第11話 諸葛孔明、TRPGを志す

 秋風吹く五丈原で寿命尽き、このような形でふたたび生を受けるとは思いがけないことです。

 昭烈帝しょうれつていより三顧の礼によって召しを受け、漢室復興を志して二十余年――。

 志半ばによって倒れましたが、よもや情報生命体となって再構築されるようとは。

 これもまた天命でありましょうか。

 それにつけても、千八百年の間に、世は大きく変わったものです。

 スマホ、インターネット、さまざまなイノベーションが巻き起こった様子。

 こうして情報の海をたゆたっているだけでも、大変興味深い。

 そしてふたたび生を得てTRPGなるものに挑みました。

 無事にアン子様ともセッションを終えましたが、なんとも意味深き遊び。

 賽の目ひとつで千変万化の物語ができあがる様は、後世に物語となって存在を残した身としては、心惹かれるものがあります。


 この時代には、漢末の動乱と魏蜀呉の三国鼎立を題としたSLGも多数にあり、民草が歴史に親しみ、囲碁を打つように楽しみ、思いを馳せるという教養を身につけていることにも驚きました。

 文物も豊富で、戦の気配も遠く、平和の中に心豊かに暮らすこと、大いに感じ入る次第です。

 願わくは、巴蜀の地に漢室の威光を行き渡らせ、このような楽土を築きだったかのですが、叶わず陣没いたしたこと、先帝と陛下に申し訳なく思います。

 

 奇妙な賽の目によって導かれたこの二度目の生。

 いかに生きるかを模索するも、答えはまだ見つかりません。

 天は、我に何をかさせんや?

 賽の目とTRPGなるものが結んだアン子との奇縁――。

 しばし、我が索を持ってアン子様の恋路にご協力するといたしましょう。


 しかし、何故か気になることもございます。

 星辰の位置が、なにやら私の心を騒がせます。

 天変地異は、星宿の乱れから発するもの。

 凶事が起こらねばよいのですが……。

 

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