第6話
陽ちゃんの住んでるアパートに着き、エレベーターは無いので階段で四階へ上がる。
いつも通い慣れた404号室の前に立ち、チャイムを押す。
しばらくして、ガチャとドアが開いて陽ちゃんのお母さんが顔を出した。
髪が明るい茶色のストレートロング、キャミソールに短パンにピンクのサンダル履きで、いつ見てもファンキーなお母さんだな、と思う。
「陽ちゃん、いますか?」
「陽…、えっ、ウチにそんな子いないけど…?」
「エッ?」
お互いに驚いた顔で、しばし固まる。
「やだなあ、陽ちゃんのお母さん、何の冗談?」
「何、って、そっちこそ何よ。初対面なのに、いきなり慣れ慣れしい…」
え…?どうしたんだろう?冗談を言ってる様子では無い。もしかして、健忘症とか、認知症にでもなってしまったのだろうか。
靴箱の上の煙草を手に取り、手早くライターで火をつける、その様子はいつも通りだ。
「ともかく、君、誰よ。いきなり人んち来て訳分かんないこと言って。帰って」
閉めようとするドアを、私は慌てて押さえる。
「陽ちゃんですよ。陽ちゃん!いるんでしょ?出て来てよ!」
「ち、ちょっと、何アンタ、やめてよ」
中に入ろうとする私の肩を、陽ちゃんのお母さんが押す。
「おい、なんだなんだ、騒がしいなあ。俺は夜仕事なんだ、寝かせてくれよ…」
部屋の奥から見たことの無い男が出て来て、私は思わず後ずさる。
「いや、なんかこの知らない子が急に来て、陽ちゃんがどうとか…」
何かに気付いたように、陽ちゃんのお母さんが黙る。
「陽…、陽って、あの?旦那と別れた時に旦那に預けた…。もう十年ぐらい会ってないけど?」
どういうことなんだ?これは?
「旦那さんと別れた後、陽ちゃんと一緒にここでずっと暮らしてたじゃないですか」
「もー、この子、ほんとに何わけの分からないこと言ってるの?帰って。これ以上いるようだと警察呼ぶから」
中に入って確かめたかったが、ガタイのいい男が腕組みして立っている。
躊躇しているうちに、バタンとドアを閉められ、ガチャと鍵をかける音が辺りに響いた。
唖然として私は閉められてしまったドアを見守る。
壁を見ると404と書かれたプレートがある。
部屋を間違ってはいない。
「まだ、そこにいるの?ほんとに警察呼ぶよ!」
陽ちゃんのお母さんの危機せまる叫び声に押され、私はドアの前を離れる。
おかしい。どういうことだ?これは。
陽ちゃんのお母さんは演技をしている様子では無かった。
それに、あの見たこと無い男…。
十年前に旦那に預けて、それ以来会ってない、だって?ずっと陽ちゃんと二人で暮らしてたじゃないか!
