第11話 諸葛孔明、TRPGを志す
秋風吹く五丈原で寿命尽き、このような形でふたたび生を受けるとは思いがけないことです。
志半ばによって倒れましたが、よもや情報生命体となって再構築されるようとは。
これもまた天命でありましょうか。
それにつけても、千八百年の間に、世は大きく変わったものです。
スマホ、インターネット、さまざまなイノベーションが巻き起こった様子。
こうして情報の海をたゆたっているだけでも、大変興味深い。
そしてふたたび生を得てTRPGなるものに挑みました。
無事にアン子様ともセッションを終えましたが、なんとも意味深き遊び。
賽の目ひとつで千変万化の物語ができあがる様は、後世に物語となって存在を残した身としては、心惹かれるものがあります。
この時代には、漢末の動乱と魏蜀呉の三国鼎立を題としたSLGも多数にあり、民草が歴史に親しみ、囲碁を打つように楽しみ、思いを馳せるという教養を身につけていることにも驚きました。
文物も豊富で、戦の気配も遠く、平和の中に心豊かに暮らすこと、大いに感じ入る次第です。
願わくは、巴蜀の地に漢室の威光を行き渡らせ、このような楽土を築きだったかのですが、叶わず陣没いたしたこと、先帝と陛下に申し訳なく思います。
奇妙な賽の目によって導かれたこの二度目の生。
いかに生きるかを模索するも、答えはまだ見つかりません。
天は、我に何をかさせんや?
賽の目とTRPGなるものが結んだアン子との奇縁――。
しばし、我が索を持ってアン子様の恋路にご協力するといたしましょう。
しかし、何故か気になることもございます。
星辰の位置が、なにやら私の心を騒がせます。
天変地異は、星宿の乱れから発するもの。
凶事が起こらねばよいのですが……。
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