第5話 27thの途中の続きから
〇藤堂周子
プレシズの翌日…あたしは、そのニュースを聞きつけて、カプリに行った。
あの大イベントで多くの音楽事務所から高い評価を得た日本人女性シンガーが、権利を放棄したニュースは、音楽業界にいる者なら…誰しも興味が湧いたはず。
そのおかげでか、カプリは大盛況だった。
「……」
ステージにいるあの小娘は…輝いていた。
憎らしいほどに。
「Deep Redのニッキーの彼女だってさ。」
「バックが強いからプレシズに出れたんだろうって、嫌がらせ受けたらしいけど…本物だよなあ。」
周りの声を拾えば拾うほど…苛立った。
どうして?
これぐらいの歌唱力、掃いて捨てるほどいるじゃない。
「笑顔がいいんだよな。」
「今の髪型、キュートだなあ。」
男性客は…小娘に夢中になっている。
…どこがいいの?
あんな…色気もない、まだ女として成長もしていないような小娘の…
…小娘は…
あたしを覚えているだろうか。
そして…
夏希は、あたしと瞳の事を…小娘に話しているだろうか。
あたしは瞳を膝に座らせて、小娘から見える位置でステージを見入った。
笑顔を振りまいている小娘の視線が…
あたしに止まった後…少し、音程が外れた。
…どうやら、知っているようね…
その日のステージ後、しばらく待ってみたけれど…小娘に会う事はなかった。
それからあたしは…毎日、カプリに通った。
かたときも、小娘から目を離さなかった。
あたしは…幸せになりたかった。
夏希は結婚願望はない。と言った。
結婚できないなら…せめて、子供だけは…と思ったけど。
夏希は、子供も要らないと言った。
…それなら…あたしは…夏希の血を分けた娘を産むことで…自分を幸せにしようと思った。
だけど…
あたしの中の女は、それだけでは満足しなかった。
夏希が欲しい。
別れたのに…夏希の事を忘れるのは、容易じゃなかった。
あたしを支えてくれていたジェフは去り、いい加減夏希の呪縛から解き放たれようと決意して、結婚を決めたマシューは事故で亡くなってしまった。
…あたしは、とことん幸せから見放された女だ。
もう、それでもいい。
だけど、瞳は…
瞳だけは、幸せにしてやりたい。
…小娘が憎かった。
殺したいほど…憎かった。
そして、あたしはついに…カプリのステージの後、コソコソと逃げ帰ろうとしている小娘を捕まえた。
「さくら…さん?」
あたしに声をかけられた小娘は、怯えた顔で振り返った。
「…あ…」
「どうも。何度目かしら…お久しぶりね。」
「…こんにちは。」
「…見て。可愛いでしょ。娘の瞳。」
「……」
瞳は、満面の笑みを小娘に向ける。
「聞いてるんでしょ…夏希の娘よ。」
「…はい…」
「…どうして、そんなに怯えてるの?あたし、あなたを取って食べたりしないわよ?」
「……」
小娘は、ずっとうつむいている。
「…ねえ、ちょっとこの子任せていいかしら?」
「えっ?」
「ここのケーキ美味しいから、買って帰ろうと思って。じゃ、任せたわよ。」
そう言って、あたしは瞳を小娘に押し付けた。
「あっ、あの…」
小娘の声を聞こえないフリして、あたしはカプリに戻る。
夏希に似た目元を見て、どう思うかしら。
…怯えればいい。
あたしが味わった屈辱を…味わえばいい。
ケーキをいくつか買って、ゆっくりと小娘の所に戻ると…
「ふふっ…可愛い…」
「……」
小娘は…瞳と手を繋いで、はしゃいでいた。
「…お待たせ。ありがとう。」
「あ…いえ…」
「もう…あなたの大ファンなのよ?ランチより、あなたの歌が大好物。」
「それは…嬉しいです…」
「…夏希とは?結婚するって聞いてたけど、式はいつ挙げるの?」
瞳の服を直しながら、さりげなく問いかけると。
「あ…彼、そんな事話してたんですか?」
「ええ。結婚願望なかったけど、あなたとは結婚したくなったって。」
「……」
小娘はバツの悪そうな顔をしたものの…少しだけ頬を赤らめた。
結婚するつもりだとは聞いたけど、さりげなく事務所の人間に聞いたところ…夏希はまだ結婚していなかった。
それなら…
まだ、止められる。
「…月末に…休みを取って、旅行するんです。」
小娘が、幸せそうな顔で言った。
「まあ…素敵。どこへ?」
「…イギリスへ…」
「…もしかして、夏希の生まれ故郷?」