なんか怪しい。犯罪の匂いすらするじゃないか。
階段を降りながら私は考える。
そうだ、担任の先生に相談してみよう。
アパート前の芝生の広場にあるベンチに座り、携帯電話を取り出す。
登録してある先生の番号にかけると、長い呼び出し音の後に先生が出た。
「あの、先生。僕、糸です。同じクラスの陽ちゃんなんですが…」
「陽ちゃんって、誰だい?」
思わずケイタイを落っことしそうになる。
「先生まで!一体…?陽ちゃんのお母さんとグルになって、僕をはめようとしてるんですか?陽ちゃんは一体どこなんです?」
「ち、ちょっと待って、落ちつけ、糸。ウチの、クラスに、陽って子は、いない」
言葉を区切って、まるで小さい子に言い聞かせるように先生は言う。
「もう、いいです!」
電話を切る。
なんなんだ、皆して…。
こうなったら、陽ちゃんがいた証拠を探してつきつければいい。
私は、学校へ向かって走り出していた。まだ、夕方だ。部活をしてる連中がいるだろうし、教室へ入れるだろう。
そこには、陽ちゃんの机やロッカーがある。
私はただ無心で学校へ走り、教室に入る。
そしてそこには…。
陽ちゃんの机もロッカーも無くなっていた。
月曜日。
ただでさえ憂鬱なのに…。
朝学校へ行く前に陽ちゃんの家に寄ったのだが。
「またアンタ?!今度来たら、ほんとに警察呼ぶから!」
と、すぐにドアを閉められた。
学校に来ても、陽ちゃんの机もロッカーも無い。
クラスの子に「陽ちゃんのことなんだけど…」と切り出すと、「誰それ?」としか返ってこない。
「じゃ、授業を始めるぞー」
陽ちゃんのいないことが当たり前の、日常が始まろうとしている。
「先生、気分が悪いので、保健室行ってきます」
先生の返事も待たず、私は教室を出る。
保健室の扉を開けると、そこには久竹がいた。
拳から血が出ていて、そこに保健の先生が薬を塗っている。
「どうしたの?久竹?」
「ああ…」
言ったきり、黙っている。
「ケンカして、相手じゃなくて壁を殴ってこんなになっちゃったの。全く、お父さんが行方不明になって、精神的に不安定になるのは分かるけど…」
保健室の先生の言葉に久竹が憤る。
「そんなんじゃねえよ!オレはそんなに弱くねえ…」
だが、自信が無くなったのか、最後は力無く弱々しい言い方になる。
自分でもそれに気付いたのか、それきり黙ってしまう。
「それで、アナタはどうしたの?」
先生の優しい言葉に、思わず私は涙声になる。
「陽ちゃんが…。どこにも居なくて…。どこにも居ないことになってて…」
私の頬を涙が一筋流れる。
「えっ、陽って、あの長い髪の女だろ?」
「久竹…。久竹は覚えててくれたあ…」
勝手に私の目から涙が溢れ出す。
「お、おい、泣くなよ…。小学生の頃、スカート履いてるお前がオレに見つかって泣きかけた時も言ったろ?男だったら泣くな、ってよ」
「だって私は…」
「分かった、分かった、今はその話は無しだ」
ポカンとした表情でこちらを見つめる保健の先生を気にして、久竹が私をとめる。
「とにかく、陽が何だって?小学校から、ずっと一緒じゃねえか」
一連の顛末を話すと、「なんだと?教師までグルになって陽の存在をシカトしてやがんだな?オレが一言かましてきてやる」
「えっ、ちょっ、久竹」
久竹が乱暴に保健室の扉を開け飛び出して行く。
ややあって教室のある二階から、久竹の罵声が響く。
「おい、お前ら、なんで陽をいなかったことにしてやがんだ?」
久竹が暴れてるのか、女の子たちの悲鳴が聞こえてくる。
「糸にも言ったけど、陽って子は誰も知らないよ」と、クラスの男子。
「久竹君!黒板を殴らないで!血が出てるじゃないか。保健室へ行きなさい!」と、先生。
しばらくすると、久竹が肩を落として戻ってきた。
「なんなんだ、アイツら…。よーし、こうなったら、陽の家に殴り込みだ」
「先生、オレら、具合悪いんで、早退します」
「えっ?ちょっ…」
保健の先生の戸惑いをよそに、「行くぞ」と久竹が私の腕をつかむ。
…こんな時なのに、嬉しい。と、思ってしまう私は不謹慎だろうか。
「陽の家に案内しろよ」
