【KAC10】カクヨム感謝祭~飲めや騒げやKAC!!

《伝説の幽霊作家倶楽部会員》とみふぅ

一夜限りのドンチャン騒ぎ

「えー、というわけで、今夜は無礼講です。皆様自分の思うがままに楽しんでいってください。それでは」


壇上のマイクの前でフクロウが一礼し、去っていく。


「……いや。ここ、どこよ?」


気付いたらパーティ会場みたいなとこに突っ立ってた挙げ句、突然演説が始まって一瞬で終わったんだけど。理解が追い付かない。




「ちょ!聖哉何やってんの!?」


慌てた声に振り向くと、黒髪の男性がテーブルの下を覗いたりカーテン裏や窓を調べていた。


「いきなりこのような場所に転移する相手だ。何かしら仕掛けててもおかしくない」

「いや、聖哉考えすぎ」

「食事に毒が入っているかもしれない。シャンデリアが落ちてくるかもしれない。窓から奇襲があるかもしれない。そして」

「そして?」

「本性を現したリスタが襲ってくるかもしれない」

「!!襲わねえわ!?」

「万が一に備え、会場の外に鳳凰自動追撃も放っている。レディ・パーフェクトリー」


ふと窓の外を見ると、スーパーカブに乗った少女が火の鳥に追われていた。



「アリア、はい料理」

「遅い!」

「ぐはぁ!」

「適当に持ってこいって言ったのに時間かかりすぎよ、何してたの」

「アリアが少しでも喜んでくれるようにアリアの好きそうな料理を探してたんだよ」

「ルーク」

「はい」

「あんたが少しでも長く傍にいるのが私の喜びだと知れ!!」

「ぐへぇ!」



「おーおー。最近の勇者達って言うのは随分変わり種が多いんだな」

「……いや、レオよ。我にとってはお前が一番変わってるからな?くっ、何故相手がシュティーナやリリではなくお前なのだ」

「エキドナ、そう深く考えすぎずに食おうぜ。結構行けるぞこれ」

「やかましい!ええい、酒じゃ!酒を持てい!」



「ちぇあぁぁ!」


鋭い叫びと共に響く打撃音。厳つい顔の空手家と、猫耳少女が闘っていた。


「ぬ、なんという身軽さ!」

「おじさん、強いね」


「頼むから、程々にしてくれよ?」

「……止めたいけど、あんな楽しそうな葵を止めるのも忍びないな」


二人を囲むように、耳の尖った少女と黒髪の少年がその成り行きを見守っていた。


「エンディさん、心配するな。空手を信じろ」

「あなたは強い。……でも、私のほうがもっと強い!」


獰猛な笑みを浮かべ、両者は再び拳を交える。



「うう、賢者にようやく転職していざ冒険へ行こうとしてたのに。どうしてこんなことに……?」

「大丈夫?悩んでるみたいだけど」

「あ、ありがとうございます。あの、あなたは?」

「僕はシウって言うんだ。肩に乗るこの子はフェレス」

「か、かわいい……あ、ユーリと言います」

「モフモフしていいよ。不安もきっと吹き飛ぶから」

「わぁ、想像以上のモフモフ……」



「スロウ様!食べ過ぎです!!」

「ぶ、ぶひぃ。いやいやシャーロット。あの鳥も今日は無礼講って言ってたし多目に見ても」

「駄目です!スロウ様は只でさえすぐ体型が元に戻るんですから!これは没収です!!」

「そ、そんな殺生なー!!」

「……いらぬと言うなら、その料理、竜魔神姫である私によこせー!!」

「きゃあ!唐突に誰ですかー!?」

「ぶひぃ!料理は渡さないぶひぃ!!」

「スロウ様!?」



「むきゃー!安藤君!安藤君!ラノベのキャラ達が私達の目の前にいるわー!」スカン!スカン!←安藤君の腕を叩く音。

「うん、朝倉さん。とりあえず落ち着こうね?俺としてはむしろテーブル上の漫画肉の方が気になって仕方ないんだけど。……メッシェンテ!!」



「あの二人からあなたと同じオタクの臭いを感じるのだけど」

「その意見には遺憾ながら同意したいところだが、僕じゃない。君と同じだろ」

「本当、水斗君は意固地野郎なんだから」

「いやいや結女さんのほうこそ」

「ウフフ」

「アハハ」



「部長何やってるんですか。危ないですよ」

「何って、見れば分かるだろ!目の前でアニメみたいな現象が起きてんだぞ!KB部としては今後の参考にメモする一択だろ!」

「だからって何もそんな至近距離に行かなくても」

「キョロ、お前そんなんだからいかにも草食動物な無害100%顔になるんだぞ!もっと向上心持て!……あ、やべぇ。ペン投げちまった」



「勇人君、凄い騒ぎだね。まるでお祭りみたいだよ」

「そうですね、咲さん。 まるでというか、まんまお祭りじゃないですかね」

「はい、勇人君。あーん」

「いや、咲さん。自分で食べられ……いただきます。」


そう口にした瞬間、横から飛んできたペンが咲さんの頭に直撃し、首より上が吹っ飛んでいった。


「咲さぁぁぁん!!?」



「見事な断頭っぷりだな」

「あら、まーくん思いのほか冷静ね。てっきり怖がるかと思ったのに」

「いや、血が一滴も出てないから、人形か妖怪の類かなと思って」

「まーくんにしては中々に的確な判断ね。久々に感心したわ」

「あれ、誉めてる様で馬鹿にしてる?」

「そんなまーくんには、私の首を贈呈しましょう」

「ホラーかな」

「安心して。血の一滴までまーくんの元に贈り届けるから」

「ホラーですね」

