っているよう思えた。
3ケタごえの大量殺人でもしない限り、彼らが私に興味を示すことは無いだろう。
練炭は、車に積んである。
睡眠薬は充分にある。
もう、いいんだ……。
疲れ果てた。
眠るように安らかに死にたい。
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