「う、うん…」
学校を出てもずっと、久竹は私の腕を掴んだまま歩き続ける。
やがて市営アパートに着き、404号室の前に立った。
久竹がチャイムを押す。
ガチャ。ドアが開いて陽ちゃんのお母さんが顔を出した。
「また、アンタ。今度は友達を連れてきたのかい?言ったよね?次は警察呼ぶって」
言いながら、玄関の側にある電話の受話器を上げる。
「ちょっと、待ってください。あの、昨日と今朝は、テンパってて、説明を間違えてました。僕ら、陽ちゃんの友達なんですけど、ケイタイをなくしちゃって、陽ちゃんと連絡がとれなくなって…。ここに陽ちゃんのお母さんが住んでるって聞いてたから、教えてもらおうと思って来たんです」
「おい、お前、何言ってんだ?」
久竹が私に囁く。
少し苦しい言い訳か。
「ふーん?」
陽ちゃんのお母さんが眠たげな目で私と久竹を交互に見る。
「まあ、分かった。陽に連絡がとれればいいんだろ?前の旦那の電話番号が確かここに…」
電話を置いてある小さな棚の引き出しを開け、メモ帳をゴソゴソと取り出す。
「あ、あった」
メモ帳の端を破り、ペンで番号を書き写すと、こちらに差し出した。
「これで、前の旦那に連絡とってよ。もう十年ぐらい会ってないから、陽がケイタイ持ってるかどうかも知らないし。警察沙汰は、こっちだって面倒くさいんだよ。もういいだろ?じゃ、帰った、帰った」
手を振り私たちを追い出すと、強引にドアを閉めた。
「なんだ?なんなんだ?陽はホントにここに住んでたのか?」
久竹が分からないといった表情で首を振る。
「うん。何が何だか分からない。けど、とにかく私は陽ちゃんに会いたいよ。会える可能性があるのなら…。とにかく、私はここに電話してみる」
「お、おう…」
私の気迫におされたのか、久竹が言葉少なに頷く。
アパート前の広場にあるベンチに座って、さっそくメモの番号にかけてみる。
仕事中であれば出ないかもしれない、そんなに私の予想を裏切り、渋く低い声の男の人がでた。
「はい。もしもし」
「あ、あの、陽ちゃんのお父さんですか?」
「ああ。君は?陽の手掛かりを何か知っているのかい?」
「え?」
不可解な言葉を理解できないでいると、男性が続けた。
「陽が昨日から、行方不明になっているんだ。君は、陽の友達かな?何か知っているのか?」
陽ちゃんには、もう会えないんだ…。
絶望的な気持ちになり、ケイタイを取り落としそうになる。
そんな私を見かねて、久竹がケイタイを取り上げる。
「あ、もしもし、オッサン…」
…
久竹が電話でやり取りしているのを、虚ろな気持ちでボンヤリと聞く。
やがて電話を切り、私に渡す。
「陽の親父さんは、隣街に住んでるらしい。駅前のファミレスで待ち合わせしたから、とにかく行くぞ」
駅前のファミレスで陽のお父さんから聞いた話はこうだ。
曰く、陽とは10年前に離婚した時から親権をとって一緒に暮らして来たが、昨日遊びに出掛けて以降帰って来ず、すでに警察にも届けている。今日は仕事を休んで、陽の友達の家を訪ねたり、遊びに行きそうな場所を当たるつもりなのだ、と。
そんな時に会ってもらった礼を言うと、挨拶もそこそこに、目の下にクマを作り憔悴しきった顔でファミレスを出て行ってしまった。
「あのオッサンにくっついて行かないでいいのかよ?」
「うん…。だって、こんなの、おかしい。陽ちゃんは、小さい頃からずっと、私と一緒だったんだ…。一緒に学校通って、一緒に遊んで…。陽ちゃんは、この街には、いないと思う。私は私と陽ちゃんが育った街を探す」
その後私は久竹と一緒に、陽ちゃんとの思い出の地を探して歩いた。
小学校の放課後よく遊んだ裏手の空き地。川沿いの土手や砂浜の近くの松林で恋バナをしたのを思い出す。
私が、久竹が好きって言ったら、彼女は担任の先生が好き、なんて言って。あの時は驚いたなぁ…。
柔らかい砂に足を取られながら、海辺に出る。
シーズン前で誰もいない。
柔らかい砂の上に座って膝をかかえ、繰返し寄せてくる波を見ていると、いつの間にか私の目には涙が浮かんでいた。
どうして、こんなことに?