「もちろん作り物よ。まーくんを置いて先になんて逝ってやらないわ」

「やだ、朱雀さんイケメン」



「鷲頭君、何してるんですか?」

「鷹山か、俺は髪に栄養を与える料理を厳選しているんだ」

「鷲頭君は熱心ですね。私みたいにカツラ被れば解決ですのにへぶ!」


飛来した女性の頭部が鷹山に当たり、その衝撃でゴムが緩み、すぽんとカツラがとれた。


「そうなるのが怖いから俺はカツラにしたくないんだよ!」



「はい、吉田さん。味噌汁」

「お、ありがとう沙優。……ん、うまい。だが俺には沙優の味噌汁の方が合ってるな」

「嬉しいこと言ってくれるね。このこの」

「おい、やめろ」

「それにしても、こんな状況で暢気に味噌汁飲むなんて吉田さん可笑しいね」

「現実逃避しないとこんな状況やってられっか」



「バルドさん、何故ウズウズしてるんですか?」

「周囲から強者の力をビシビシと感じるのじゃ。……旦那様、駄目かの?」

「駄目です。と言いたいですが、可愛いバルドさんの頼みです。無茶しないでくださいね。危険そうなら俺も参戦しますから」

「さすが旦那様なのじゃ!」



(愛する妻と娘のため、デスゲーム運営で食っているわけだが。まさかこのような状況になるとは。加えて)

「あの、どうしました?」

(女性の首、これマネキンだよな?お願いだ、音声機能付きマネキンであってくれ。万が一本物だと考えると扱いに非常に困る……って、うん?)


病気のように肌色の悪い男が、こちらを見てくる。


「……どうぞ?」


女性を渡すと、黙って去っていった。何だったんだ?



「ルーミアさん」

「不楽、急にどこ行ってたのよ?ってなにそれ」

「ルーミアさんが血を吸うかと思って貰ってきた」

「いや貰ったってそんな道端に落ちた物みたいに」

「できれば血を吸うのは勘弁して欲しいな」

「ふぁっ!?あなた、首だけで生きてるとかデュラハンか何かなの!?」

「それに近い存在かな。それにしてもあなた、マリーと同じ気配がするわね」

「……む、もしや同族を知ってるのあなた。せっかくの機会よ、話しましょう。夜はまだまだ続くしね」




こうして、状況はより混沌カオスと化していった。


黄金に光輝く巨大な仏像が動いたり。


銀髪オッドアイの少女が、ワイヤーを使って建物内を縦横無尽に駆け回ったり。


メイスを立て掛けて胃を押さえる白髪の僧侶と、目の下に大きな隈ができた黒髪の医療魔術師が、互いに愚痴を溢して労っていたり。




出会う筈のない者達の間に、多くの縁が結ばれていた。


「それにしても、あの鳥はどこに……いた」


会場を見渡せる、二階の席。そこには、あの鳥と二人の人物がいた。


「ようやく来たね。まあまあ座ってよ」


手招きする鳥に近付き、席につく。


「それで、俺はどうしてここに?」

「おお、単刀直入だね。それを教えるためにもまず彼らを紹介しないとね」

「どうも、僕はカタリ」

「私はリンドバーグ。バーグとお呼びください!」

「俺の名前は」

「別に言わなくていいよ。理解してるから」

「えぇ、なんでぇ……?」

「それは僕が説明しますね。端的に言うと、あなたはこの作品の登場人物なんです」

「登場、人物?作品?それじゃあまるで」

「ええ、あなたは作られた存在です。僕とバーグさんは、僕の能力『詠目』を使ってある作者の心の物語を小説として具現化し、トリの力でその中に入り込んできた外の住人です」


あまりに唐突すぎて訳が分からなかった。


「分からなくていいと思います。どうせ貴方には関係ないですし」

「バーグさん言い方」

「……ある作者の心を具現化したって言ってましたね。俺には一体どんな役割が?」

「……あなたは先程の彼らを見て『自分と彼らは違う』と思いませんでした?」

「ええ」

「彼らは本来、別の作者によって誕生したキャラです。三年前、僕達の世界『カクヨム』が生み出された時、彼らはいなかった。だからこそ、彼は願ったのでしょうね。『彼らと共に三周年を祝いたい』と」

「じゃあ俺は……」

「作者の映し身。つまりは作者の心そのもの」

「カクヨム初期からいる彼は、☆100個獲得という、当時では大きく、今では小さな野望を胸に、他の頑張る作者を応援しながら、日々を面白可笑しく楽しんでいます。評価されたいと思いつつ、それ以上に、『一人でも多く読んでくれたら良いな。楽しんでくれたらいいな』と、そんな想いを込めて」

「だからこそ、僕達はここに来たんです。あなたと杯を交わすために。彼の想いを知ってもらうために」


二人が杯を持ち上げ、トリが俺の肩に停まる。


「カクヨムの今までに感謝を」


「カクヨムのこれからに祝福を」


階下でドンチャン騒ぎを起こす面々を見つめ、俺も盃を手に取る。


「カクヨムにいる全てのユーザーに、これからも多くの笑いと幸あらんことを願って」



今夜の宴に乾杯!!


三人と一匹の祝杯の音が、高らかに響き渡った。





かつては何もなかった場所に、多くの物語が溢れかえる。夢が広がる。


どうかどうか、これからもカクヨムが多くの才ある者達の憩いの場でありますように。

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