「はい…」
ギリギリと…
胸の中で、何かが音を立てた。
憎い。
この子が憎い。
「素敵ね…そこで式を挙げるのね。夏希もようやく、落ち着く気になったのね。」
「…ありがとうございます。」
「明日も来るわ。あなたのステージ、とても楽しみだから。」
「……嬉しいです。ありがとうございます。」
小娘と、手を振り合った。
瞳の笑顔に、小娘も笑顔になって…
…小娘は、あたしに心を開きかけた。
…壊してやる。
何もかも。
〇森崎さくら
プレシズに出て以降、お客さんが増えた。
カプリは大盛況で、オーナーもホクホク顔。
あたしは…なんていうか…
ちゃんと歌を聴いてくれてる人が、何人ぐらい居るんだろう…って。
そっちのが、ちょっと気になった。
あ。
客席に目をやると、周子さんと瞳ちゃん。
瞳ちゃんは、手を振ってくれてる。
…周子さんが来てる。
それに気付いた時、あたしは固まった。
ベビーカーには…なっちゃんの…子供。
会いたくなかった。
だから、あの日はステージが終わると逃げるように帰った。
だけど…三日後。
周子さんに声を掛けられた。
可愛い瞳ちゃんは…あたしを見て、笑顔になった。
…なっちゃんの、子供…って思うと、胸が締め付けられるけど…
瞳ちゃんには罪はないし…
周子さんだって…もう、別れてるわけだし…
こんな狭い街じゃ、どうしても会っちゃうし…
それなら、コソコソせずに…こうやって、堂々と会う関係の方が、なっちゃんだって気を使わないかもしれない。
…とは言っても…
あたし、周子さんがカプリに来てること…
なっちゃんには言えてないんだよね…
何となく…言えない。
…ちゃんと結婚して、落ち着いたら…言おうかな。
周子さんは、なんて言うか…
品のある人で。
声をかけてくれて以来、ずっとニコニコしながら歌を聴いてくれてる。
…なっちゃんより、一つ年上。
歳の離れたお姉さん…って感じ?
リクエストもしてくれて、あたしは久しぶりに周子さんが作った恋の歌を歌った。
うん…やっぱりこの曲って可愛い。
あたしの気持ちにも合ってるし、これを歌うと気分が晴れる。
「さくらちゃん。」
ステージが終わって、着替えて客席に行くと。
周子さんがケーキセットを用意してくれてた。
「わあ、ありがとうございます。」
「あたしの曲を歌ってくれたお礼。」
「あの歌、大好きなんです。」
「ほんと?」
「はい。すごく…歌詞の世界に入りやすいって言うか…」
「…それは、あなたが恋してるからね。」
周子さんを見ると…すごく柔らかい笑顔。
…この人…本当に素敵な人だな…
「あ…瞳ちゃん、寝ちゃいましたね。」
ベビーカーで眠ってる瞳ちゃんを見ながら、コーヒーをいただく。
「ええ。『Time After Time』が子守唄になったみたい。」
「あ~しまったなあ~。」
二階堂には、女性が少なくて。
ましてや、こんな風にお茶する習慣もないから…何だか楽しい。
ミシェルやサマンサとお茶する感じとも、また違う…
落ち着いた雰囲気で、本当…なんて言うか…
安心しちゃうな…
なんでだろ…
「髪の毛にクリームがつきそう。」
周子さんが、あたしの髪を耳にかけてくれた。
「……」
「何?」
「あ…こんな事…言うのもおかしいかもしれませんが…」
「ん?」
「周子さんって…なっちゃんと似てるんですね…」
「…え?」
どうして安心するのかと思ったら…
この雰囲気…。
なっちゃんだ。
「なんか…一緒にいて、安心できるって言うか…」
「……」
周子さんは黙ってあたしを見てたけど。
「…あたし、一人っ子でね。」
小さく笑いながら言った。
「親は…あたしが小さい頃に亡くなったし、育ててくれた叔母も、若くして亡くなって…だから、そういう環境のせいでかな。夏希とは、似た所があったかもしれないわね。」
「……」
「妹がいたら、こんな感じなのかしらね。」
そう言って笑った周子さんは…すごく素敵で。
もし…
この人が今もなっちゃんを好きだとしたら、かなわないって思った。
「もうすぐね。結婚式。」
「はい。」
「帰ったら、写真見せてくれる?」
「…お土産も。」
「まあ、嬉しい。」
ヒロとは家族みたいだったけど、こんな風な明るい楽しさはなかった。
…あたし、こんなに幸せでいいのかな…?