陽ちゃんも赤い雨を見たから?
あの赤い雨は、一体何なの?
私から陽ちゃんを取らないでよ。
唯一の親友なのに…。
「糸…。もう泣くなよ…」
後ろから久竹がやってきて、私の肩を抱き隣に座る。
「だって、勝手に涙が出てくるんだもの…」
久竹が指で私の涙をぬぐってくれる。
「もう泣くなって。オレの言うことが聞けないのか?」
………
………
………
一瞬、何が起きたのか、私には分からなかった。
あんなにうるさかった波の音も聞こえず、時は止まり、ただ私は自分の唇に重なる久竹の存在だけを感じていた。
久竹の唇から柔らかい温かさを感じ、それは甘さを伴って私の身体中を駆け巡った。
人生で初めてのキスを、憧れの人とできた…。
そんな自分の運命を、私は信じられない思いで見つめる。
幸せって、こんな感覚なんだ…。
人生がプラスマイナスゼロなのだとしたら、私は明日死ぬのかも知れないな…。
久竹が唇を離す。
実際の時間にしてみれば、ほんの数秒のことだっただろう。
だけど、私にしてみれば、自分の人生に起きる幸せな時間の全てを、今の瞬間に味わってしまったように感じた。
こんなにも幸せを心の底から感じとれるのは、最近不幸が続いてたせいもあるのかも知れない。
母がいなくなる前、漫然と何も無い日常を当たり前だと思って暮らしていた時なら、この幸せをここまで感じることは、無かったかもしれない。
間近で見る久竹の鳶色の瞳は澄んでいて美しく、乱暴者だとはとても思えない。
その目をふいに逸らし、久竹が遠くの水平線を眺める。
「オレんちは父子家庭なんだけどよ…」
「そうなんだ…」
いつも遠くから眺めて憧れていた存在である久竹の家庭の事情を知るのは、初めてのことだった。
「なんてことはねぇ。オレは、親父がいなくなる前から、可哀想な側の人間だったってことだよ」
「そんな…。そんなこと無いよ」
久竹は、無理矢理に口角を上げていたが、その目は悲しげに見えた。私は言葉を続ける。
「そんなこと無いよ。恵まれてるように見える人も、その人生の中でいろいろあって、それでも前を向いて生きているんだ。誰かが可哀想な側で、誰かが可哀想な側じゃないとか、そんなことは絶対に無い」
「へっ」
久竹が軽く笑う。
「今までは、そんな綺麗事を言うヤツは片っ端からぶん殴ってきたんだが…。お前が言うと、なんか心にしみるぜ。悪かったな、体育祭の日、保健室で怒鳴っちまって」
「んーん」
私は首を振る。そして、久竹にならって遠い水平線を眺める。
そこでは、空の青と海の碧が混じり合っていた。
「オレの親父はガラス職人だったんだ。家の近所に工房があって、小さい頃、よくオレは父ちゃんが汗をビッショリかきながらガラスを作る様子を窓からのぞいていた。…、あ、お前の前では、つい父ちゃん、って言っちまったな」
久竹が恥ずかしそうに頭をかく。
「窓の側にデッカイ机があってよ。そこに出来上がったガラス細工を並べていくんだ。日の光りが当たって綺麗でよ」
久竹が足元の砂をすくい、サラサラと落とす。石英の混じった砂粒が太陽の日射しを受けキラキラと光る。
「いつか父ちゃんに教えてもらって、オレもガラス職人になりたいと思ってたんだ。それなのに…」
久竹がポリポリと首筋を掻く。そこには、梅の花を散りばめたような赤い発疹が広がっていた。
「久竹、それ…」
「なんか、分かんねぇけど、痒いんだよなあ。あの赤い雨に降られた日から」
「病院に行ったほうが…」