何だか…怖いな…。
〇藤堂周子
「スー?」
家の前のベンチで、ボンヤリと日向ぼっこをしていると、一台の車が停まった。
そして、そこから降りて来たのは…
「ジェフ…久しぶりね。」
「元気か?」
「ええ。」
瞳は芝生に座って、ぬいぐるみと積み木で遊んでいる。
「大きくなった。」
「おかげさまで。」
ジェフはあたしの隣に座ると。
「…聞いたよ…」
低い声で言った。
「何?」
「恋人は…残念だったね…」
「……」
そうか…
ジェフは、この家を買った時に一緒にいたし…
マシューの事も知ってる。
「あなたは?結婚したの?」
「いや、仕事が面白くてさ…先方に断られた。」
「まあ。将来有望な人を。もったいないわね。」
笑いながら、髪の毛を後ろにおいやる。
ああ…何だろう…
今日は気分がいい。
カプリで歌を聴いて帰ると…最近は、あたし自身…歌を口ずさむ事が増えた。
瞳はそれを聴いて体を揺らして。
あたしはそれを見て、笑顔になる。
…悪い子じゃない。
むしろ…すごくいい子だと思った。
あたしの事を、姉のように慕ってくれる。
無防備で…無邪気で…
あたしにはない明るさがある。
…悔しいけど、夏希があの子を選んだのが分かる気がする。
あの子は、春の…温かな陽射しのような子だ。
誰にでも同じように温もりを分け与える。
なっちゃんが…なんて。
夏希の事、あんな風に呼べる子は、きっとあの子だけ。
…あんなに憎かったのに。
壊してやる。と強く思っていたのに。
あたしは…あの子に会うたびに、笑顔になってる自分に気付いた。
作り笑いじゃない。
瞳とあの子の笑顔に…自然と自分も笑顔になっていた。
…このまま…
優しい気持ちのままでいられたら…
あたしも、救われるのかもしれない。
だって、あの子には罪はない。
あの子を選んだのは夏希。
不思議と…今、悔しくない…
「スー。」
「ん?」
「俺達…一緒に暮らさないか?」
「……」
隣にいるジェフの顔を見る。
ジェフの視線は…瞳。
「他の女性と食事したりして…やっぱり違うなって思った。俺が求めてるのは、結婚相手じゃなくて…仕事の面でも向き合えるパートナーでいられる女性だって。」
「…ジェフ…」
「結婚して欲しい…と言いたくないわけじゃないが…それは焦らない。母にせがまれての結婚なんて、上手くいかないだろうしな。」
「……」
優しい風が吹いて。
瞳の前髪が揺れる。
そうね…
このまま…ジェフと瞳と…三人で幸せになれたら…
どんなに…
あたしは…
どんなに、幸せになれただろう。
〇森崎さくら
「やあ、シェリー。今日のステージも良かったよ。」
「ありがとう。」
「旅行は明後日からだったかな?」
「はい。」
「じゃ、明日は独身最後のステージか。楽しみにしてるよ。」
「ありがとう。さよなら。」
カプリでのステージを終えて、あたしは外に出る。
今日はいくつか買い物をして、帰ったら荷造りをちゃんとしなきゃ。
なっちゃんは何日も前からトランクに荷物を詰めて、ああ、あれは使うんだった!!なんて言って、また出して…
もう。
子供みたいなんだから。
ふふっ。
「しゃー。」
「あ。」
可愛い声に振り向くと、瞳ちゃんがいた。
「あーっ、もしかして今、あたしを呼んでくれたの?」
「そうみたい。」
周子さんは、大きなサングラスを頭に乗せて…カッコいいなあ…
「ねえ、良かったら、ちょっとうちに来ない?」
「え…?」
「遅くならないように送るから。」
「あ…でも…」
「紹介したい人がいるの。」
「え?」
あたしは、丸い目をしたと思う。
あたしに…紹介したい人?
「Deep Redがこっちに来た時にね…プロデューサーをしてたんだけど。ジェフっていって、あたしの元旦那さん。」
「元…旦那さん…?」
「ええ。また一緒に暮らそうと思って…」
「えっ…」
あたしは、笑顔になったと思う。
それは…本当は、醜い気持ちだったかもしれない。
これで…周子さんとなっちゃんの事、気にしなくて良くなる…って。
「おめでとうございます。」
「それで、今ケーキを買いに来たの。ステージに間に合わなくて残念だったわ。」
「そうですか…じゃあ、少しだけお邪魔しちゃおうかな。」
周子さんの車に乗って。
瞳ちゃんと、あー、とか、さー、とか言い合いながら。
到着したのは、小さな家の前だった。
「わあ…素敵…」
白い壁。
庭に芝生と、大きな木。
小さなベンチと、木馬がある。
「さ、入って。」
「お邪魔します…」
「やあ、いらっしゃい。」
「あ、こんちには…さく…シェリーです。」
「ジェフです。ようこそ。」
握手をして。
ケーキを食べて…
穏やかで、楽しい時間だった。
周子さんて、本当にお姉さんみたいだって思った。
「ほら、瞳。さくらちゃんに『どうぞ』して?」
瞳ちゃんが、あたしに小さな包みをくれた。
「うわあ、瞳ちゃん、ありがとう。何かな?」
ほんと…
瞳ちゃん、すごく可愛い。
…目元は…なっちゃんに似てるけど…
全体的に、周子さんに似てて。
将来は絶対美人だって思う。
…正直…
こんなに可愛い子供を見てしまったら…
あたしだって、なっちゃんとの子供…
欲しいって思っちゃう…
この様子だと…
いつか周子さんに、相談できる日がくるかな…?
「開けてみて?」
周子さんに言われて、瞳ちゃんに手渡された小さな包みを開くと…
「リボン?」
包みの中には、小さな青いリボン。
「結婚式には青い物がいいって言うでしょ?サムシングブルーって。」
「そうなんですか?」
「ええ。本当はね、サムシングフォーって言って、何か新しい物、何か古い物、何か借り物、何か青い物を身に付けるみたいなんだけど…あたしが試して離婚しちゃったから、青い物だけでどうかなって。」
周子さんは、首をすくめて笑いながらそう言った。
「はは…そうなんだ…」
「ガーターベルトに結ぶのが主流みたいだけど、足を出さないドレスなら足首とか?ブーケに結ぶとか。」
「そっかあ…持って行って、どこかに結びますね。ありがとう。」
周子さんは、ジェフの肩にもたれて…幸せそう。
すごく…すごく嬉しかった。
本当に周子さんは、お姉さんみたいだ。
この時までは…
そんな穏やかな時間が、あたし達の間には…あったのに…。
「え?ニッキーの結婚相手って、君だったの?」
なかなかハッキリ言い出せなかったあたしが悪いのだけど、あたしと周子さんの会話の流れで気付いたジェフが、驚いた顔をした。
「いやあ…そうか。君かあ。」
「あたしの次がこんな若い子で、驚きでしょ。」
周子さんが、ジェフの髪の毛を触りながら笑う。
…なんだか、この二人って…すごくお似合いだな。
周子さんがジェフを触る仕草が…すごく自然だし、優しい。
…結婚はしないのかな?