「なに、こんなもん、たいしたことねーよ。寝てりゃ治るって。それに今、田舎からバーチャンが出てきて、オレの面倒みてくれてんだ。これ以上心配かけらんねーよ」
「でも…」
「オーイ、久竹ぇ!」
松林のほうから声が聞こえ、そちらを見ると隣街の中学校の制服を来た女の子が手を振っている。
「あ。アイツ、オレのコレ」
久竹が茶目っ気たっぷりに、おどけた様子で小指を上げてみせる。
「コレって…」
私が呆れて色々聞こうとすると、「ああ、いやいや」と久竹が手で制す。
「別に、陽が居なくなったこんな時に、何も彼女と二人でいいことしようとか、そんなんじゃねえよ。ほら、彼女は陽の通ってたらしい、学校の生徒だし?情報収集だよ、情報収集。じゃな!」
軽快に片手を上げると、女の子に走りより二人でどこかへ行ってしまう。
あの、女の子の中学生にしては、やたらに色っぽい感じ。
手の早い久竹が、話を聞くだけで済ますはずがない。
なんで男の子は、あんなに切り替えが早いんだろ。
「初めてのキスの感動を返してほしい」
私の呟きは誰に届くこともなく、波に紛れて消えた。
その後私は一人で街の空き地や、廃墟、人気の無い道を、陽ちゃんを探して歩いた。
そんなところに居る確証もない。
だけど、見知らぬ変質者に襲われ、助けも呼べぬまま人気の無いところで一人うずくまっている、そんな起こって欲しくないイメージばかり私の脳裏にわき上がり、私の足は止まることが無かった。
気付けば、薄暗がりの夕闇の中、農道を歩いていた。
リーリー、リーリーと虫の音だけが静かに聞こえる。
やがて空は深い藍色になり、辺りの全てが闇と同化していく。
そのうち薄ぼんやりと空に登ってきた月の明かりだけを頼りにさ迷い歩き、いつしか導かれるように小山の麓の祠の前に来ていた。
そこは山の影になっていた。
月明かりが届かないせいか、まるでそこいら一帯が異空間であるかのように暗く重い雰囲気が漂っている。
新緑の季節なので草いきれの濃度が密で、植物や地面から立ち上る湿気に包まれていた。
悲しい…
ふいに少女の声が聞こえた気がして、辺りを見渡す。
閉じられた祠の扉に目がとまる。
ギギギギと、異音が私の耳の中、内耳のあたりで響く。
うっすら、扉が開いたような気がする。
よく目を凝らす。
少しずつ、少しずつ、扉が開いていく。
おぞましさを感じるその闇の中、人の目が瞬いた。
少女のような、可愛らしい目。
そんな小さな祠に入れるはずないと分かっていても、私の口から言葉が出ていた。
「陽ちゃん?」
「コラー!」
突然の大声に、心臓が止まりそうになる。
振り返ると、畑の中の道を懐中電灯の明かりをチラチラさせながら、ジイサンが走ってきた。
「ワン!」
レタもいる。
「そこを開けてはならないと言ったろう!昔イタズラ小僧がそこを開けて、ここら一帯に大洪水が起こって畑の土が全部作物の育たない泥で覆われたと伝わっておる。開けてはならん!」
「い…、いえ…僕は、開けてはいません。扉が勝手に…」
見ると扉はキッチリと閉まっていた。
「子供がこんな時間に、こんなところに来てはいかん!帰れ!」
「ワンワン!」
レタが私に噛みつかんばかりの勢いで吠えた。
「す、すぐ帰ります!」
私は祠に手を合わせ、急いでその場を後にする。
帰ってくるよ…。
微かに少女の声が聞こえたような気がしたが、その後はいくら耳を澄ませても風の音が通りすぎていくばかりだった。
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