同じ相手と再婚も悪くないと思うけど…
「あのニッキーを落とすなんて…すごいな。結婚願望も、子供も望まないって言ってたのに…今じゃ、一日も早く子供が欲しいなんて言ってるし。」
「え…」
その言葉に、あたしはすごく驚いた。
まさか…
思いもよらない場所で、思いもよらない人から、そんな話を聞く事になるなんて。
「そ…そんな事、言ってるんですか?あたしは…聞いてないけど…」
両頬を押さえながら、あたしが、しどろもどろで答えると…
「…何それ…」
突然、周子さんが低い声で言った。
「…え…?」
「…スー?」
「…何なのよ…」
「……」
それまでの、穏やかな空気が…消え去った。
周子さんは、酷く冷たい顔になって…
「…夏希が瞳以外、子供を持つなんて…許さないわ。」
あたしを…睨んで言った。
「…周子さ…」
「何なの…何なのよ。あなた、まだ若いじゃない。歌も歌えて、人気者で…今から、何でも手に入るじゃない!!」
「スー…何言ってるんだ?」
周子さんの日本語に…ジェフは戸惑ってる。
「あたしから夏希を奪って…瞳からも奪うつもり!?」
「…奪うだなんて…」
「じゃあ!!約束しなさいよ!!」
周子さんの剣幕に…瞳ちゃんが泣き始めて。
ジェフが、瞳ちゃんを抱きかかえて…外に出た。
「…約束…?」
「一生、夏希と子供は作らないってね。」
「……」
「それができないなら、あたしみたいに…夏希と別れなさい。」
「え……そんな…」
「夏希は瞳の父親なの!!」
「……」
「それとも…あたしと瞳を不幸にしてでも…自分が幸せになりたいの?」
「……」
「どうなのよ!!」
言葉が…
出て来なかった…
今までの、優しい周子さんは…?
…目の前には、怒りと憎悪に満ちた目で、あたしを睨んでる女の人がいる…
「約束するっていいなさいよ‼︎」
周子さんがテーブルを叩いて…
美味しかったお茶もケーキも…床に落ちた。
「……」
…あたしは、なっちゃんの赤ちゃんが欲しい。
だけど…そうなったら…あたしとなっちゃんの子供は…一生、この人に恨まれて生きなきゃいけないの…?
「…周子さん…今も…」
声が震えた。
痛いぐらい…突き刺さった。
「…愛してるのよ…夏希の事…」
わなわなと震える手を握りしめる周子さん。
「…そうよ…」
周子さんは、小さくつぶやくと、床にうずくまった。
「忘れようとしたのに…あなたの事も…好きになろうとしたのに…」
「……」
下を向いた周子さんの目から…床にポタポタと涙がこぼれる。
「…どうして…夏希は、あなたを選んだの…?」
「……」
「可愛くて…素直で…」
「…周子さん…」
「あなたが憎いのに………瞳を守りたいのに……」
「……」
「あなたを…可愛いって思うあたしがいて………苦し過ぎて…」
あたしは…無言で家を出た。
庭で、瞳ちゃんをあやしてたジェフが。
「…何話してたかはわからないけど…スーは…不幸な子でね…」
と、話し始めた。
小さな頃、お父さんが目の前で転落死された事。
お母さんも…その後を追われた事。
深い傷を負って、幸せがそこにあっても手を伸ばす事に怯え…
素直に欲しいと言えばいいのに、それができなくて…敵を作ってしまう。
…あたしは…
能天気に生きてきた。
厳しい環境の中でも、夢を見付けた。
あたしは…たぶん、何があっても…耐えられる…
だけど…周子さんには…耐えられない…
なっちゃん…
あたし…
幸せになれないよ…。
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